「明日から使える SF仕事術」 No.12 諏訪太郎

「不安」だと思っていることの多くは「不安ではない

「周りの人に嫌われていないか……」とか、「定年後の生活がどうなるか……」など、日々の生活や将来に対して不安を感じている人は多い。実は不安の正体を知っていると、不安と上手に付き合えるようになる。

この不安の正体とは、どんなものなのだろうか?

「仕事をするのが不安で……」

入社半年の鈴木さんの一言に、私は驚いた。なぜなら、鈴木さんから不安と言う言葉を聞くとは思っていなかったからだ。いつも元気で笑顔の鈴木さん。新しく教えた仕事も進んでやってくれていた。

「鈴木さんみたいな素敵な人が来てくれて良かった!」

みんなで話していた。

鈴木さんが不安に感じていることは、何なのだろうか?
鈴木さんが不安に感じていることが気になり聞いてみた。

「鈴木さん、どんなことが不安なのですか?」

「えーと、仕事全般です……」

鈴木さんは、漠然と仕事全体に不安を感じていたのだった。

入社して3か月が過ぎると、仕事内容や職場の雰囲気にも慣れてくる。私の職場では、このタイミングで教えることを増やすようにしている。鈴木さんも入社3か月は接客をメインに仕事をしてもらっていた。それは接客業にとって、接客こそが仕事の基本だからだ。

明るい性格の鈴木さんは、すぐに接客で力を発揮してくれた。
お客様から「いい人が入ってきたね」と、お褒めの言葉をもらうこともあった。

そんなことから、私は鈴木さんには次のステージに進んでもらいたかった。
それなので、責任のある事務的な仕事を教え始めたところだった。
このように3か月を過ぎたことから、新しい責任のある仕事を増やすことで、戸惑う人も出てくる。
それを私は「3か月病」と呼んでいた。

この3か月病には、1つの大きな特徴があった。
鈴木さんのように、漠然と不安を感じていることだ。
それなので「3か月病」の症状が出てきたら、不安の内容を詳しく聞いてみるとよい。

そこで、鈴木さんに質問をしてみた。

「どんなことに不安を感じていますか?」

鈴木さんはこの質問をされると、困ったような顔をした。
面白いことに、あれだけ不安に感じていたのに、不安の内容を聞かれても答えられないのだ。

「どんな些細な事でもいいから、不安だと感じること、上手くできていないことを話してもらえますか?」

私の方で不安について質問をしていくと、「うーん」とか、「えーと」とか言いながら、不安について話してくれた。
A4の無地の紙を一枚用意して、鈴木さんが話したことを紙に書き出していく。
10分ぐらい話していくと、鈴木さんは不安に感じていることを出し尽くしたようだった。

最終的に鈴木さんが不安に感じていることは、4つだけだった。
その数の少なさに、鈴木さん自身が一番驚いているようだった。
そして、たった4つのことで、こんなに悩んでいたのかと言う顔をしていた。

不安の正体が分かれば、後は不安を解消するために何が出来るかを考えればいい。
私は鈴木さんに、私が書き出した4つの不安の下に、どうしたら不安を解消できるかを書き出してもらった。

不安について話した10分間で、鈴木さんの頭の中は大分整理されていたに違いない。
鈴木さんは、不安を出してもらう時とは打って変わって、やることを次々に書いていった。
5分もしないうちに、A4の紙は鈴木さんがやりたいことで埋め尽くされた。
そして、やることを書き出し終えた鈴木さんの横顔からは、自身が溢れ出ていたのだった。

人は「分からないもの」に恐怖を感じる。
例えば、「おばけ」と「ライオン」だったら、どちらが怖いと感じるだろうか?
多くの人は「おばけ」と答えるだろう。

なぜ、「おばけ」と答えるのか。それは、「おばけ」が未知のものだからだ。
もちろんライオンも怖い。ライオンに襲われたら、ひとたまりもないだろう。
しかし、私たちはライオンについて多くの事を知っているので、事前に対策を取ることが出来る。

火を使ってもいいだろう。
銃を使ってもいいだろう。
ライオンと出会っても助かる道はいくらでも考えられる。

それに対して、「おばけ」はどうだろう。

「おばけ」は言ってみれば未知の存在だ。
私たちは、「おばけ」について何も知らない。
だから、襲われたときにどうしたらいいか分からない。
だから、不安を感じるし、怖いと感じる。

不安とは、言い換えれば「分からない」ことだ。

人は不安を感じると、「分からない」ことに目を向けずに、不安にばかり目を向ける。
不安な事ばかり考えるから、不安が不安を呼び大きな事だと勘違いしてしまう。
だから、不安を感じたときこそ「分からない」ことに目を向けて、何が分からないのか具体的に考えてみる必要がある。

具体的に考えていくと、不思議なことに不安の多くは無くなってしまうのだ。
人に話しているうちに不安が解消することがある。
それは、人に話しているうちに、不安の内容が具体的になり、不安が消えてしまう典型的な例なのだ。

今回私が担当する読者カフェがまさにこれだ。

紙に書くことで日々の不安を見える化していく。
見える化したことをSF的な視点でみることで、不安が解消していくのだ。
紙に書いて、SF的な視点で考える。
これこそ、最強の思考整理術だと私は思っている。

10月の「SFブログ読者カフェ」では、この最強の思考法を使って日々の暮らしをテーマに書いてもらう。
90分という短い時間ではあるが、きっと多くの発見があるのではないかと思う。
そして、その発見こそが、皆様の中に眠る「ダイヤの原石」で、それを磨き上げることで、これからの皆様の大きな力になるだろう。

そんな自分の中に眠るダイヤの原石を見つけたい方。
SFブログ読者café当日お待ちしています。

「明日から使える SF仕事術」 No.12 諏訪太郎” に対して1件のコメントがあります。

  1. おっくん より:

    諏訪さんへ

     いつもありがとうございます。
    「こんなに簡単に解決してしまっていいの」という鈴木さんの驚きと安堵感が伝わってきました。

    コラムより
    【人は不安を感じると、「分からない」ことに目を向けずに、不安にばかり目を向ける。
不安な事ばかり考えるから、不安が不安を呼び大きな事だと勘違いしてしまう。
だから、不安を感じたときこそ「分からない」ことに目を向けて、何が分からないのか具体的に考えてみる必要がある。

    具体的に考えていくと、不思議なことに不安の多くは無くなってしまうのだ。
人に話しているうちに不安が解消することがある。
それは、人に話しているうちに、不安の内容が具体的になり、不安が消えてしまう典型的な例なのだ。】

     なるほど、なるほど。
     私も仕事への不安を持っています。諏訪さんおっしゃる3ヶ月病ですね。コラムを読み進めながらその不安の原因を考えてみたのですが、最近子供たちとの関わりの中で特に「叱る」という行為が上手くできていないと感じることがあります。(褒めることは得意?なんだけどね)上司からもプッシュされるので課題と不安が同時にやってきます。

     それでいて「褒める」ことによる本人のやる気の盛り上がりを尊重している私にとって、ネットでの「子供の叱り方」的な情報は半分意識しながらも「マニュアルで上手く行くはずはない」と抵抗感を持っていました。

     しかし、諏訪さんのコラムを読んで「子供たちのために叱ることも身に付けなければいけない」とネットの情報を見る勇気をもらいました。重い腰を上げることができたのです。いざ、ネット情報を読んでみると「なるほど、こんなふうにやれば上手く行くかも」と思うことができ不安も少し和らいだようです。

     ネットを検索するという簡単なことに躊躇してたなんて、私も歳をとってしまったのでしょうか、汗。
     こんなふうに「分からないこと」を知るだけで「不安」を「勇気や希望」に変えることができるなんて素敵なことですね。とても参考になりました。頑張ってみますね♪

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