快い日々を生きる No.29 渡辺照子
三つ以上の状況を自分に見せてあげることで快く生きる
とある9月週末の朝、散歩に出た。とある住宅の庭で、私よりも10歳は年上と見えるおじさんが、庭先の植物に、シュッシュッと液体を吹きかけていた。「おはようございます。」とあいさつすると、あいさつを返してくれて話し始めた。おじさんの話の内容はこう。
「見て!この田んぼのあり様。草が生えてボーボーだよ。もう少しすると草が枯れて、うちの車庫に葉っぱが吹き込んでくる。たまんないよ。なんとならないかなァ。前はこの時期になれば、稲穂が出てきれいに揃った田んぼの景色が見られてよかったんだよ。怒りたいくらいだよ。あんた、暇を見つけてあの田んぼの草、刈ってくんない?!?!」
最後に伝えられたおじさんの、「あんた、暇を見つけてあの田んぼの草、刈ってくんない?!?!」の言葉、赤の他人であり、田んぼの地主関係者でもない私に、このような言葉を言わなければならないほど、憤懣やるかたなき状況にあることが察せられた。
「最近農家の方も高齢化して、米を作りたくてもなかなか続けられないとか、きっとご事情があるんでしょうね。」と返したけれど、おじさんには何の慰めにもならなかっただろうと思う。おじさんに別れを告げて、さらに散歩の歩みを進めると、住宅街の中の敷地いっぱいに、太陽光発電のソーラーパネルが取り付けられている光景を見た。先ほどのおじさんの家から歩いて10分ほどの距離。
ふと思った。あのおじさんの家の前が、このソーラーパネルの景色だったら、おじさんは、あの草ボーボーの田んぼと、このソーラーパネルの景色と、どっちがいいのかな?
私は心の中では、この人工的なソーラーパネルの景色より、たとえ草ボーボーでも毎日眺めるなら、自然の景色の方がいいんじゃないのかな?と思った。
実際におじさんにきいたら、どうお答えになるかわからないけれど、おじさんがあのように不快感をあらわにしているのは、「前の稲穂の田んぼの景色」と「今の草ボーボーの景色」を比較しているから、「前の方がよかったのに」と嘆いているということになると思う。もしあのおじさんが、前と今という状況だけでなく、家の前の田んぼに、ソーラーパネルが立ち並ぶ景色や、騒音を立てる工場が建つとか、子どもたちが楽しげな歓声を上げる公園になるとか、いろいろな状況を自分に見せてあげることができたら、窮屈そうに現状を嘆く状況からは、脱することができるのではないかと思った。
私が生業にしているコーチングに、「提案」というスキルがある。一般的に提案とは、相手の解決を手伝おうと提案するとか、上司が自分の思うように部下に動いて欲しい時、指示の代わりに、提案という形をとったりなどすると思う。コーチングでの提案はどうかというと、
①相手が持っている案をすべてきく。
②これ以上無いという返事が返ってきたら、許可をとって、1個だけ提案する。
③ ①と②の案を全部横並びにしたうえで、相手がどのようにしたいか、相手自身に決めてもらう。
というものだ。コーチングにおける提案の機能は、相手の選択肢を広げるということ。
実際にコーチング時に、提案のスキルを使った後、クライアントにどうだったかたずねると、
「選択肢があることがわかって、視野が広がった気がする。ほっとした。」などの答えが返ってきて、表情がほころぶことが多い。
先ほどのおじさんの話に戻ると、おじさんが、「きれいな稲穂の景色」か「草ボーボーの景色」かだけでなく、ほかの複数の状況を自分に見せてあげることができたら、おじさんの快さが格段にアップする気がした。
おじさんのことは客観的に捉えることができるけれど、日々の中では、あのおじさんと同じように自分も陥ることがある。三つ以上のなるべく複数の状況を自分に見せてあげることを意識することで、日々の快さを味わって生きてゆきたい。
渡辺さんへ
渡辺さんとおじさんのエピソードの続きが聞きたいなあって思った。ぜひぜひ!
だって初対面の人に「あんた、暇を見つけてあの田んぼの草、刈ってくんない?!?!」は最高です。おじさんの人柄か、照ちゃんの親しみやすさか、土地に染み込んだ風土なのか。😊
でもその前に照ちゃんが「おりゃ〜ッ!」と声を上げながら草を刈っている姿を想像するだけで楽しいですね😁
がんばれ〜!
コーチングでの提案のお話、ありがたく頂戴いたします。何かをしようとする時に狭くなった視野を広げることは余裕が生まれてきそうです。自分にも人にもと心がけてみます。
ブログが始まって三年半。すこーしづつ筆者の皆さんの進化が伺われそうです。いつも楽しみです。おっくん
おっくん、いつもコメントをどうもありがとうございます。
ブログが始まってからの進化を読み取ってくださっているとは、ありがたいです。
あのおじさんところの草を刈ることはないですが、私は日ごろ母の畑を
手伝っているので、
❝おりゃ~ッ!❞はありな話です。
秋になりました。行動も考えることも、落ち着いてできそうな雰囲気のある季節ですね。
おっくん、快活に日々楽しんでお過ごしくださいませ。
「行動も考えることも、落ち着いてできそうな雰囲気のある季節」・・・ではちょっとは頭を使って70才までのシナリオを描いてみようかな。青木さんのようにね。
おっくんの70までのシナリオ、ぜひ、おうかがいしたいです~!