SF伝道者の四方山話 No.28 青木安輝

僕がアプリシエートにこだわるわけ その3

まずは年収と幸福度の相関関係の話しから。

人が良い人生を送るのに必要なものが、二系統にわけて考察されることがよくあります。一つは「お金」に代表される物質的な豊かさ。もう一つは数字に換算できないものとして、「愛」という言葉に代表される精神的な豊かさ。言うまでもなく、人間は物質的な側面と精神的な側面の両方をもっているので、現代社会ではお金を稼いで必要なモノを買わないと生きていけませんし、一方でモノでは満たされない何かを求めていることも確かです。どっちも必要ですよね。

そして、物質的にはどのくらい豊かなら満足できるのか、精神的にはどのような形で満足を手に入れるのかは人によりけり、つまり自分次第ということになります。

そんなこと言ったって、やっぱり金は沢山あった方が幸福になるに決まってるだろって思いたくなりますよね。でも、以前雑誌でこんな研究結果があるという話を読みました。それによれば、収入が増えると幸福度が上がるのはある金額までで、それ以上になると幸福度が上がるとは限らないと。記憶があいまいで申し訳ありませんが、その境目は確か年収7~800万円くらいだったと思います。いつの年代のどこの国の何人家族を養う必要がある人なのかによって、それは変わるはずなので、おおざっぱに「ある程度の年収」くらいに考えておいてください。もちろん個人差も文化差もありますので、具体的な数字は幅があるでしょうけど、誰でも「その額」に達するまでは収入の高さと幸福度(主観的に“しあわせ”と感じている度合い)は比例するのに、それを超えると幸福度が上がるためには別の要素が必要となるということらしいです。つまり、物質的に幸せを“買える”のはある程度までということになります。当たり前(笑)?

さて、ここから「アプリシエート」のことになります。「自分語りを聴き合う」ことがどのように役立つかは、人それぞれだし、僕の想像を超えた役立ち方もきっと色々あるでしょう。しかし、基本的に物質的(経済的)な豊かさを高めることに直接は役立ちません。むしろ、今の物質的豊かさのレベルのままで、精神的満足度を高めるためには多いに役立つ可能性があると思います。だから、収入(物質的豊かさ)のレベルを高めることの優先度が高いなら、もっと実利的なことを教えてくれるセミナーに参加した方が良いのでしょうが、「自分語り」とか「人生を深く味わう」という言葉により魅力を感じるのであれば、「精神的満足度」を求める優先度が「今は」高いのかもしれないし、そのために他所では体験できない時間をアプリシエートは提供できると思います。

では、精神的な豊かさを向上させるために「アプリシエート」がどう役立つのか?

これは重要な問いなのですが、自分語りをしたいと思う動機は人によって違いますし、期待していることも違いますから、一律に「~という効果があります」という説明はつけたくないし、つけられないと思っています。100人参加したら100通りの体験があるということです。ただ、僕が考えていることを、「ワンデイ・アプリシエート」(個人向けの1日版)に参加してくださったKさんの体験談を引用しながら、お伝えしたいと思います。(太字の部分をクリックすると全文が読めます)

Kさんはワンデイ・アプリシエートの参加申込フォームの中で、その動機について「これまでの自分を語り上げておきたい」と表現されていました。僕はこの「自分を語り上げたい」という言葉を見たときに、なんだかときめいてしまいました♪ Kさんは数十年間の半生の中で、自分のことを語った時間は極少ないことを自覚していて、人生半ばで一つの転機を迎えている今、これまでの人生を語り上げておきたいと思ったのだそうです。僕はプライベートで人と一緒にいる時は、相手に合わせて聴く側に回ることも多いですし、相手が聴いてくれるタイプだと自分がしゃべる割合がグンと高くなりますが、それでも自分ばかりしゃべっていてはいけないとブレーキがかかります。しゃべりたいだけしゃべり切るなんてことは基本的にはできません。だから、この「これまでの自分を語り上げておく」という表現を見た時に「それってやりたいよね~!!」と深く共感しました。「ぜひ、それやってください!僕聴きます!」と、丸一日のセッションが始まりました。

そして語り上げた感覚になれたら、「人生再スタートだ!!」という気持ちになったそうです。今までアプリシエートに参加された皆さんの後日談をうかがったり、自分が参加者として自分語りをした体験を振り返ってみても、語って終わるのではなくて、むしろ何かが始まる、あるいは始めたいという感覚になることが多いです。一つには、自分がやってきたことを俯瞰して、自分なりに言葉でまとめてみると、倉庫に乱雑に入っていたものが整理されると隙間ができるのと同じで、心の中の余裕ができるのだと思います。

アプリシエートに参加して良かったことの一つとしてこんなことも挙げてくださいました:

「『どんな人も頑張ってるんだな』と思えるようになりました。だから、相手に対して腹が立ったとしても、自分の負の感情に囚われ続けることが圧倒的に少なくなったように思います。それは、『どんな人も、その瞬間は一生懸命だったのかもしれない』と思えるようになったんだと思います。そしてそれは、相手を『赦す』というのとは違うかな。『認める』って言葉に近い感覚です。」

Kさんは1日かけてこれまでの半生の中で起きた色々なことを語る中で、自分がしたことで後悔していたことも「今になって思えばその時は一生懸命だった」と認めることができたり、他人に対してネガティブな感情を持つようになったきっかけの出来事について話している内に「相手の立場ではそうするのが一番良いと思っただけなのだろう」という視点が生まれたりしていました。自分の人生ドラマに登場する人物たちを自分も含めて「認める」体験をされたのだろうなと思います。

「これから先も『生きてて良かった!!』と思えることが、たくさん待ってるかもしれないと思えました。嬉しいこと、悲しいこと、いろんなことをたくさんの人と関わりあいながら乗り越えてきたんだな!と感じられ、生きる気力が湧きました。気力が湧いたので、一日を丁寧に過ごしたいと思えるようになったように思います。より『今を生きる』ということに繋がったように思います。」

こんな力強い言葉でご自身のアプリシエート体験を語ってくださって本当に嬉しいですが、対話パートナーである僕は何か特別なことをしたわけではなくて、Kさんが語りたいだけ語ることができるようにと思ってそこに居ただけです。あらためて「自分を語る」ことのパワーってすごいなと思いました。

アプリシエートは「プレセッション・ワーク(事前課題)」で色々な角度から自分自身を振り返ってみることから始めて、自分の人生をアプリシエートする(「よさがわかる」「おもしろく味わう」「ありがたく思う」)ことが目的ですが、Kさんが「アプリシエート」するようになったこととは:

「自分史を作ったり、人生を振り返ることで、特に両親の想いや生き様などにも寄り添うことができたと思う。タイムマシンに乗って、過去を変えに行くことはできないけど、過去の解釈を変えることはできる。失敗も成功も、起こったこと1つ1つに意味があったと思えた。過去の中に、気付けなかった大切な宝物を見つけられた。これから先の人生でも、小さな宝物に気付いていきたい。見つけていきたい。」

セラピーでもコーチングでもなく、自分語りをすることで、自分自身を、人生を、「アプリシエート」する。とても素敵な時間です。対話パートナーの僕もとても豊かな味わいのある時間を過ごさせていただきました。

ということで「アプリシエート」の魅力は皆さんに伝わったでしょうか?「僕がアプリシエートにこだわるわけ」シリーズは一旦ここまでにしようと思います。「ワンデイ・アプリシエート」もレギュラープログラムになりましたので、興味が湧いた方はぜひご参加くください!お待ちしてま~す。

SF伝道者の四方山話 No.28 青木安輝” に対して2件のコメントがあります。

  1. おっくん より:

    青木先生へ

    「おっッ!」「へぇ〜」「わ〜!」から始まる読み出しでした。なぜかと言うと今年度の自治会では「退会世帯を呼び戻す」という大きなテーマがあります。私が班長を務める4班は47世帯中20世帯が非会員という”超高離脱率地帯”なんです。越してきて2年目の私にはゼロからの人脈づくりとなりますが、実はワクワクもしてるんです。

     そこで例のXY軸と矢印を紙に描きながら構想を練っていて、右上のFPに「幸せを感じる町」と書き入れました。過去に退会された理由も気になりますが、結局は自治会も住民も向かうところは「幸せ」という共通目標なんだろうなって思っていたところに今回のコラムが飛び込んできたものですから。僕にとっては本当になんだかドンピシャだったんです。取り組みは長期になりますがお楽しみにお待ちください。

     そして何よりもKさんの体験談を通して「語る」ことや「聴く」ことによって生まれてくる新たな息吹があることを教えていただきました。きっと求める答えはその人の中にあるんでしょうね。がんばりますね。

    1. 青木安輝 より:

      おっくん、コメントありがとうございます!

      「ドンピシャ」ってどこだったのかなぁと想像させてもらいました。「幸せを感じる町」を構想する上で今回の記事が役立ったなんて、なんと嬉しいことでしょう(ピース!)

      自治会を一つの自分の居場所としてしっかりかかわっているのが素晴らしいですね。他の人たちにとっても「幸せを感じる居場所」として味わってもらおうって本気で考えられること自体がすごいなあって思います。

      長期の取組み大切にしてください。大きな欲を持つことはよいことだっていいますけど、そんなのに近いのかなあって思いました。

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