SF伝道者の四方山話 No.12 青木安輝

「共鳴」と「増幅」 Resonate & Amplify

(この文章は2012年にSF活用事例共有大会に寄せて書かれた原稿を加筆修正して掲載したものです)

人が友好関係、協働関係を築く時にコミュニケーションの中でしていることは「共鳴」と「増幅」という概念で表せると言えます。人は響き合えると感じる人やモノや情報に自然と惹きつけられ、その上で「良い」「気持ちいい」「正しい」「面白い」等と感じることをさらに増幅し合って、お互いが持つ潜在可能性を実現していきます。SFコミュニケーションは「相手を尊重する姿勢」があることで、お互いの間に「この人とコミュニケーションを交わすことで『快』の方向に向かうことができそうだ」というプラスの期待を生み出します。

そして「共鳴」し合える相手であるという感覚を共有できたら、対話の中で出てくる様々な内容の中で何を「増幅」するかを注意深く選択していきます。第五回SF活用事例共有大会(2012年開催)では、私たちが普段意識的にも無意識的にもしているコミュニケーションの中での「共鳴と増幅」をテーマにして振り返ることで、よりシャープな感受性で肯定的な対話の流れを創り出すソリューショニストとしての技が磨かれる場となりました。

SFの創始者スティーブ・ディシェーザーの面談をマイクロ分析したジャネット・バベラス博士の非常に興味深い研究があります。バベラス博士はスティーブが面談中に発する”Mmm, huh”というあいづちをその機能に応じて分類しました。日本語表記にすると、「ンーフン」となるでしょうか。例えば:

A.「聞いてますよ」という意味で、抑揚を比較的抑えて傾聴していることを伝えるもの。
B.「それ、いいね!」と言わんばかりの少しピッチを上げたトーン。
C. 否定的なことをスルーしているように聞こえる短い “Mmmh”(フム)。

Aの抑え目の言い方は、とりあえずお互いの「共鳴」関係を維持するためのもの。Bのハイピッチの言い方はその話題が向かう方向に「増幅」するためのもの。スルー用の短い言い方は、共鳴しないためのものと言えます。Cの「選択的に共鳴しない」って技も大事ですね。相手の否定的な表現に対して、無視はしないけどプロブレムトークとして増幅されないように微妙なレベルのあいづちを打つ。こういうのは優秀なSF実践家に共通している技のような気がします。同じくSFの創始者で面談の達人であるインスー・キム・バーグは面談中に相談者が問題志向的な発言を繰り返すと、「それは重要なことね。だから後でまた『そこ』に戻るので、その前に・・・について話しましょうか」と伝えて、プロブレムを迂回し、先にリソーストーク(良いことについて話す)をするのが得意でした。そしてソリューショントークに移行した後では、相談者本人ももう「そこ」に戻ることを忘れているのです(笑)。

スティーブの一見シンプルなあいづちは上記のようなナビゲート効果があったわけですね。彼はインスーに比べると非常に無愛想なイメージですが、インスーが”Wow!”(「わお!」)と大きな笑顔でしていたことを、”Mmm, huh”という小さな反応でしていたと言うこともできます。質問をして、それに対するクライアントの回答に対して短い共鳴的反応と増幅的反応、場合によっては共鳴しない反応を繰り返すというシンプルな技を名人芸として磨いたと言えます。

共鳴と増幅についてこういうマイクロ・コミュニケーションレベルでとらえることもできますが、価値観とか生き方のように抽象度の高いレベルでの共鳴増幅もありますね。私たちは着ている服や、場におかれた時の振る舞い、発言する際に選ぶ言葉、その他さまざまなチャンネルで自分を表現しています。当然それはある種のバイブレーションとしてお互いに感知し合っており、一緒にいるだけで共鳴と増幅が起こったり、逆に共鳴せず固まってしまったり不協和音を発してしまう場合もあるでしょう。しかし、人間同士は完璧に100%の共鳴もその逆の100%の不共鳴もない(そう感じることはありますが・笑)ので、響き合わない部分を問題にするよりは、響き合う部分に焦点をあてるというSF視点を大事にすることで、協働の糸口が見つかってくるはずです。そして共鳴し始めると、さらに共鳴できるところ、増幅し合えるところが見つかってくる可能性があります。

ソリューションフォーカスのセミナー等に参加される皆さんは、どこかでSFのことを知って、自分の中の何かが共鳴するのを感じて参加されるわけですから、学びの場で出会う人々と響き合う部分が必ずあるでしょうし、自分が求めているものがかなり心地よく増幅されるのを感じることができるでしょう。また考え方や価値観が一致しない場合でも、うまく共鳴できるところを探し、増幅する価値があると思われるところに焦点をあてるスキルを使おうとすることが、SF実践者としての自分を洗練するために役立つでしょう。このスキルは益々多様性を増す社会の中で生きる上で非常に重要で、SFを活用する中で磨かれる技術であると言えます。

私はインスー先生やマカーゴウ博士に接し、彼らの本を読み、共鳴する部分がとても多かったですが、それらをそのまま翻訳している部分もあれば、特に響き合う部分を自分なりに増幅したところや、以前に学んだことでSFと響き合うことをブレンドした部分も一緒にまとめて、「ソリューションフォーカス(SF)」という名前で普及させようとしてきました。なので、私が伝えていることはあくまでも青木安輝という共鳴板に反響した音です。これは私だけが特に変異したということではなく、欧州のSF大会等にに集ってきた各国のSF実践家たちを見てもそう思えました。有名曲を別のミュージシャンがカバー演奏すると独自の曲になるあの感覚です。スティーブが「役に立つ誤解(useful misunderstanding)」という言葉を残してくれましたが、誰もがそれをしていると言えます。自分なりの“誤解”が役に立つ範囲を広めるためには、時々他の人の「役に立つ誤解」に接してみることが必要です。なので、SFのセミナーやこのブログを通じたコミュニティーに参加することで、”SF”という共通語を使って共鳴できる快適基盤に一緒に乗りながらも、多様な人々が自分とは違う共鳴音を発しているのを聞き分け、その中から自分の中で新たに響き合わせることができるものを探すことは大変意義のあることです。

SFのイベントやこのブログの世界の中に自分自身を置いてみたら、何に対して共鳴していくか、そして何を増幅したくなるか、そして自分はそれをどのように表現するのか、またそれに対して周囲の人がどう共鳴したり増幅してくれるのか・・・「共鳴」と「増幅」という捉え方で、自分の回りのコミュニケーションを振り返ってみるのも面白いと思いますよ。そして、よかったらコメント欄であなたが共鳴したところ、増幅したくなったところを教えてくださると嬉しいです♪

SF伝道者の四方山話 No.12 青木安輝” に対して6件のコメントがあります。

  1. おっくん より:

    青木先生へ

     京都からもう10年ですね。私にとって記念すべき初参加のSOLです。分科会発表では「SF朝礼」を皆さんと楽しみました。懇親会ではより親密になれたようです。

     京都ではないですが、僕がSOLの準備隊として会場の設営を手伝っているところに到着した上司から「張り切ってるね!」的な言葉と笑顔を送られたことを思い出します。いつもと違うように見えたのでしょうか、笑。僕にとってSOLは故郷であり、新しい出会いの場であり、自分の可能性を確認できる場所でもあったようで、その期待に自然と心が踊っていたのかもしれません。
     
     話はコラムに戻りますが、コラムを拝読し、「技、技術」というワードが光を放って見えました。私もSFという道具を使いこなすための「技」については、とても大切な部分として捉えています。
     以下、勝手な解釈となりますが、文明の中で発明、発展してきたモノの伝承は割と容易いことかもしれません。しかし、「技」は一個人に於いては使い捨てであり、他の生命体への伝承は難しいことです。不可能ということではなく、それには新たな触発や場が不可欠のように思われます。
     例え「共鳴と増幅」的要素が人間に元々備わる性質であったとしても、そのことを自覚しなけらば勿体無いことですし、「技」を習得し使うことで、気づきの機会が増えたり、逆に気づきを与えることで更に豊かな収穫を得ることができると信じています。多くの人間の本来備わる力を引き出し、幸せにするためにに先生方がおられるのですよね。

     逆にそれを阻もうとする「執着」を見破り、解放しようとする知恵も人間には備わっていると信じたいです。
     私の身近に、子供たちのケンカのシーンが現れてきます。相手の言うことを聞きもせず自分の我を通そうとする。相手を攻撃することしか解決が見えない。それは発育の段階とも言えますが、大人の知恵から学び取ることも大切な伝承のように感じでいます。

     そのように私も先生の真似事をしておりますが、少しでも周りの人間の役に立てればと願うばかりです。そしてその思いは必ず未来に繋がるものだと信じたいですね。

     現在、送迎と障害児のWワークをしていますが、このコメントを書きながら「何故このような仕事を選んだのか」の意味が分かりかけたようです。そしてSOLの日のように心躍る日々でありたいと決意するとこが出来ました。ありがとうございます♪

    1. yasuteru より:

      おっくん、コメントありがとうございます。10年前の京都、懐かしいですね!それ以前に、おっくんの当時の会社のSF先輩が「うちに天然にSF的な人がいるんですよぉ」とおっくんのことを言ってたのをよく覚えています。お会いして、人が好きな人なんだなぁという印象が強かったです。J-SOLの場でおっくんの心が自然と踊っていたときいて嬉しいし、その姿はとてもイメージしやすいです♪

      このコメントの中では、技の伝承は不可能ではないが「新たな触発や場が不可欠のように思われます」という言葉に共鳴しました。それと「(伝承を)阻もうとする『執着』を見破り、解放しようとする知恵」という言葉も。

      「人は人によって人になる」という格言がアフリカにはあるそうですけど、生まれつき様々な「違い」を与えられた僕たち人間は、他の人との共通点を親密感のベースとしながらも、「違い」に触発されて成長発展していくことで全体の知恵を増やしているのだろうなあと思います。強烈な違いを感じる人との出会い、憧れるけど恥をかきたくないから今のままでいいやと自分の殻に閉じこもる自分、その壁を越えて触発される距離に近づいたときの衝撃。こんな言葉を並べると大げさに感じますけど、小さなレベルでもこういうことってしょっちゅう起こってるのかなあって思います。

      送迎のお客さんとの短い時間での接触や、子供(しかも特殊な扱いをされている)という未知の塊みたいな人たちとの接触の中で、おっくんがどんなことを触発されているのかなあっていうのはいつも興味津々です(^^)

      1. おっくん より:

        ああ、なんだかウズウズくすぐったいですね😊

  2. シオタリョウコ より:

    私が共鳴したところは
    ●「共鳴せず固まってしまったり、不協和音を発してしまう場合もあるでしょう」
    です。
    先日、友人の相談を聞きながら上記の気持ちになったばかりだったのです。
    今日になってふと閃いたのが「(人それぞれ正しさがある)なんて言っておきながら、私って自分の想像を超えた”その人の正しさ”の出現に固まり、確実にネガティブな感情を持っちゃったけど、あの時の違和感って自分を知り成長するチャンスになるな」でした。

    おっくんさんの子供のケンカのところで下記に共鳴。
    ●「相手の言うことを聞きもせず、自分の我を通そうとする。相手を攻撃することしか解決がみえない」
    先日の私は攻撃はしていないけど、ドン引きした態度はある意味攻撃になるかも。
    聞いてはいるつもりでも、自分の感情の方にフォーカスしていたからやっぱり聞いていなかったな。
    あ~心に沁みる。共鳴から増幅に繋げよう。

    そしておっくんさんのコメントへの青木先生のコメントにも共鳴
    ●「人は人によって人になる」
    ●「違いに触発されて成長発展していくことで全体の知恵を増やしている」

    心に起きる”違和感”は相手を見ているようで結局自分の心の反応。
    強烈な違いを感じた友人との会話は時間を経て大きな刺激になっています。

    1. 青木安輝 より:

      塩田さん、コメントありがとうございます。

      人との間で固まったり、不協和音になるような反応をしたりすることは僕もよくあります・・・と書きながら、実際はそうなる事態を避ける、つまりそうなりそうな人かもしれないと思ったら自分は事前に”逃亡する”ことの方が多いかもと思いました。逃げるが勝ち!?

      ただ、ここは逃げられない(逃げるべきではない)って時は、あえて相手の懐に飛び込む・・・いや、そんなかっこよくないな・・・ボロボロになるかもしれないと覚悟を決めつつ固まった自分をなんとか無理やり動かすような時もありますね。

      そんな経験を重ねることで、そうなっても死ぬことはないという経験値が得られて、いや~な状況に陥ることへの恐怖の質は軽くなってきたかも。

      「心に起きる違和感は相手を見ているようで結局自分の心の反応」というところに大いに共鳴♪

    2. おっくん より:

      塩田さんへ

       おはようございます。
       コメントを拝読して驚いてます。コメントへのコメントをいただいたのは2回目?かも。こんなふうに響きあえる空間っていいもんですね。

       ご友人との不協和音も素敵だなあ。
       僕なんかどちらかと言うと相手に合わせようとしてしまうタイプなんですけど、合わせながら自分の心と闘って?クリエイティブするのって結構大変なのかなあって思うことができました。自分の中に湧いてくる不協和音に正直になれる塩田さんと、成長に繋げることのできる塩田さんは、やはりあるがままで清らかに見えて来ます。
       これからもよろしくお願いします。

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