「あるもの」をつなぐ No.4 小林シンイチロウ

解決志向のスイッチが入るとき

<行き詰まりから前進につなげる解決志向>

企業の中で解決志向を取り入れて仕事を進めています。最初から解決志向の発想で仕事をつくったり進めたりすることもあるし、従来のマネジメントで仕事を進め、途中で行き詰まってしまい解決志向へシフトすることもあります。

どちらかというと従来のマネジメントの仕方で行き詰まったときに解決志向のスイッチが入ることが多いかもしれません。

もし従来のマネジメントで解決できて、部下もぼくも満足できればそれでよいと思っています。

しかし、従来のマネジメントで解決できなかったり、解決できたとしても後味の悪い結末が予測されれば、解決志向へシフトしています。

解決志向のスイッチが入った時は、こだわりや縛りから解放されて「自由」な感覚を感じています。こうした自由な感覚が解決へ向かうリソース発見の機会を広げてくれて、前進につながっていきます。

以下では、過去記事のNo.2とNo.3に登場する2名の部下との関わりの中で、ぼく自身が行き詰まりから解放されて、解決志向へシフトした様子を記載してみます。ちょっと長いですがお付き合いください。

<Aさんのこと>

部下Aさんは遅刻や急な欠勤が多く、このマイナス面をなんとかプラスにしようと改善に取り組んでいました。遅刻や急な欠勤をしたとき、納期が遅れて後が大変になるから無くす努力をしてほしいと伝えます。するとAさんからは

「急に体調悪くなっているのにそんなこと言われても困ります!」

「出社の途中で仕事の電話が入ってしまったので遅刻しました」

「他の案件が忙しいのでこの案件は間に合いませんでした」

という返事。Aさんにしてみれば正当な理由だと思います。しかし、ぼくからみたら言い訳にしか聞こえないこともしばしばです。どちらが正しいのかはわかりません。

<Kさんのこと>

部下Kさんは仕事の依頼は受けないし、報連相がほぼ無いというマイナス面がありました。以前いた部門ではこれが理由で追い出された経緯があり、根が深い課題です。本人に改善を促しましたがうまくいきませんでした。

<困難な問題行動の解決>

2名のケースでは、マイナス面を改善できずに苦しんでいました。ぼくの上司から「あの二人は社会人として問題がある。周囲の部署からもクレームがある。しっかり改善するように」と何度も要請がありました。「なんとかしなければ・・」という焦りと、ぼく自身も「これぐらいのことは出来ないと社会人として困るよな」という想いがありました。

しかし、手を尽くして改善を試みましたがうまくいかない。うまくやれている時があれば、どうやってやれたか聞いて小さな成功を繰り返すよう促したりもしました。それでも改善しない。

「どうしてこの人はこんな簡単なことが改善できないのだろう?」

「社会人として常識的なことなのにどうしてやれないのだろう?」

と苦悩しました。挙げ句の果てには「自分は貧乏くじをひいてしまった。問題のある部下をもったのは運が悪かった」などと飛躍した被害妄想まで浮かんでしまう始末。

このような状況は本来業務にも影響してしまい、部下がぼくに対して引き気味の姿勢になり、本来業務を進めるためのコミュニケーションが少なくなったり、浅くなっていました。期初に掲げた目標の進捗に影響がでてしまったのです。

<従来マネジメントの限界>

こうした状況にぶつかってから、従来のマネジメントの方法に限界を感じましたし、さらには「社会人」や「常識」という基準にも疑問を感じました。

ぼくと部下がこんなに手をつくしても解決できていない。お互いが嫌な思いをしながらこのまま改善を継続することに意味があるのか?このまま継続すれば「改善しない部下が悪い」または「上司であるぼくの能力不足」、最悪はどちらかのメンタル問題に発展するなど、バッドエンドが待っているだけではないか。

こう思った瞬間に、会社から要請されているマネジメントのあり方や常識という枠組みの境界線をありありと体感して、とても窮屈に感じました。

<解決志向へのシフト>

この袋小路のような苦しい状況を何とかしたい。それにはやはり境界線の外に出なければならない。”ぼくにとって”境界線を出るということは、解決志向を選択し現在の問題を置き去りにするということ。そうすれば上司からの圧や周囲からの苦情はある程度引き受ける覚悟がいる。

ただ、その覚悟を引き受けても、解決志向を選択し、ぼくと部下が良好な関係を保ち、部下が満足いく仕事を進められて、結果として成果へ向かうことを望みたい。

そして境界線を一歩外へ出てみたら、ふっと気持ちが軽くなりました。

「枠にとらわれて出来ないことを改善するより、出来ることをしよう!」

ここからぼくの解決志向のスイッチが入ります。二人にマイナス面はあるけど、別のところでしっかり成果を出したり、良い印象を与えればいいのではないか。同時に問題は無くならないかもしれないが、少しでも改善されたり、二人への周囲の認知が変わることによって、部内外への悪影響は抑えられるのではないか。

「いまぼくらがこの環境で出来ることをどんどんしよう!」

このような過程を経て解決志向で取り組む姿勢が出来たと思います。そしてようやく従来のマネジメントや常識というフィルターを通さずに、AさんやKさんという「人」と真正面から向き合うことができました。

これまで以上に彼らを知りたいと思いましたし、言葉や振る舞いをよく聞いたり、観察して自分なりに理解を深めていきました。

とくに彼らが既に持っているもの、出来ていること、大切にしていることを仕事に関係あるなしに関わらず知る機会をもって、彼らが達成すべき目標とつなげていきました。

現在、AさんもKさんも目標達成に向けてがんばっています。同時にAさんの遅刻や急な欠勤は減って、Kさんの仕事に対する姿勢や報連相も改善され始めています。

こうした連鎖的な改善はたまたま起きているのかもしれません。でもそばにいて感じるのは、自分にとって大切なことが満たされることで意識も行動も変わっていく気がします。

「こわれていないものを直そうとするな」

「うまくいかなかったら違うことをしよう」

自分の解決志向スイッチを見つけて、前進につなげよう!

「あるもの」をつなぐ No.4 小林シンイチロウ” に対して12件のコメントがあります。

  1. シオタリョウコ より:

    ●対談テーマのアイデア
    マネジメントをとおして、浮き彫りになった(気づいた・見えてきた)”自分自身”への向き合い方

    ※小林さんの今回のブログ、またまた色々考えるきっかけになっています。もう少しあたためてからコメントいたします。笑

    1. 小林進一郎 より:

      シオタさん、テーマアイデアのご提案ありがとうございます!

      面白そうですね。マネジメントを通して自分自身の価値観や考え方がはっきりしてしまうように感じます。本当の自分を突きつけられる感じかなあ。シオタさんの着眼点はとてもユニークで刺激になります。

      そして、次のコメントがとても気になります・・

  2. 東瀨 和明 より:

    小林様
    お久しぶりです。
    直接お話した時から、小林さんの思想とSFへの変換方法やタイミングが似ているなと感じていました。
    2019年のInsidedayの後マネジメント業務をさせてもらっています。
    部下との関係が上手く行かない事、SFとPFのバランスの取り方や悩みが多く前進する事を辞めてしまおうと何度も考えました。
    その度、部下からもらうOKメッセージをもらい幾度となく助けられています。
    振返り深く考えてみれば私の思考のの中で自動的にSFとPFを切り替えてていた事、部下へのOKメッセージやみんなの意見や考えを肯定し彼らがやりたいようにさせていた事に気付きました。
    「社会人として」「一般的に」等の古来日本から伝わる押さえつけ観念に嫌気がさしている私には部下からの良くも悪くも意見はリソースであり、私の願う「自由から生まれる大成」へのスモールステップであった事、小林さんのブログを拝見させて頂き再確認出来ました。
    この二年間の出来事や自分の特性を理解した上でのSF+αでセルフ実践コースのレポートが書けそうです。(笑)
    コロナ過でお会いする事が難しいですが、またお会いしSFとマネジメントについてお話出来る事を楽しみにしています。

    1. 小林進一郎 より:

      東瀨さん、ご無沙汰しています!読んでくださっていたんですね 涙。つながっているようでとても嬉しいです。マネジメント業務されているんですね。SFマネジメントについて一緒に語り合いたいです。

      >部下からもらうOKメッセージをもらい幾度となく助けられています。

      ぼくも同じです。部下が悩みの種だったのに、結局は部下に助けられているとさえ思えます。そんなときは仲間がいるっていいなあって思います。ぼくはやっぱり仲間が好きです。

      >「自由から生まれる大成」

      素敵な言葉ですね。自由になればリソースは必ず見つかりますもんね。

      セルフ実践コースのレポート読んでみたいです!東瀬さん独自のSFマネジメントをシェアしてください!

  3. 谷奥勝美 より:

    シンイチロウさんへ

     読んでいて楽しいコラムですね。私が楽しいのはもちろんですが、シンイチロウさんが苦難を楽しんでおられる様子が伝わってきて”楽しい”という表現になってしまいました。ドラマや映画で例えるならハッピーエンドを迎えるための逆境とでも言いましょうか。
     
     私が知る限りでは、誰ひとり組織やチームの足を引っ張ろうなんて思いながら仕事をしている人はいませんでした。ちょっとした価値観の違いやしがらみがあって思い通りにならないこともしばしばですよね。
     でもそういう調味料(逆境)があるからこそ人生はより美味しく感じられるんですよね。コラムを拝読しそんなことを思いました。
     他人ごとのように書いてしまいましたが、私もまだそんな中をぐるぐる手探りで歩いてる人間です。
    多いに美味しい人生を楽しみたいもんです。
    だって人間だもの???(パクリでした)

    1. 小林進一郎 より:

      谷奥さん、いつも深い愛情を感じるコメントありがとうございます。仕事の疲れもふっとびます。

      >調味料(逆境)があるからこそ人生はより美味しく感じられる

      うんうん、と唸ってしまいました。調味料をうまく使えば美味しく食べられる!

      多いに美味しい人生を楽しんでいきましょう♪
      しあわせはいつもじぶんのこころがきめる パクリです 笑

      1. 谷奥勝美 より:

        いつかはパクらないで良い自分になっていたいですね!

  4. 豊村博明 より:

    絶対に管理職にしてはいけない人。
    1.いつも上役の顔色ばかり窺い、部下に対する態度を決める管理職
    2.成功は自分の手柄に、失敗は部下の責任にする管理職
    3.部下を自分の出世のための将棋の駒程度にしか考えていない管理職
    4.人事から、「この人預かって・・・」と打診されると、「とんでもない。課の足を引っ張るからイヤだ。」と拒否する管理職。
    5.上役から怒られたら、その感情を部下にぶつけてくる管理職
    6.上役に良く思われたいために、部下に無理難題を押し付けてくる管理職
    7.上役に言われたら、ころっとこれまでの態度を変える管理職
    8.自分が出来るからと言って、部下にもそれを求め、出来ないとバカにする管理職
    9.「お前らは俺の指示どおりしろ。相手には俺がちゃんと話をつけてやるから。」と言ったきり、何もしない管理職。
    10.自分は交際費を使いまくるくせに、部下から申請があがれば拒否する管理職
    その他、あげればきりが無いですが、紙面の関係上この辺で止めます。

    私は38年間のサラリーマン生活でこんな管理職をたくさん見てきました。

    青木さんのブログにこんなくだりがありました。
    我々と同じアドバンスコースの卒業生である横田理彦さんの修了レポートの書き出しの言葉だそうです。
    『相手の素晴らしさに気づくことにより自分自身が幸福を感じることがある。』

    小林さん、いつも私達を幸せな気持ちにしてくれてありがとうございます。
    私達は小林さんに何もしてあげられませんが、いつも心の中で応援しています。

    豊村

    1. 小林シンイチロウ より:

      豊村さん、心強い応援ありがとうございます!こうして見守ってくださっていることが、私には力になります。

      絶対に管理職にしてはいけない人、豊村さんのご経験から書かれていることもり、とてもリアルですね。私にも思い当たる人が具体的に浮かびます 笑

      ちょうど今日、こんな一場面がありました。

      マネジャーミーティングのときに、統括部長が一人のマネジャーをしつこく叱ったんです。リモート越しでしたがそのマネジャーの顔色がみるみるかわっていくのがわかりました。

      「私の進め方が悪かったと言っているのに、何度も叱るのはおかしいんじゃないですか!」

      30分ほど言い合いが続きました。統括部長は指導ではなく、見せしめで叱ったのです。彼はバツが悪そうな表情でマネジャーに謝っていました。

      叱っている統括部長に愛情がないことは、叱られている人も、叱られている様子を見ている人も気づいていました。

      統括部長が不具合ばかりを責めるのではなく、マネジャーの話に耳を傾け、仕事の不具合に至る前に彼がやってきた努力やその意図を知ろうとしてくれたら、あそこまで後味の悪いものにはならなかっただろうなって思います。

      『相手の素晴らしさに気づくことにより自分自身が幸福を感じることがある。』

      本当にそうですね。相手の素晴らしさやすごいところに触れると感動しますし、幸せな気持ちになりますね。

      グループの仲間と仕事を進める中で、そりゃあ、うまくいかないことも多いですが、キラリとひかる、感動的な場面に出くわします。壮大なんかじゃないし、地味な一コマだと思いますが、そこには確かにぼくと部下のつながりが生まれています。そのつながりがたまらなく好きです。

      豊村さんに頂いたコメントで、明日の部下との関わりを今まで以上に大切にできそうです。ありがとうございます。

  5. yasuteru より:

    解決志向のスイッチがオフのとき・・・って小林さんはどんな感じなんだろうって興味が湧いてしまいました。

    先日フェイスブックに電話会社への文句みたいなことをたった一言書いたら、「青木さんもそういう発言をするんですね。安心しました。」という意味あいのコメントをもらいました。ソリューションフォーカスの伝道者をしていると、「すべてをポジティブに」みたいな状態を目指していると”誤解”されているなあと思うことが時々あります。その”誤解”が役立つときもあるでしょうけど、「すべてポジティブ」的な志向はかえって毒になることもあるので、要注意だなあと最近は思っています。

    そんなことを思っていた時にこのブログ記事のタイトルを見て、「オフの時は?」と好奇心が湧いてしまいました(笑)。

  6. 小林進一郎 より:

    青木さん、コメントありがとうございます。

    ここ数日あっついですねー 💦
    すべてをポジティブに、はさすがに辛いですね。いろんなやっちゃんがいることを知ってほしいです 笑。

    普段からOKメッセージを心がけていると言う点では、日常でもオンです。だけど部下のうまくいっていることをもう少し聞いてあげるべきだったなと後で振り返って思うこともあります。

    特に深刻な問題があるときは冷静でいられず、スイッチの存在を忘れてしまいます。スイッチどころか我を忘れてしまうこともあります。

    なので、解決志向で振り返る機会を定期的に持つようにしています。朝会とかOJTミーティングとか。これが大事なのかもしれません。

    *******************

    以下は付録です。青木さんのコメントに刺激されて記事を捕捉を追記しました。

    No4ブログでは、部長からAさん・Kさんの勤怠や仕事ぶりが悪い問題を改善するように何度も要請されました。

    しかし、この問題を解決しようとしたけど全然うまくいかなかったんですよね。

    うまく改善できた時を見つけて増やすことも試みましたがダメでした。

    そのうち部下は嫌な顔してぼくを避けようとするし、ぼくは疲れてくるし、上司は改善しない状態を見てイラついてるし。

    このままだとぼくの上司も、ぼくの部下も、ぼく自身もハッピーになれないと感じていました。残念ながらぼくの力量ではこの問題は解決できない。

    結局気づいたのは、Aさん・Kさんの勤怠や仕事ぶりの悪さを直接無くすのは難しいということ。

    ここでおっきく解決志向へ振り切りました。問題解決はやめてぼくの上司と部下、そしてぼく自身の3方良しの方向を探ろう。ここからが本格的に解決志向にオンした状態です。解決志向の真骨頂である、目の前の問題ではなく、その向こう側にあるハッピーな状態を目指しはじめました。

    上司が問題視する真意、部下がうまくやれること、周囲にあるリソースを探して、3方良しの解決へ向かうストーリーを創ってとり組んでいます。いまも進行中です。

    1. 青木安輝 より:

      人間いろいろな時があるからこそ、「解決志向で定期的に振り返る機会」って大事ですよねえ。なんだかSFサーモスタットの感度がよくなりそうだなあ。

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