ゲスト投稿記事 No.8 上野和禎さん

『人と人との温かな関係性を育む
 ソリューションフォーカス』

【執筆者自己紹介】
こんにちは!上野和禎(うえのかずよし)と申します。人材育成や職場環境の改善に貢献するため、コーチとして活動しています。現在はスクールソーシャルワーカーとしても活動し、不登校やいじめに悩む児童・生徒、その保護者を支援しています。自身の経験を通じて「共感力」や「承認力」の重要性を学び、ソリューションフォーカスの考え方を実践する中で、温かな人間関係の育成を目指しています。父親として子育てにもソリューションフォーカスを取り入れ、小さな成功を重ねながら成長し続けています。本ブログでは、その実践の中で得た学びや気づきを共有できたらと思っています。


共感力の欠如に改めて気づいた瞬間

「上野さん、私はあなたにもう二度と話を聞いてもらいたいとは思わないです」

この言葉を聞いたとき、私は自分にガッカリした一方で、「ああ、やっぱりそうだよなあ」と認める自分がいました。現在、私はコーチとして活動する一方で、不登校やいじめで悩む生徒や保護者の相談に乗るスクールソーシャルワーカーという仕事もやっています。この言葉は、“共感力を磨く”というテーマで、スクールソーシャルワーカーの先輩に母親役をしてもらい、私がスクールソーシャルワーカー役としてロールプレイ(模擬面談)を行った際、先輩から率直な感想として私に伝えられたものでした。強い言葉に心が揺さぶられ、自分の過去から現在の歩みを思い返すと、私には相手の気持ちに寄り添う「共感力」や「承認力」が圧倒的に欠けていたことを痛感しました。

共感力が欠けていた頃の自分

コーチになる前、私はケアマネジャーとして高齢者とその家族を支援する仕事に携わっていました。ある日、長年義父を介護してきた長男の妻と最後の面談をすることになりましたが、その場で彼女が不機嫌になったことが今でも忘れられません。当時の私は彼女の感情に寄り添えず、その介護の努力を認め、ねぎらうことが足りなかったのです。その頃の私は、相手の感情に対して鈍感で、物事の成果にばかり意識が向いていたのです。

この経験を通じて、表面的な評価や結果だけではなく、「相手の気持ちにどれだけ寄り添うことができるか」という視点の大切さを身にしみて理解しました。仕事の成果に対する周囲からの評価が高くとも、共感や尊重が伴わなければ、心の深い信頼は得られないものです。

共感の力、承認力を育む「ソリューションフォーカス」との出会い

その後、「ソリューションフォーカス」に出会ったことで、私の意識は大きく変わりました。ソリューションフォーカスは、相手の良いところやできていること、上手くいっているところに目を向けるアプローチです。「人と接する時には、相手の良いところを最初に見る」という、私の中でのおまじないのような言葉が、コーチとしても、スクールソーシャルワーカーとしても、さらには人としてのあり方を一変させました。

スクールソーシャルワーカーとして保護者と面談をする際、以前は「できていないこと」に目が向きがちでしたが、今では「できていること」に意識を向けるよう心がけるようになりました。例えば、「子どもが言うことを聞かないときに、すぐに怒ってしまいます。自分に余裕があるときは、すぐに怒らずにどうしたの?って聞けるんですけどね」とお母さんが話すと、以前の私なら、「すぐに怒ってしまうんですね。なぜ怒ってしまうんですかね?」と言ってしまっていたところを、今は、「自分に余裕があるときは、怒らずにお子さんにどうしたの?って聞くことができるんですね。余裕があるときってどんなときなんですか?」とできていることにスポットライトを当てることができます。お母さんの成功体験にスポットライトを当てることで、安心して話をしてもらえるようになりました。この小さな意識の変化が、次第に信頼関係を深め、相手との距離を縮めてくれるのです。

コーチとしての苦い経験

コーチとしても、私は承認が苦手でした。あるコーチングの研修の中で、コーチ同士がセッションをして、その結果をフィードバックしてもらうというものがありました。私がコーチ役となり、クライアント役の方にセッションを行ったのですが、これはひどいものでした。いわゆる承認をすることがほとんどできず、クライアント役の人から、「話を聞いてもらっている感じがしなかった」というフィードバックをもらいました。話を聞くだけでなく、相手が話す内容や成長をどれだけしっかりと受け止められているかを示す承認の大切さを痛感した経験でした。

その後も承認することを意識してはいましたが、ソリューションフォーカスを学ぶことで、今まで以上にクライアントのできていることや成長に目を向けることができるようになり、タイミングを逃さずに承認ができるようになってきました。例えば、クライアントが「3つの約束のうち1つしか達成できなかった」と言った場合でも、「1つでもできたのであれば前進ですね。どんな工夫をされたのですか?」とクライアントに自信を持ってもらえるよう、できたことに注目して問いかけることができるようになりました。「上野さんはそうやって言うのが仕事なんですよね」とクライアントから言われることもありますが、そう言っているときのクライアントは笑顔です。

父親としての自分を変える「ソリューションフォーカス」

ソリューションフォーカスの考え方は、私を父親としても成長させてくれました。私には大学生の娘と中学生の息子がいますが、以前の私は子どものできたことや努力したプロセスを認めるよりも足りないところや改善点に目が行きがちでした。今では息子が100点満点のテストで40点を取った際も、「40点取れたなんてすごいじゃん」とまずはできたことを認め、「次のテストで10点上げるとしたら何をしたら上がると思う?」と次に繋がるような声かけをすることができるようになりました。こうした小さな関わりの積み重ねが、親子の信頼関係を深める基盤となっているのを感じます。

ちなみに妻は、90点を取った息子に「惜しい!」と言ってしまいます。妻としては「応援&激励」のつもりで言っているのを私も理解はしているので、私は妻に「惜しい!」じゃなくて「90点も取ってすごいね!じゃないの?」と漫才の突っ込みのように笑顔で伝えます。そうすると妻も「そうね♪」と笑顔で返してくれます。

ソリューションフォーカスで育む温かな関係性

共感力も承認力も乏しかった私が、ソリューションフォーカスに出会ったことで、コーチ、スクールソーシャルワーカー、そして、父親として少しずつ成長を実感できるようになりました。このブログを読んでいる方の中にも、共感力や承認力の乏しさに悩んでいる方がいるかもしれません。そんな方には、「人と接する時には、相手の良いところを最初に見る」というおまじないを試していただきたいのです。

相手の良い側面に目を向けることで、人間関係が変わるきっかけを掴むことができるかもしれません。どんな些細なことでも、まずはその人の中にある「良い部分」に気づくことで、関係性に温かさが生まれるのを実感できると思います。

ゲスト投稿記事 No.8 上野和禎さん” に対して3件のコメントがあります。

  1. おっくん より:

    上野さんへ

     初めまして、谷奥と申します。
    でも、おっくんと呼んでもらえると嬉しいです😊
     
     「文字や文章というものはそれを書いた人そのものだなあ」とお会いしたこともない上野さんを思い浮かべながら拝読させていただきました。
     では、僕の思い描く上野さんはどのような方なんでしょう。ちょっと書いてみますね。僕の感じたままなので本物の上野さんとは違うかも知れませんが、それも楽しんでもらえると嬉しいです。

    【上野さんはこんな人】

     『本当に心がきれいで何事も真っ直ぐに受け入れることのできる人。他人の喜ぶ顔を見るのが好きで、自分の弱さを知っていても粘り強く前進を続けようとする勇気を持っている人』

     飾り気のない文章を読んでいて、こちらまで心がきれいになっていくようでした。ありがとうございます。

     上野さんのおっしゃる通り、SFとの出会いが人間関係の在り方についての気づきや勇気をくれたのは私も同じでした。私の場合は妙に相性が良いので、この10数年間はまるで中毒にかかったようで、SFのONとOFFの境目がわからなくなってしまったようです。

     また、上野さんのように他人の人生に足を踏み入れるお仕事は大変だなあとつくづく感じることがあります。僕も人生の最終章に向かっています。人にプラスの未来を見せてあげられるような自分になりたいなあって思っています。上野さんに負けないように頑張りまーす!
    おっくん

    1. 上野 和禎 より:

       はじめまして!谷奥さん。ここからは”おっくん”と呼ばせていただきます。
      『本当に心がきれいで何事も真っ直ぐに受け入れることのできる人。他人の喜ぶ顔を見るのが好きで、自分の弱さを知っていても粘り強く前進を続けようとする勇気を持っている人』
      会っていない私をこんな風に描いてくださるおっくんの心がきれい過ぎるのだと思います。
      「そんな人間ではありません」と否定したいところですが、ここは素直に「ありがとうございます」とお返事しておきます。今晩、妻に自慢します(^▽^)/
       コーチになり、スクールソーシャルワーカーになり、私の今のコーチに出会い、SF(青木さん)に出会い、少しずつ私自身が変化していることを感じています。
       私はもともと「人の本質は変わらない」と思っていましたが、「そんなことはないかも」と思うようになりました。SFを学んで人との関り方を変えていくことで、相手がより良い方向へ変化する手助けができるということを少しずつ感じることができ、その体験を重ねていくにつれ、自分自身もより良い方向へ変化しているのではないかと感じています。
       いつかおっくんにお会いしたときに、「私の描いた通りの人でした」と言っていただけるように、これからも自分も相手もプラスの眼鏡で見て、関わる人たちを笑顔にしていきたいと思っています。
       素敵な感想をありがとうございました。

      1. おっくん より:

         早速の返信、ありがとうございます。どんどん自慢してください!そしておっくんて呼んでいただいてありがとうございます😭

         ほらほら、これを読んでいただいている皆さん、やっぱり上野さんは素直な人でしょ! 嬉しいなあ。

         「人の本質は変わらない」・・・確かにたしかに。ここは僕も譲れない部分で、SFの考え方が人の本質に作用しているのであれば「ありのままの本来の姿を取り戻す」と僕は解釈しています。また語り合いましょう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA