「SF実践者の”ザ・リアル”」

SF伝道者の四方山話            青木安輝

あるもの」をつなぐ       小林シンイチロウ

「諏訪太郎の日々の気づきシェアリング 諏訪太郎

「快く生きる日々」           渡辺照子

このブログを始める理由(わけ): 青木安輝

それは一言で言えば、SF実践者にとっていつでもアクセスできる「認め合い、学び合い、応援し合う」場をつくるためです。「やっぱりそうだよねえ」という共感、「えっ、そんな風に考えてもいいんだ!」という多様なとらえ方との出会い、「さて、自分はどうしてるかな?」という自問自答や内省が解決志向的なトーンで起こるような文章が提供され、それに対して読者からのコメントをいただき意見交換をする。それがこのブログを通じて実現したいことです。

「ソリューションフォーカス」を一般社会に広めようとする事業を始めてから16年たち、その間にSFを上手に活用してくださる素敵な人々に出会い、様々な経験を積む中で私のSFに対するとらえ方は変化してきました。最初の頃は、ある意味SFという手法と恋に落ちていたと言えるかもしれません。だからその良いところしか見ない(まさにSF!?・笑)状態だったと思います。しかし、その恋が実って“結婚生活”に入ると、楽しいことだけしていればよいデートと違って、相手に対する期待と実態が違うところを調整していく必要がありました。

その調整、つまりSFという手法が役に立つように(結婚生活が楽しく続くように!)付き合い方(活用法)を工夫してくれたのは、SFセミナーを受講してくれたり、私の本を読んでSFを実践してくれた皆さんでした。その創意工夫(知恵)には大いに感銘を受けました。私がそこから学んだことは、セミナーで教えられるSFというのは単なるテンプレート(型板)であって、それを使ってどのような図を創り出すかのクリエイティビティ―と知恵は、SF実践者の皆さんの内側から湧いてくるものだ(SF inside!)ということでした。テンプレートの基本的使い方はセミナーで教えることができますが、それを使ってどのような図を描けば良いのかは誰も教えることができません。テンプレートとその使用者の相性が合うと、「へえ、そんな使い方もあったのか!」「そんな図も描けるんだ!」という素晴らしい作品ができます。まさにアーティストです!それらはSF活用事例共有大会でシェアされてきました。

それらの大会は盛り上がり、気持ちの良い高揚感があったのですが、一つ課題もありました。大会で事例を共有する際には、時間の制約上全てを語り尽くすわけにもいかず、実際に起こったことの中で聴く側に役立つであろうことを拾い集めてストーリーにする必要があります。その過程では、実践者の内側にどのような葛藤があったかとか、その他の様々なサイドストーリーは省略されます。受け取る側の皆さんにとっては、成功そのものの内容だけでなく、実はこのサイドストーリーの中に、リアルな共感や救いを見つけたり、成功への前段階の隠れたステップが見つかったりすることがあります。大会での質疑応答の時間にその一部が発掘できることはありますが、埋もれたままになった”栄養満点の”サイドストーリーも数多くあったと思われます。

このブログは、そんな数多くのSFサイドストーリーに触れる機会です。ソリューションフォーカスというテンプレートを活用して、これまでもそして今でも自己表現をし続けているSF実践者に、「あなたにとってSF実践のリアルとは?」とわざと曖昧なオープンクエスチョンをぶつけることで、その人の個性から生まれ出るその人なりのSFを表現してもらえば、事例発表の場では語られていない様々な”実感のこもった(ザ・リアル)”体験談や想いが伝えられる場になると考えました。各執筆者の語り口や題材が違っていたり、異なる独自の解釈等が表現されることで、読む側にある種の「?」が湧くかもしれませんが、さらに読み進める中で、「ということは、私にとってのSFは・・・ということかも!」と、読者自身の内なるSFが刺激され、表現されるきっかけとなることを期待しています。つまりこれを読む人が、SF実践者としての”自分自身を読む”ことになれば面白いなぁと期待して連載を始めたいと思います。

15年前に“SF inside”という言葉を提唱して色々な意味に解釈されてきましたが、最近ではこう考えています。

誰もがSFアーティストとしての種を自分の中にもっている。それが発芽するかどうかは、その種に合った刺激と出会うかどうかにかかっている。SFセミナーや書籍やSF実践者との出会いがその刺激になる可能性がある。そしてその芽が育つには、その人が内側にもっているSFに適合する(気持ちよく刺激される)情報と接し続ける度合いにかかっている。

このブログが皆さんが内側にもっているSFを発芽させる、そしてさらに育ち続ける栄養となる可能性に期待して他の3名の執筆者の皆さんと楽しくコラボしていきたいと思います。

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関連エッセイ

共鳴と増幅(J-SOL5 大会テーマ)

ルーツと多様性(J-SOL6 大会テーマ)

活かし合う力を高める (J-SOL7 大会テーマ)

一人一SF(J-SOL8 大会テーマ)

Appreciate ~その価値に気づく~ (“SF inside” Day2017)

クイズと豊村さんからの回答

クイズ:
私(青木)がこの5本の「関連エッセイ」を読み直してみたら、題材や言葉は変えていても、すべてある「同じところ」から発せられているように思えました。その「同じところ」って何だと思いますか?(ニュースメール2021年4月4日号にて出題)

豊村博明さんからの回答:
青木先生、関連エッセイを拝読致しました。
同じことって?私の感じた共通メッセージを以下の通り記します。

SFはもちろん基本の考え方(コンセプト)があり、そこの部分はとっても大切な幹の部分として自身の中に取り入れることは必要だけれども、それさえ外さなければ、それぞれの理解、感じ方、もっとこうすればより良いSFに繋がるはずだと思えることは、勇気をもって実践していくことが大切である。

そこに、青木さんの「ソリューショニストを信じる。」というポリシーが強く感じられました。あらかじめ型にはめられたSFを定型化し、そこから1mmでもはずれたものはSFとは言わない。というものであれば、J-SOLに集った仲間たちをはじめ、ここまでSFに共鳴し、自分のスキルを高めながらSFの魅力をを増幅していこうとする活力は生まれなかったと思います。

私はそこに、青木さんのソリューショニストを信じ、自分でさえも、ソリューショニストからあらたな発見や活力、刺激を受けることを「welcome」とし、それがSFの更なる進化に繋がっていくのだという想いが込められていると感じております。私以外のソリューショニスト達も、その想いを肌で感じているからこそ、そこにあらたなチャレンジが生まれていくのだと思います。

SFに共鳴をしたソリューショニスト達はそれぞれの現場でSFを実践しながら、多くの場面で壁にぶち当たり、そこで悩み、それを乗り越えようと自分なりの工夫をしているはずです。それでも、SFを捨てようとしないのは、SFの幹の部分の素晴らしさを分かっているからであり、それを土台にして、自分なりに創意工夫をしながらその壁を乗り越えられた時には、また一段と進化し、自分の特色を生かした自分なりのSFになっていることを信じているからだと思います。我々には、そのことを「ルール違反」と捉えず、「よく頑張ってユニークなSFを開発してくれたね。おかげで我々の知見にまた新しい1ページが加えられた。」とappreciateし合える土壌があります。

蛇足ですが、このエッセイを読んで、最近私が少し壁に当たっていたことに対し、少し勇気を頂きました。

先日、カウンセリングの勉強会で(これはある団体の卒業生が集まって行うカウンセリングを学ぶ会です)私がカウンセラー役として、SFを用いてやってみたところ、「確かにスラスラと技法どおりだが、事務的でクライエントの感情に十分に寄り添えていないのではないか。」という指摘を観察者からいくつか頂きました。もともと私は、その団体が推奨するロジャーズ来談者中心療法では、「傾聴しながら相手の感情に寄り添うことはとても大切だけれども、それだけではクライエントの問題は解決しないでしょ。」という疑問や限界を感じていたこともあり、「SFは確かに感情よりも、解決志向に基づいた事柄や次の行動に焦点を当てるので、それはそれでいいやん。」と自分を納得させながらも、少し悩んでおりました。

けれども、このエッセイを拝読し、「クライエントの感情にも十分に寄り添え、かつ解決アプローチも一緒に目指すことのできるSFができればそれに越したことはない。」という結論に至りました。これが一人一SFの意味だと思いますし、そこにソリューショニストとしての調整の技が求められ、かつ我々が目指す多様性を尊重するSFがあるということですよね。

これからまだまだ試行錯誤が続きますが、また自分なりに進化したSFが実践できるよう精進致します。このエッセイと出会えたことに感謝致します。

非常に長文になり失礼致しました。

豊村

豊村博明さんは、石油販売会社の管理部長を務めていた2016年に”SF inside” Dayにて「体育会系SFの組織作り」というユニークな内容のSF活用事例を発表してくださったSF実践家です。

コメント大歓迎!!

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4名の執筆者紹介

SF伝道者の四方山話

青木安輝
SF伝道者
株式会社ソリューションフォーカス代表

2005年に株式会社ソリューションフォーカスをたちあげてから、ビジネス社会におけるSF活用の促進、書籍の出版、SF活用事例の共有大会主催、海外ソリューショニストとの交流、その他SF普及にまつわる様々な経験をしてきました。その中で自分のSFに対する考え方がどのように変化してきたのか、確信が深まったこと、逆にとまどいを感じるようになったこと、そのきっかけとなったエピソードや人との出会い等を徒然なるままに書いていきたいと思っています。読者の皆さんの反応によって、私の記憶の中のどこに焦点があたり、そしてさらにどのような新しい展開があるのかを楽しみにしたいと思います。

『あるもの』をつなぐ

小林シンイチロウ
消費財メーカーマネージャー
カウンセリング修士

2006年から解決志向アプローチを学び始め、部下育成・組織風土改善・組織マネジメントで応用し、SF活用事例共有大会で事例発表してきました。
昔、私は自分にないものを追いかけていました。友人のマネで化学を専攻したり、賢そうなコンサルに転職したり。しかし大変な状況になると踏んばりがきかず挫折。一方でSFでは、既にあるもの・出来ている事・大切にしている事に目を向けます。私にはこの発想が魅力的に映り、SFを仕事に取り入れています。
現在マネジャーとして高い目標の達成を求められます。無いものを挙げたらキリがありません。だからこそ「あるもの」に目を向けて少しでも満足しながら成果を出せる仕事を日々模索しています。このブログではSF実践の経験や感じたことをお伝えできればと思います。

諏訪太郎の日々の気づきシェアリング

諏訪太郎
シンプル面談コンサルタント

サービス業で20年、パート、アルバイトのやる気を引き出す「シンプル面談」を行っているシンプル面談コンサルタントの諏訪です。
今では、シンプル面談コンサルタントと名乗っておりますが、以前の私は、部下とコミュニケーションを取るのがとても苦手でした。部下にやってもらいたいことがあるのに「あれやってください」、「これやってください」と言えませんでしたし、部下を叱るときには「なんでそんな事も出来ないんだ」と怒ってしまい、部下を上手に叱ることもできませんでした。
そんな時に、青木先生の「解決志向の実践マネジメント」に出会いました。SFを使い部下に接するようになると、部下の意見が聞けるようになり、部下の事を認めてあげられるようになりました。すると自然と部下との信頼関係ができ、「あれやっていいですか」、「こういうのはどうですか」と部下から提案してくれるようになりました。
そんな私が、日々の生活や職場でSFの視点で気づいたことをお伝えしていきます。

快く生きる日々

渡辺照子
TERUコミュニケーションステージ代表
国際コーチング連盟マスター認定コーチ(MCC)

2002年からコーチングを学び始めたところ、私は壁にぶち当たりました。“厳しいフィードバックができない”という壁。私は、厳しいフィードバックは、するのもされるのも苦手で、達成したり前進するために行使するのは非効率だなあと感じていたそんな矢先、2006年にソリューションフォーカスに出会ったのです。ソリューションフォーカスは、相手と「快」の心象で向き合いながら、解決やより良い状態を応援できる。そこのところが大変気に入りました。私がコーチとして、一生を通じてやっていきたいことは、“人が自身を認めながら快く生きていくのを応援すること”です。ブログでは、仕事や生活を通して、SFにまつわることを見つけ、自分なりの捉えや理解を言語化し、読んでくださる方の、快い日々の何らかのきっかけやヒントになることを願いつつ書いていきます。