快く生きる日々 No.26 渡辺照子

「人をもてなす」とはこういうことか

去る4月13日、群馬県に住む私は、生まれて初めて沖縄の地に足を踏み入れた。目的はライブに参加すること。知人である精神科のドクター・きよしさんは、ウクレレやギターが上手で、プレスリーになり切って歌う才能があるときいていた。

時はさかのぼって、去年の6月、ソリューションフォーカス同窓会を、本田ポンタさんと共に幹事をさせてもらって催した。青木安輝さんはもちろんのこと、多くのソリューショニストが東京に集結なされて盛会だった。

その際、きよしさんのウクレレが聴きたいという青木安輝さんのリクエストをお伝えしたところ、きよしさんは快く応じてくださった。わずかな時間だったけれど、MCも演奏姿も、動きが機敏で堂々としていらした。(余談だが、きよしさんは、実年齢は定かではないものの、私よりは年上であることは間違いない。それから、普段は快活・活発というより、もの静かに微笑んでいる方。)私の目にとても魅力的に映り、きよしさんがなさるライブにぜひ自分も行ってみたいと思ったのである。さらに、沖縄にセカンドハウスをもつ友人は一足早く、昨秋の第11回ライブに参加し、❝とても楽しかった。一緒に行った友人がエネルギーをもらえ、また行きたいと言っている。❞と感想をきかせてくれた。ということで、私は何としても行ってみたくなっていた。

沖縄行きが初めてだとお伝えすると、きよしさんは、沖縄の見どころがまとまっているYouTubeのリンクやホテルのリストも添えて送ってくれた。4日間の滞在に関して、地元の方だからこその情報を織り交ぜたプランまで示してくださった。挙句の果てに、前夜にはリハーサル後に、旅の作戦会議を開こうとまでおっしゃってくださって、お疲れでいらっしゃるでしょうに。丁重にお断りしたが、大切なライブの前夜、沢山することや思うことがおありであろうところを、私にまでお気遣いくださるそのお気持ちが、大変ありがたく思えた。

ひとりでの参加だったが、解決志向勉強会のメンバーの皆さんと同じテーブルにお招きくださって、私のことを事前に知らせてくださったようで、気さくな皆さんと直ぐに意気投合。当日は『監獄ロック』を演奏するから、その時は、ボーダー柄のシャツを、解決志向のメンバーと着て参加してねと、きよしさんから事前に声をかけてもらってもいた。初めての私が自然に場に溶け込めるようにいざなってくださる。事前の不安が消えて、当日をただただ楽しみに待つことができたのも、きよしさんのお心遣いがあったからこそだ。

それで、ライブ本番。黒のサングラスと衣装がばっちりきまっている。プロのバンドの方々をバックに据え、ギターの上手なお仲間も伴い、まるでお笑い芸人のようなMCと楽器を担当してくれる赤いドレスをまとった方々と共に。単にコピーをばっちり行うライブなのだと思っていた。

ところが、会場横のスクリーンに、「遠くへ行きたい・ジェリー藤尾」の文字が画像と共に、パワーポイントが映し出された。人はなぜ遠くへ行きたがるのだろうかと、会場に問いかけられ、永六輔さんの番組を皮切りに、人気の旅番組がずらりと書き並べられたリストが示された。そして、なぜ人は遠くに行くのかの分析として、逃避、人生に対する不安、日常生活のマンネリ、ストレス発散と記されて、ふむふむとなっているところに、好奇心、学習・成長、体験、冒険心という言葉が追加される。ライブに来ているんだけれど、さながら精神科のドクターの講義の様相。

更には、私は医療従事者。人工呼吸の仕方を今から皆さんに教えるよ。とユーモアたっぷりに告げられ、こうやってみて、はいはい、そうそう、もっとしっかり腕を伸ばして、とやっているうちに、Bee Geesの『ステイン アライブ』が演奏され、「は、は、は、は」っとなるところでは、「はい、マウス to  マウスだよ。」と言って、私達にも、「は、は、は」とすることを指示。するとどうでしょう?いつの間にか、会場中が踊りの渦に巻き込まれているのだ。

この時、私は、もうおかしくて面白くて、笑い転げて、顔の筋肉痛になりそうになった。愉快でたまらなくなった。こんな自分に久しぶりに会った気がした。

集まっている人数は、おそらく100人前後。年齢はさまざまだが、中高年の方も少なくない。そういう中、皆が踊りに繰り出す。皆愉快そうに笑顔で。この巻き込み方っていったい何なのだろう。

その後、ELVISプレスリーの歌が、解説と共に、次々歌われていく。『Hard Headed  Woman』が熱唱されると、日ごろ、きよしさんの解決志向勉強会に参加なさっているお一人が私に耳打ちした。「今の先生は、もう、Elvisになりきっているよ。」と。見てみると本当にそう。エネルギーがみなぎっている。好きなことをする、本気でやるってこういうことなんだな。と思えるような勇姿であった。

会場では奥様とお嬢様が、場にいらした方々に丁寧に親切に対応され、きよしさんご本人も、出演の合間に客席を廻って、ナチュラルに声をかけていらした。東京から息子さんご夫婦とお孫さんも駆けつけていらして、会場には、奥様が学んでおいでのフラの先生方やお仲間も多く駆けつけているご様子だった。ご家族一丸となって、ホストとして皆を招き入れていた。

私は今回の沖縄行きで、大きく二つの学びを得た。一つは、「人をもてなす」ということがどういうことかを学べたこと。ライブの進め方そのものが、会場中を自然に巻き込んで、❝今ここ❞に皆を招きいれてくださっていたし、ご家族一丸となって、おいでになられた人々を歓待してくださった。さらに、きよしさんが、ご自分にはライブを実行するという大変なことが控えているにも関わらず、初めて沖縄を旅する私をお心にかけてくださったところからも、おもてなし精神の真髄を肌で味わうことができた。

そして、二つには、きよしさんから、生き方を学べたこと。好きなこと、本当にやりたいことを、本気ですることの生き生きとした情熱の発露を、私も私なりのやり方で体現したいと心から思わせていただいた。ライブは、第13回目も既に計画されている模様だ。

羽田から群馬へ向かう新幹線に乗っているとき、きよしさんから私が写っているライブでの写真が複数枚送られてきた。「家に着くまでお楽しみください。」というメッセージと共に。相手が今、どのようであるのかを想像して、配慮して行動する。きよしさんのおもてなしの心は、どこまでも深い。

こうして、私の初沖縄の旅は、快い余韻と共に終わった。

        *記事や写真の掲載について、きよしさんのご承認をいただきました。

快く生きる日々 No.26 渡辺照子” に対して2件のコメントがあります。

  1. おっくん より:

    渡辺さんへ

     長田さんにはJ-SOLで何度かお見かけしておりましたが、コラムを読ませていただいたことで意外な一面にも触れることができて、益々ファンにならせていただきましたよ。
     また、十数年前に僕が初めて参加したラボウェスト(実践コース二期生主催)に長田さんも参加されており、その日の懇親会で「は、は、は、は」と踊ったことが思い出されます。体と心と会場が一体となって本当に楽しいひとときでした。(この感情を文字に表すのは難しいですね😅)

     僕は皆さんのコラムに登場する人々の行動理由をより理解するためにプロフィールを調べてみることがあります。もちろん肩書き程度ですから全てを理解することはできませんが、何となく伝わってくるものがあるようです。
     長田さんも医学博士であり、心療内科のクリニックを経営の傍ら様々な団体を主導されるお立場でご尽力されているようですね。納得したのは歌や音楽を使った心療の分野を開拓されようと尽力されているところです。「なるほどなぁ」とすごい人であることだけはわかったような気になってしまいます。・・・だから「は、は、は、は」のようなことを見事にやってのけてしまうんだろうと。素敵な意味をふくみながら。

     話は変わりますが、ザクロス時代に当時の本間所長が「SFは右脳を使うんだ」という意味の話をされていたことを思い出します。確かに理屈ではなく五感や感情から理解したり、好意を持ったりすることってたくさんありますよね。僕なんかそればっかりというか、無理矢理にでも?良い人ばかりと思い込むところからスタートしているのかもしれません。いゃ〜おもしろ〜いです。

     今日はこの辺で‼︎
    尻切れとんぼのおっくんより

    1. 渡辺照子 より:

      おっくん、コメントをどうもありがとうございます。
      ウクレレきよしさんへのご興味、深まっているご様子、私も同じです。

      (この感情を文字に表すのは難しいですね😅)・・・そうなんですよ。
      その通りなんです。共感します。

      ザクロス時代に当時の本間所長が「SFは右脳を使うんだ」という意味の話をされていたことを思い出します。・・・こうやってずっと以前のことも覚えていて、活かしていらっしゃるって、すごいことだなあって思います。

      無理矢理にでも?良い人ばかりと思い込むところからスタートしているのかもしれません。・・・そうできるのは、おっくんの才能でもあると思います。

      今日はこの辺で‼︎尻切れとんぼのおっくんより・・・おおいにOKです。
      おっくん、いつもどうもありがとうございます。

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