SF伝道者の四方山話 No.29 青木安輝

「ソリューションフォーカス実践学習コース」第一期を終えて

先日「ソリューションフォーカス実践学習コース」第一期の最終シェアリングセッションで、8名の参加者全員が素敵な成果発表をしてくださいました。その内容がお一人おひとりの個性や置かれた状況によってまったく違っていて、SFというベースはしっかり共有しているものの、その表現形は大変豊かなバラエティーに富んでいました。SFセミナーを再開して本当に良かったと思いました。何がどう良かったのかを”SF伝道者”として皆様にお伝えしたいと思います。

【SFを採用している自分が主役】

まず自分自身にとって良かったことは、「SFを相対化できた」ことだと思います。

どういうことか説明します。昨年「アプリシエート(自分語りをするWS)」を開始して、自分も参加者として自分にとってのソリューションフォーカスの意味を語るようになりました。生まれてから今日までの自分を語る中で、人生のある時点でSFを知り、深く共感し、それを広めることを自分の仕事にしてきたという自分史を語ったわけです。その中で、「まず自分が居て、それからSFがある」という順番なんだということが明確になりました。

それって当たり前のことなんですが、「SF伝道者」というところにアイデンティティーを置くようになった自分が、「SF一番」みたいな意識を強く持っていた時期があったことも事実です。しかし、コミュニケーション手法はあくまでも手法であり、一つの仮説(こうすればうまくいく“かも”しれないよ)であり、脇役に過ぎないわけです。で、その仮説をどう解釈してどう応用するかを決める自分というのがあくまでも主役です。

株式会社ソリューションフォーカスを創業した頃の自分を思い起こすと、もともとの面談手法としてのSFAにはなかった「OKメッセージ」という造語をつくったり、施術する側とされる側という傾斜関係ではなく、「認め合い、学び合い、応援し合う」という水平関係において活用される手法としてSFを位置づけたり、自分にとってしっくりくる形を工夫して採用していました。その頃の自分には、ある種の主役意識がありました。だから自分が工夫したことがうまく活用されなければ他のやり方に変えようと軽く考えられたのです。ところが、一旦自分が工夫した一つの型が多くの人に受け入れられてくると、その型(が有効であるという信ぴょう性)を守りたくなる、つまり否定されたり、有効でないと言われたくないという気持ちが強くなりました。これはあまり健康的ではありませんでした。

ところが、昨年「アプリシエート」の中で自分がSF以前にやってきたことについて話したり、2005年にSFを始めてからのことを語る中で、「ああ、SFというのは自分が採用してきたいくつかの考え方の一つに過ぎないんだな。まず自分が居て、その自分がSFを採用したということなんだ!」と思ったら、なんだかとても自由で新鮮な感じがしたんです。これが「SFを相対化できた」の意味です。

【講義動画は長編になっちゃった・・・けど】

で、今回の「ソリューションフォーカス実践学習コース」の話しに戻ります。

コロナ禍の時にZOOMや動画コンテンツの活用が進みましたが、人と人の温かい交流はやはり対面じゃなきゃダメでしょという先入観があったために最初はまったく気が進まなかったんです。ところが企業や自治体からの要請を受けてリモート研修というのをやってみると、僕が直接会っていない受講生からの受講レポートの内容がとても良いものが多くて、「あれ?もしかしたらリモートにはリモートの良さがあるのかな」と思い始めました。特に講義は動画で視聴してもらい、実習は講師不在で自分たちでやってもらうという完全リモートの研修からの受講者レポートがとても質が高かったのです。

先入観を脇に置いて、冷静に考えてみると、動画を視聴するというのは、自分の都合の良い時間に好きな環境で見ることができる。つまりリラックスした状態でコンテンツを受け取れるわけですね。しかも、先生に対して良い生徒であるフリをする必要もないし、自分以外の受講生の反応を気にする必要もありません。ストレスフリーでインプットができる。そして気になったところは繰り返し視聴したり、おさらいは速度をあげて効率よくという風に受講者各自がラーニングマネジメントできるわけです。そんな風に“自分自身でいられる”環境で自分のペースで講義をインプットしたら、納得できるところや面白いと思えるところはかなり増える可能性があります。だから吸収度は対面よりも高い場合があるだろうと想像できました。

なので、「ソリューションフォーカス実践学習コース」では、あらかじめ録画しておく「講義動画」を大切にしました。最初は短く要点を要領よくまとめたYouTube動画のようなもの、つまり15~20分程度の長さのものを何本かつくっていけばいいかなと思っていたのですが、前述の「手法はあくまでも仮説」「まず自分が居て、その自分がこの手法を採用するかどうかが大事」という「学習内容に向かい合う態度」を自覚的に大事にしてもらいたいと思ったら、「うまくいく方法の3ステップはA、B,Cです。はい、終わり。」みたいに話すことはできませんでした。いちおう型は説明するけど、色々思い返すとそれがうまくいく時もあれば、そうでない時もあるし、場合によってはSFと真逆のやり方が功を奏することだってある・・・などと語り始めてしまったのです。昔よくいた授業中脱線することで人気があった学校の先生みたいな雰囲気になるのもいいなと思って、「あれも言いたい、これも伝えておこう」と色々なエピソードを挿入しました。「SFを相対化できた」ことで、とても自由にこれまでの人生の色々な経験知を反映させられたと思います。結局、90分、90分、120分、90分と4本で合計6時間半のボリュームになりました。

で、これが今回大変好評で、ある組織の経営幹部をしている方に「単にスキルの説明とかではなくて、青木さんの今までの人生経験をすべて踏まえた本質的に大事なことを伝えてもらった気がします」と言ってもらえたり、10年前に実践コースで素晴らしい修了レポートを書いてくださったベテランSF実践家の再受講者の方からも今回の動画の学びが大きかったとの感想をいただきました。嬉し~い!!

【受講者の皆さんのシェア】

最後に、最終シェアリングセッションで発表された受講者の皆さんの学びの中から、いくつかの言葉を引用させてもらいます。そして、僕がこのコースを通じて伝えたいと意図したことが「役に立つ誤解」も含めて受け取ってもらえたことをお示ししたいと思います。

「SFマインドを保つことで、全方向に方法や出口がある」とおっしゃった方がいました。抽象的な表現ですが、存在するものには必ずそれなりの意義・意味あいがあるから頭ごなしに否定しない、どんな小さな可能性も大切に扱う、失敗したら違うことをやればいい等のSF的な捉え方を思い起こすことができると、確かに「全方向に方法や出口がある」という感覚になれます。素敵な表現だなと思いました。「起こったことはすべて最高さ!」は今回も気にいってもらえたようです。

「OKメッセージを伝えるのに遠慮はいらない」と発表した方がいて、それを聴いたある方が「座右の銘にしたい!」なんてやり取りもありました。「プラスの眼鏡」や「OKメッセージ」はやはりSFの土台となる重要な要素ですが、この発表をした方は「おべんちゃらと受け取られそう」な気がしたり、単に「恥ずかしい」から「OKメッセージ」を伝えることに躊躇があったそうです。ところが、コースの序盤で「受け取っているOKメッセージに意識を向ける」という課題を大事にしてくださって、そこで大きな気づきがあったそうです。自分はこんなやり取りがあった時に嬉しい気持ちになるなあとか、こういう扱いをしてもらった時に敬意を払ってもらえたと感じるな等と自分の体験で意識できると、人にも同じ思いをしてもらいたいという気持ちが増しますね。結果として、この方は関係がこじれていた部下の人と良好な関係に戻れたそうです。

息子さんから悩み事の相談を受けることがよくあったという女性の方が、受講期間中に相談の電話を受けた時に「アドバイスをしないで相手に話させてよく聴く」ことを意識したら、それ以降相談の電話が減ったそうです。自分で考えて解決できる自信がついてきたのかもしれませんね。その方は夫婦間の言い合いも減ったとお話ししてくださいましたが、「どっちが勝つか」という意識が減ったからとのこと。いずれの場合も、「私が」という意識を前面に出さずとも良いという余裕が感じられた結果のようでした。

大きな企業のコンサルタントをしている方が、クライアント先でプロジェクト等の振り返りのミーティングを「良かったこと&改善点」という視点でやると、改善点ばかりが多く出てきて、ミーティングが終わる頃には皆どよ~んと重くなっていたそうです。そこで、良かったことの方に多く焦点が当たる切り口を工夫して増やして、改善点に関しては「これからやると良いこと」という捉え方で最後に話すようにしたら、皆元気になって前向きな態度が増えたそうです。ダメ出しを鋭くできることは武器ですが、武器を使うと被害者が出るんですよね(笑)。SFをうまく応用できると被害者が減ります!

ピアノ教師の方が、生徒さん(子供たち)との接し方をSF的に工夫するようになったエピソードの中で、「どうしてそう思ったの?」と尋ねるようにしたお話しがとても印象的でした。教師という立場上、教えたいことは色々あるわけで、それを伝えたら「はい、先生」と言ってもらいたいですよね。でも、時々まったく関係ないことを話し始める子がいるそうです。以前はそれをスルーしながら内心腹立たしかったそうですが、「この子にとって大切な話しなのかもしれない」と思うようになって、「なんでそのことを思いついたの?」と尋ねるようにしたそうです。そうやって相手の心の中で起こったことを聴くようにしたら、それが教えたいことにうまくつながるようになったそうです。そして、そんな尋ね方ができた自分にも「自分頑張ってるじゃん!」とOKメッセージが出せるようになったことを喜んでくださいました。

「コーピングクエスチョン」を使ったら、自社の欠点ばかりをあげつらっていた経営者が前向きな捉え方をするようになり、うまく相談に乗ることができたという経営コンサルタントの方の発表もありました。この方は僕の著書も読んでくださっているし、以前SFセミナーを受講したこともある方なのですが、コーピングクエスチョンのことはその時には印象に残らなかったようです。今回は動画の講義だったので印象に残り、またすぐにそれを応用する必要がある機会に恵まれたために活用できたようです。僕自身も色々なセミナーに出てよく思うのですが、一度聴いたとか読んだくらいでは忘れてしまうことの方が圧倒的に多いです。今回再受講の方が3名いらっしゃいましたが、単なる復習ではなく、新たな気づきや発見が沢山あったようです。ソリューションフォーカスはいい!と思ってくださっているセミナー受講済みの皆さん、再受講をすることは予想以上にいいですよ!ぜひ来てください♪

まだまだ他にも色々お伝えしたいことはあるのですが、ブログ記事としては既に長すぎるくらいなので、この辺でいったんキーボードから指を離したいと思います。「ソリューションフォーカス実践学習コース」に興味を持たれた方は、ぜひホームページで詳細を確認してみてください。そして7月6日からの第二期にご参加ください!お待ちしています。

SF伝道者の四方山話 No.29 青木安輝” に対して2件のコメントがあります。

  1. おっくん より:

    青木先生へ

     受講生の皆さんがそれぞれの生活や仕事の中でソリューショニストとしての有意義な時間を過ごされている様子が伝わってきます。この実感が何よりも一番大切なんだなあと実践コース時代を振り返っています。

     自治会の話は前回もお話ししましたが、自治会では先月からある家庭の迷惑行為問題が取り上げられており、先日も対応について話し合いがもたれました。
     もちろんSFinsideではなすいのでproblem focusで会議は進行し、専門家もいないので仕方ないですがなんとなくスッキリしない空気のまま終わりました。私から(初回会議なので)控えめにFPらしいことも発言しましたが、ひとりの婦人班長がうなづいただけでした。
    内心「まっ、最初はこんなもんかな」と自分に「いいね」をあげました。

     問題が起こった時にその問題ばかりに意識が取られてしまうのは仕方がないことで否定はしないんだけれど、心のどこかにしまい込んだSF的視線にも気づいてほしいと切に思います。

    「師匠の正義を証明するのは弟子の仕事」

    まだまだ私たちの舞台は目の前に広がっているようです。青木先生の弟子たちよ大いに奮起しようではありませんか。
             おっくん

    1. yasuteru より:

      おっくん、素晴らしいフレーズをありがとうございました‼️

      「師匠の正義を証明するのは弟子の仕事」

      いやぁ、今までSFセミナー受講してくれた人たちが皆証明行動してくれたらものすごいことになりますね。ってか、よく考えてみれば今だに僕がSF伝道者をやり続けていられるのは、おっくんをはじめ数多くのソリューショニストの皆さんが証明行動をとってくれてしかもそれを言語化してシェアしてくれたからです。

      深謝🙏

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