「あるもの」をつなぐ No.13 小林シンイチロウ

熟した機会を人生の転機へつなげる

<背景>
ぼくの会社にはキャリアチェンジ制度というのがあり、希望部署へ転出することができます。しかし転出希望があっても申請を人事に出す人は稀です。なぜなら、申請自体を上司が止めてしまうからです。転出されたら仕事の穴埋めが大変ですし、場合によっては上司の評価が下がります。今回はその転出にまつわる話となります。

<Hさんからの転出相談>
先日、営業部門のHさんから「小林さんのグループにキャリアチェンジしたいんです」と連絡がありました。ぼくのグループは2020年に1名転出してしまったので1名不足でした。それによるぼくの負荷が高まり人が欲しくてたまらない状況です。

だけど、あまり嬉しくない。なぜなら彼は7年前からぼくのグループへ来たいと言っていましたが、言うだけで転出希望を出しませんでした。興味を持ってくれるのは嬉しいのですが、もう期待しないことにしていました。

今回も言っているだけだろう、と思ったのですがなんだか様子が違う。Hさんから会社でちょっと会って話したいというので、ひと気の無いところで軽く立ち話ししました。言っていることは過去と変わらないのですが、落ち着き具合、顔つき、特に目が違うのです。キャリアチェンジ(転出)申請締め切りの3日前でした。

<機会は熟したのか?>
じっくり話を聞きたいと思い、店を予約し二人で会う時間をとりました。まずは本気なのか、本気ならキャリアチェンジ申請の文面や面談への備えの点で助言しなければなりません。キャリアチェンジは狭き門です。転出の動機や、転出先でどんな貢献ができるのかを根掘り葉掘り聞かれます。

ぼく 「Hさん、キャリアチェンジの話、これで何回目かね 笑」

Hさん 「そうですね・・・昔、キャリアチェンジしたいと言っていたときは、正直営業が嫌で出たいと思っている部分もありました。それもあって踏み切れなかったんです」

ぼく 「7年前からうちに来たいって言ってたじゃん。今回もまた来た!って感じだったんだけど、これまでとどう違うの?」

Hさん 「今の部署で納得いくレベルの成果を出せたので、そろそろいいでしょって感じです。十分に貢献できたし自分で納得できました。」

ぼく 「どういうこと?」

Hさん 「ん〜・・・」

ぼく 「機が熟したってことかな?」

Hさん 「機が熟した・・・機が熟した・・・そうです。キャリアチェンジ申請して、仮にダメだとしても納得できるとこまできました。」

ぼく 「上司へは話したの?」

Hさん 「話しました。あまり良い顔しませんでしたけど、自分の人生だから申請出したければ出せばと言われています。ぼくが本気だということは理解してくれたようです。」

ここは気になるところでした。上司が理解してくれてないと、上司から人事への申請が進まない。上司の納得レベルについてさらに聞きました。

ぼく 「理解してくれてるってどういうこと?」

Hさん 「まあ、営業が嫌で出たいとかじゃなくて、今後のキャリアを考えてのことだと理解いただいてます。今期も頑張って期待されてた成果を出すことができましたし。私としてはちょっと申し訳ない気持ちもありますが、自分の人生なんで。後悔したくないって気持ちが強いです。」

上司の期待にしっかり応えてきたし、本気度も伝わっているようで、上司の申請はクリアできそうです。

ぼく 「ご家族には話した?」

Hさん 「話しましたけど、彼らは東京に住み続けられるならぼくのキャリアはあまり関係ないです 笑」

Hさん 「ちょっと聞きたいんですが、小林さんが仕事をするモチベーションはなんですか?仕事観というか・・その辺も聞きたいです。」

突然聞かれて驚きましたが、普段思っていることを素直に話しました。

ぼく 「メンバーの成長と、一緒に成果を出す過程を楽しむことかな。50歳を過ぎてからメンバーや周囲に貢献したいという気持ちが強くなってきました。Hさんが異動してきたら全力でサポートするから、なんとかこちら岸までたどり着いてください。」

Hさん 「ありがとうございます!」

この後は仕事の詳細を説明して解散しました。あとはHさんの頑張りしだいです。人事面談まで通れば、ぼくのグループは1名減の状態ですし、ぼくの上司と結託して人事への働きかけを進めていきます。受け入れる方もベストなタイミングです。

そして先週、無事にキャリアチェンジ申請が人事部へ通ったことを確認しました。第1段階クリアです。

7年越しのキャリアチェンジ申請。超長い・・・こんなに時間がかかるものかと思いましたが、機会が熟すとはこういうことなのかと実感できた出来事です。無理なく自然と事が進んでいきます。

Hさんは熟した機会をつかみ、人生の転機へつなげようとしています。これから面談。しっかりと自分の考えを伝えてね。あとは運しだい。ガンバレHさん、待ってるよ!

機会をじっくり待って、熟した機会を人生の転機につなげよう!

「あるもの」をつなぐ No.13 小林シンイチロウ” に対して4件のコメントがあります。

  1. 深山敏郎 より:

    いつも素敵な記事を有り難うございます。今回も「いい話だなぁ」と思いながら拝読しました。機が熟するというのは、いいですね。お互いの気も熟してきたのかな。

    1. 小林進一郎 より:

      深山さん

      コメントありがとうございます。お返事遅くなりました。
      そうですね。お互いの機も熟したのかもしれません。
      ものごとにはタイミングがあるとよく言いますが、今回の件で実感しました。

      Hさんは先週の金曜日に人事面談に臨んでいます。
      面談前に偶然会ったので「がんばってね」と伝えました。

      あとは運ですね。きっと来てくれると信じています!

  2. おっくん より:

    小林さんへ

     新たな展開にこちらも引き込まれていきそうで、続編が待ち遠しいです、笑。

     Hさんの人生のはずなのに、何故か小林さんの方がワクワク楽しんでいるようですね。例えば映画のように神様が空の上から様子見しながら、こちょこちょとくすぐって軌道修正してくれるように映っています。そう僕がHさんなら安心感に包まれる感覚なんだろうなあ。

     最後の「ガンバレHさん、待ってるよ!」に小林さんの持つ全ての魅力が詰まっているようですね。しつこいようですが、どっちに転んでも続編をお待ちしておりまーす♪

  3. 小林進一郎 より:

    おっくんへ

    コメントありがとうございます。
    そうですね、ワクワクですし、ドキドキでもあります。
    続編楽しみにしていてください!

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