「ルーツと多様性」はJ-SOL6(第六回ソリューションフォーカス活用事例共有大会)の大会テーマとして掲げたフレーズです。このエッセイは大会資料に掲載された文章を「SF実践者ブログ」関連の資料として加筆修正したものです。

ルーツと多様性

私はソリューションフォーカス(SF)に関して「1980年代に米国で生まれたカウンセリング技法が一般社会で活用されるようになったもの」という説明をすることが多いです。そういう文脈でこのテーマ「ルーツと多様性」を見ると、「根と枝分かれ」という意味に受け取れるだろうと思います。SFに関しての「根」はスティーブ&インスーのSFA(解決志向アプローチ)、そしてSOL WorldやJ-SOLでやっていたことは「枝分かれ」の部分というとらえ方です。ベン・ファーマン博士の「キッズスキル」やアンドリュー・ターネル氏の「安全のサイン」技法、マーク・マカーゴウ博士のSIMPLEモデルやその他の世界中のソリューショニストが工夫してきた様々なプロセスモデルもそういう意味では枝分かれの部分かもしれません。しかし、J-SOL6の大会テーマとして「ルーツと多様性」を掲げたのは、単にそういった歴史的な軌跡をたどることを意図したものではありませんでした。

SFが色々な文化圏で受け入れられ、初めてSFの内容を聞いた人でも、即座に理解することができたり、これは自分が実行してきたことだと言う人が少なからず存在することがかなり高い確率で起こるのは何故でしょう?もしかすると私たち人類が遺伝子の中に持っている生存のための思考や協働行動のパターンが、SFと共鳴している部分が多いからなのかもしれません。

J-SOL3で基調講演をしてくれたマイケル・ヤート氏の「SF5万年説」では、人が生得的に持っている生命力のパターンがSF的であるというとらえ方をしています。この考え方に従えば「生命力」そのものがルーツであり、スティーブ&インスーが創りだしたものは、そのルーツを活かす多様なパターンのうちの一つだったというとらえ方も可能です。

SFの考え方に多くの人が共感しやすいのは、人間としてのルーツに響きやすい言葉が使用されているからかもしれません。SFという手法が先にあるのではなく、SFに響きやすい素質がもともと人間の中にあることでSFが機能すると考える方が順当なのでしょう。

だとすれば、いわゆる知識(コミュニケーションのテンプレート)を仕入れる基本学習の段階を経た後は、自分が内側にもともと持っているSFルーツを探求することがSFの使い手としての成長を促すのかもしれません。「ルーツと多様性」は、SFの重要なエッセンス(ルーツ)が何であるかを探求することが、自分なりのSF実践法に自信を深めていく機会となるように、そしてそのおかげで自分流で最適解決を見つける多様なソリューショニストが成長していくようにという願いを込めたフレーズでした。

SF実践者ブログを通じて、読者が自分の内側のSFルーツを見つけること、そしてそこから多様な展開を見せることを期待します。

青木安輝