快い日々を生きる No.24 渡辺照子

タクシーに乗ったら私は運転手さんと会話する派

1月末のその日は、コーチング5連ちゃん。とある会社さんに行って、5人の幹部とのコーチングを行う日。駅前から社屋までの20分間ほど、タクシーに乗った。

普段から、私はタクシーに乗ったら運転手さんに、語っていただくことが多い。これまでに、いろいろな話をおききする機会を得た。「40代のこれまでは営業をやっていたけれど、これからは自分のやりたいことをやるために、タクシードライバーになったのよ。」と熱く語る女性運転手さん。「男手一つで育てた息子が医者になってくれたことが嬉しい」と満足げに語る父親の運転手さん。「昨日東京に出てきたばっかりで、東京のどこに何があるか全くわからなくてごめんね。」と私に謝る運転手さん。「この仕事をする前は、海外で照明をイベントでデコレイトするディレクターをやっていたんだ」と語る運転手さん。「今まで一番スリリングだったのは、刑事さんぽい人が乗り込んできて、犯人が乗っていると思われる別のタクシーを追跡したとき」と語る運転手さん。「実はこの仕事とは別に会社を経営していてね、最近息子に任せているんだけど、消費者動向をなかなかつかめないようで、何かいい話ない?」とそう聞かれてもと、私を戸惑わせてくれた運転手さん。「海外に旅行に行って、旅先で出会った彼と結婚して今があるのよ。」とタクシーメーターを止めてまで、話してくれた運転手さんなどなど、まだまだ書き切れない。

その日は、これから仕事だということもあり、タクシーに乗り込んだものの、私からは話しかけずにいた。しばらくすると、キャリーバックを持って乗ったからか、コートの下に着ているのがスーツだとわかったからか「ご出張ですか?」と運転手さんの方から声をかけて来た。話しかけてきてくれたのなら会話をさせていただくかと思って聞き始めると、「長野県の出身である。自宅から1~2時間ほどのところにスキー場があったが、スキーをする親ではなかったので、子どものころはスキーをしたことがなかった。高校生になったとき、大学に行って、長野出身なのにスキーができないと恥ずかしいと言われスキー部の友人に教えてもらったことがきっかけでのめり込み、ワンシーズンに30日ほど、宿に住み込みで働きながらスキーをしたり、スキー学校の指導員のアルバイトをやったりもした。その後、サラリーマンで全国を転々とする仕事に就いたため、スキーから離れていたが、子ども達からせがまれて日帰りで栃木にスキーに行くようになった。その子供たちも大きくなり、下の子がこの春大学を卒業。就職して北海道に行くらしい。なぜ北海道の会社に行くのか、これまできけなかったけれど、最近になってきいたら、どうやら北海道に彼女がいるらしい。そんな理由で北海道の会社に決めてしまって、その彼女と別れたらどうするつもりなんだろう。妻とはスポーツクラブで知り合った。当時彼女は体育大生で、スポーツクラブで水泳を教えてもらった。彼女がインストラクターだったというわけではなく、彼女もクラブの会員で、仲良くしているグループで一緒に食事に行ったりするメンバーの中のひとりだった。間もなく30歳になるというとき、親を心配させまいと結婚しようと思いたったら、その時彼女がたまたま身近にいた。妻は金沢出身で、実家の家族は無事だけれども、被災した友人がいて、1月1日は心配して連絡を取ったけれど連絡がつかず、2日にやっと連絡がついた。この春からは妻と二人暮らしになるから、いったいどんな生活になっちゃうんだろう。彼女はスキーが結構うまい。これからは妻と二人でスキーに行くようにしようかな。」

運転手さんの話は次から次へと展開されるけれど、もうすぐ降りなければならない。話が途中になってしまわないか案じていたら、ちゃーんと運転手さんの方から話を締めくくってくれた。

「(私が群馬に住んでいると伝えると)長野に住んでいる頃、自宅近くから通じている道路があり、隣の県だけれど草津温泉には何度も行ったよ。お客さんが同郷だったり、故郷が近いとわかると懐かしい感じするし親近感がわいて嬉しくなり、つい話がしたくなる。」と。

20分の間、運転手さんと私が話す割合は、7対3。話そうと思えば、私の方が多く喋れるけれど、合いの手を入れながら、あえて質問をしながら私は聞き役に回る。自分はなぜそうしたのかと思い返してみると、「運転手さんに機嫌よく話をしてもらいたいな。」と思ったから。ただそれだけ。相手に機嫌よく話をしてもらいたくなるのは、旅館業の家に生まれたからなのか、無意識にそうしてしまう。そして、思い返せば子どもたちが思春期の時、面と向かってはなかなか話さないが、私が運転して、子どもが後部座席に乗っているときだけ、なぜか話が弾んだということも思い出した。

窓の外に目をやると、空気が澄んだ冬の景色。天気が良く、青空が気持ちいい。頃合い良く仕事先にももうすぐ着く。今日の仕事はきっとうまくいくという感覚にもなった。運転手さんに気分良くなってもらおうとしていた私自身が、運転手さんとの会話で、心地よくなっている。この後の仕事をかんばるぞと意欲の高まりが出てきた。

タクシー車内をどういう時間にするかは、自分が選べる。私は今後も運転手さんとの会話を楽しんでいくつもりだ。そこには様々なドラマがあって、興味深い。私は話すのも好きだけれど、聞き役はもっと面白い。

さて次にタクシーに乗るのはいつだろう。どんなストーリーに出会えるのだろう。タクシー運転手さん達よ、安全運転をしつつ、どうぞ語ってね~

快い日々を生きる No.24 渡辺照子” に対して8件のコメントがあります。

  1. 本間 俊介 より:

    渡辺様のブログはいつも暖かみと心地良い安心感を覚えます。多分永く勤めている運転手さんは、渡辺様のそれを感じとる感性が磨かれていて、話かけやすいのでしょうね、というか話たくなる場ができてしまうんでしょうね。相模原からタクシーに乗りジェットストリーム放送にかえてもらいながら、今日は何時まで仕事ですかをきっかけに、楽しいひと時の13年を懐かしく追い出しました。やはりどの運転手さんも話好きでした。本間

    1. 渡辺照子 より:

      本間さん、コメントをどうもありがとうございました。本間さんも運転手さんと会話する派なんですね。

      運転手さんが話したくなる要素を私が持っているとのokメッセージを、大変うれしく頂戴いたしました。

      私が思うに、本間さんも相手が話したくなる要素の持ち主でいらっしゃると思います。なんでかというと、物事の本質を貫いたお話をなさるので、対話しているときの距離感が、ひとりの人間とひとりの人間が実直に話す距離感に、一気に運ばれる感覚になります。その距離感や空気の中で、本間さんのお話しなさることは興味深いし、本間さんに話しかけられたら、本間さんと向き合っていながらも、自分が自分と対話をしながら、真摯な姿勢で話したくなる、そんな感覚を覚えるのであります。

  2. こばちゃん より:

    照子さんの記事をきっかけに、私のタクシードラマを回想している朝です^^ 私は、海外先のタクシー乗車の方が記憶の大部分を占めていて、騙されて連れて行かれないか/ メーターは動いているのか/ 居眠り運転してないよね!!!? / みたいな(笑)ハラハラドキドキ体験の方が強いです。大半は、乗車している国において母国語を話さない「お互い言語に不自由な者」通しの非言語コミュニケーションでしたけど、確かに、そこに居合わせた二人組には、かなりのドラマがあったのだろうと思い返しました、、、次、海外先でタクシーに乗る機会があれば、思い切ってドライバーさんに話しかけてみようかなと思いました!(めちゃくちゃ楽しいぞ、きっと)
    素敵なきっかけをありがとうございます。

    1. 渡辺照子 より:

      こばちゃん、コメントをどうもありがとうございました。こばちゃんは海外先でタクシーに乗るご経験がたくさんおありだったのですね。

      こばちゃんのコメントを拝読して、35年くらい前にニューヨークに仲のいい友達と旅行をしたとき、タクシーに乗るのに、まさにこばちゃんと同じような感覚になったことを思い出しました。

      最近、Uberタクシーなるものができて、いわゆるタクシー会社の運転手さん以上に、運転手さんへの安心感を持って乗れる仕組みがあるらしいと聞きました。安心感はあるけれど、ビジネスライクそうだなあとも想像しています。それとは別に、確か、タクシーに撮影クルーが乗り込んで、タクシーの運転手さんに人生語りをしてもらう番組があったように記憶しています。

      ・・・こうしてみると、タクシーの中は、ドラマがいっぱいなのかもしれませんね。

      何はともあれ、こばちゃんが、海外先でタクシーに乗る機会を得て、思い切ってドライバーさんに話しかけてみて、会話を楽しまれてのご感想、ぜひお聞きしたいです。

  3. おっくん より:

    渡辺さんへ

     タクシーの中でアプリシエートし合ってるんですね❣️わかります、だって僕も会話派だから😁

    1. 渡辺照子 より:

      おっくん、コメントどうもありがとうございます。

      おっくんが会話派であることは想像がつきます。おっ君がフェイスブックで、ホテルのドライバーさんとして、乗客の方々と織りなしたドラマを掲載していらっしゃいましたので、だもの、おっくんがタクシーに乗ったら、めちゃめちゃ楽しく熱い時間を繰り広げているだろうな~と想像できます。

      そっかー、青木さんが企画実行なさっているプログラム・「アプリシエート」は自分語りの場ですものね。タクシーの車内は、乗客と運転手さんが織りなす❝自分語りの場❞なのですね。これは発見!おっくん、気づきをありがとうございます!

      1. おっくん より:

        渡辺さんへ

         おはようございます。
         このテーマはとても興味がありすぎて深掘りしすぎないようにあえてコメントは短文にしました😄渡辺さんが返信にFBの話題を取り上げてくれたのを見て、私のことを理解してくれているのが嬉しいです。

        1. 渡辺照子 より:

          おっくん、そうだったのですか。あえて短くお書きくださったところには、意味があったのですね。オンラインで表現したことの交換で、人同士として相互理解が深まっていくって、とても面白い体験をさせてもらっています。
          おっくん、いつもありがとうございます。

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