「あるもの」をつなぐ No.1 小林シンイチロウ

みんな頑張っている!

<連載のコンセプト>

連載テーマを決めるときに解決志向で取り組んだ仕事を振り返ってみました。すると各取り組みはそれぞれ特徴があったのですが、1つ共通の要素があったのです。それは「あるもの」からスタートしていることでした。

どんなに大きくて遠い目標に向かうときでも、「あるもの」に着眼して使っていくことで、無理なく、早く一歩を踏み出せるんだと改めて気づき、タイトルを「あるもの」をつなぐとしました。

このタイトル括りで解決志向の取り組みを読みやすい形で記事にしていければと思っています。どうぞよろしくお願いします。

<組織風土改善の取り組み>

初回は株式会社ソリューションフォーカス主催のJ-SOL2(2009年)で発表した組織風土改善の事例を、そのときに感じていたことも含めて書いてみたいと思います。

2007年当時、僕はメーカーの購買部にいました。世界的な資材高騰でメーカーは大打撃を受けていました。資材高騰を抑えるため、組織メンバーは必死に努力していましたが、やってもやっても報われず疲弊感でいっぱいでした。改善のためロジカルに分析した解が提示されても、声をそろえて「これで問題が解決できるとは思えない・・・」

すると・・だんだん本音が出てきました。

「上司は部下を詰めるだけで、どうしたらよいか示さない。」

「担当者は自主性がない。自分で考えて動いて欲しい。」

ベテランと若手の対立構造がくっきり。つまり、業績の悪さ、忙しさ、それに伴う余裕のなさや疲弊感が組織をギクシャクさせてしまったのです。「いろいろあるが部内のコミュニケーションが問題なんじゃないか」と部長が指摘。ここでコミュニケーションの問題として取り上げられました。部長は僕に風土改善隊長を命じ、組織風土改善PJがスタートしました。

このころ僕は後輩のHさんが毎日上司に叱られ、辛そうにしているのが気になっていました。「月曜日に会社に来れているだけで自分はえらいと思う」と言っていたくらいです。僕はHさんの状態をなんとかしたいという個人的な想いと、こんなにみんな頑張っているのだから、それを業績につなげたいという想いを風土改善の取り組みにのせました。

成果を出さなきゃいけないのはわかっている。でも環境要因でどうしても直ぐに成果が出にくい。一方、課題に立ち向かうなかで、たくさんの工夫や努力、同僚どうしのサポートが「ある」し、少ないながらも上司部下の間でも助け合いが「ある」のを私は見ていました。そして、組織を前進させるきっかけとして、そうした工夫や努力、助け合いが知られたり、認められたり、褒められたり、感謝されたりする機会が必要だと感じていました。

そこで、解決志向の発想で組織風土改善に取り組んだのです。

まずは、担当者、マネジャー、部長一人一人へのヒアリングを実施。目的は問題を把握することではなく、問題を聞きながらもどうなったらいよいか?を引き出すことです。そしてここが重要なのですが、これまでの活動をしっかり労う(OKメッセージ)ことで自身が変化する準備(プラットフォームにのる)を整えます。

特に部門の長である部長がプラットフォームにのることは超重要です。はじめのうちはメンバーへの愚痴ばかり。その後部長がどれだけ組織のためにがんばってきたかを聞き、しっかりと労いました。結局、2時間3回のヒアリングを実施したのちに、「仕事をプロ意識を持って、自主的に進めてくれるといいんだがのお。わしはどうしたらいいのかのお〜。」と発言が変わっていき、変化への準備が整いました。ここで大切なのが部長への労いです。部長は頑張るのが当然と言う人もいるかもしれませんが、部長だって褒められたいし、認められたいのです。そうすることで変化に対して柔軟になります。

次に、すでにある「お互いに役立ったコミュニケーション」を吸い上げて、それを月1回の全体会議で共有しました。例えばこんな内容です。

「部長が話をじっくり聞いてくれた」

「素朴な疑問を同じ目線にたって聞いてくれた」

「上司の考えや意見が聞けた」

「部下が何も言わずに一緒に作業を手伝ってくれた」など。

この後、組織メンバーは良い変化に気づきやすくなりました。こんな変化があった、あんな変化があったと2回目以降のアンケートに記載してくれました。スケーリングも活用しながら進捗を確認し、着実に組織風土は改善していきました。

しかし・・23人のメンバーがいればいろんな意見が出てきます。トントン拍子に進むわけがありません。組織メンバーのIさんからこんなメールが飛んできました。

「風土改善てなんですか?面倒なことから目をそらし事なかれ主義でいくことですか?一生懸命やってる人が我慢をしてる状態をそのままにしていいのですか?駄目なものは駄目ってきちっと上司の人が言ってくれないと駄目なんじゃないですか。いまのままでいくら風土改善のアンケートを行っても基本的なところでの改善ができなければよくならないと思います。なので今回はアンケートに答える事ができません。」

これには僕もガックリきました。「みんなのために一生懸命やってんのに!」という思いも込み上げてきました。僕は一人で抱えきれなくなりました。SF実践コースに参加中の取り組みでしたので、当時講師だった青木さんにメールをして泣きつきました。すると青木さんは慰めてくれた後に「大変だと思うけど、こんなときに小林さんのフューチャーパーフェクト(風土改善後のありたい姿)からするとどんな関わりをしているのかな?」という質問をもらい、「はっ!」としました。そして僕はこう答えています。

「自分のメッセージをしっかり受け止めてくれて、一緒になって考えてくれる状態が風土改善されているイメージです。そうだよね、そう思う事は当然だよね・・とまずは受け止めてくれる組織です。」

その後直ぐに僕はIさんの想いを聞きました。実はIさんと同じ契約社員の人が業務中に私用のネットをみていることが多く、不公平感を感じていることがわかりました。Iさんにしてみれば、そんな不公平な中で良いところしか見ない風土改善なんて協力したくないのも当然でした。とにかくIさんの話をじっくり聞きました。

話を聞いているうちに、「もっとスキルアップして会社に貢献したい。一緒に仕事をしているFさんがスキルを教えてくれるのでありがたい」と前向きな話になっていきました。だんだんと風土改善も前向きに捉えてくれるようになり、アンケート報告会の出席をお願いしたところ、「小林さんが言うんだったらしょうがないでしょ」と承諾してくれました。

こうしたピンチがいくつかあり、周囲の助けも借りながら進んでいったというのが正直なところです。1回目のアンケートも23名中回答者は14名でした。「自分たちのことなのにやる気ないなあ」と一瞬は思いましたが、解決志向のスタンスで14名の回答を活かすようにしました。

この取り組みで大事にしたのは、既にある「お互いに役立ったコミュニケーション」に着目したこと。避けたかったのは、悪者をつくらないことです。悪者がつくられてしまうと風土は悪化してしまいます。

風土改善は僕が他部署へ異動する直前までの3ヶ月間実施しました。道半ばで後ろ髪を引かれる想いでしたが、この取り組みをやって良かったと思った瞬間がありました。

それは、僕が異動のために机を整理しているときでした。後輩のHさんが僕の傍に立ってこう言ったのです。「小林さん、会社に来るのが嫌じゃなくなりました。ありがとうございました」

これを聞いたとき、涙が出るほど嬉しかったのを覚えています。組織風土改善に取り組んで良かったと心から思いました。Hさん、伝えてくれてありがとう。

みんなの頑張りを組織の力に!

「あるもの」をつなぐ No.1 小林シンイチロウ” に対して3件のコメントがあります。

  1. 谷奥勝美 より:

     初めまして、谷奥と申します。
    僕はJSOL-2に参加していなかったので小林さんのお話を聞く機会をいただけて
    うれしく思っています。
     まるで一本の映画でも見ているようなすがすがしい気分で読み終えることができました。
    タイトルの「みんな頑張っている!」の中にすべてが凝縮されているようですね。
    外的要因でぎくしゃくした組織だったのが、メンバーの頑張りや協力に気づくことで
    小林さんのおっしゃるように助け合いを確認しあったり、認められたり、感謝されるような
    ことに気づけるように職場全体が変化していったのがよくわかります。
     こういうことってIさんの事例でもわかるように、人にはもともと備わっている
    事なんだなあと再確認しました。
    そしてよく逆風を乗り換えることができましたね。逆風は前に進んでいる証拠ですから
    この体験は小林さんのその後の活動に大きな自信となったことでしょう。
    また「小林さんのおかげで・・・」と言ってくださったHさんのご活躍を想像すると
    気持ちが明るくなります。時代を超えて大切にしたいものですね。
     本当にありがとうございました。

    1. 小林進一郎 より:

      谷奥さん、コメントありがとうございます。伝えたいことを受け取ってくださったことも嬉しいです。

      10年以上前の事例になりますが、僕にとって強烈な原体験となった取り組みでした。たしかに自信になっています。1担当者でも組織を変えることができるんだと手応えを感じていました。

      2年前にHさんが本社に出張で来ているのを見かけました。大きな声で打ち合わせしてたのを見て、とても頼もしかったです。

      1. 谷奥勝美 より:

        小林さん

        おはようございます。
        原体験、大切な言葉ですね。
        私にもあります。

        最近は若い人達に頑張って
        ほしいと思うようになりました。
        歳のせいですかね。
        SF共感の輪がどんどん
        広がることを願っています。

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