「明日からやってみようかな♪」と思えるSF流シンプル面談 No.8 諏訪太郎

望んでいない辞令から救ってくれた上司の一言

先日、家族で博物館に行きました。
その中で、特に私の目を引いたのが植物の標本展示です。
アクリル標本となったシダ植物が綺麗に並んでいます。

シダ植物のアクリル標本は、すでに標本の領域を超え、まるで芸術作品のようでした。
私は、しばらくの間、これらのアクリル標本の世界に魅せられていました。
そして、シダ植物のアクリル標本を見て、マネジメントも同じだなと思いました。

人生を変えた異動の辞令

私がまだ20代後半の時の話です。

私と斎藤さん(仮名)は、同じ時期に紳士服からカルチャースクールへの辞令をもらい、それぞれのお店に異動となりました。当時勤めていた会社は、部門間の異動がほとんどない会社でした。部門が変わる異動が出ただけでもショックなのに、カルチャースクール部門という当時社内でもマイナーな部門への異動ということで、私たちはダブルでショックを受けました。

今では「コト消費(カルチャースクールなど)」という言葉が一般的になりましたが、当時は「モノ消費(紳士服など)」が主流で「コト消費」という言葉が出てきたばかりでした。

私もカルチャースクールに異動になるまで「コト消費」という言葉も知らなかったですし、会社がこれから「コト消費」に力を入れていくことも知りませんでした。また、異動してわかったのですが、「コト事業」と「モノ事業」では、仕事の仕方からシステムまで何もかもが違っていました。それこそ、部門が変わるというよりは、転職をしたような気持となりました。

当時の私は20代後半の若者です。

入社以来配属された紳士服の仕事に、夢や希望をもって一生懸命に取り組んでいました。一生懸命取り組んでいたからこそ、今回の部門が変わる異動に関して感じることがありました。

「なんで俺が・・・」
「紳士に帰りたい・・・」
「会社から必要とされてないのかも・・・」

今まで頑張ってきたことが会社から否定された気持ちになり、仕事へのモチベーションが下がっていったのです。

人生を変えた上司の一言

一緒に異動してきた斎藤さんは、その後もモチベーションが下がり続けていきました。そんな斎藤さんの仕事の仕方を見ていた当時の斎藤さんの上司は、斎藤さんに対して良い印象を持つわけがありません。上司との関係も悪くなり、斎藤さんの仕事へのモチベーションは、どんどん下がっていきます。

結局、斎藤さんは新しい上司が来るまで、仕事に対するモチベーションは上がりませんでした。そのため、マネージャーに昇進するまで部門を異動してから6年かかりました。

それに対して、私は部門異動後1年半でマネージャーに昇進しました。私も斎藤さんも能力に大きな差はありませんでしたし、新しい部門の仕事を始めたタイミングも同じです。それなのに、昇進に関してこれだけの差が出た要因は何だったのでしょうか。

実は、私と斎藤さんの運命を分けたのは、どのタイミングで「良い上司」と巡り合えたかということでした。

私は辞令をもらうときに、上司からこのような話を聞かされていました。

「諏訪さん、これから時代は『コト消費』が注目される時代になる。会社としても『コト消費』の事業を拡大するために、若くてやる気のある人材を募集しているみたいなんだ。カルチャースクールについても、会社は今後の成長に期待していて、急ピッチで店舗を拡大していくためマネージャー候補を募集しているんだ。

諏訪さんは、若いし、やる気もあるから、これから成長していく部門に行き、新しいことにチャレンジをして、会社の新しい収益の柱を作って欲しいと思っている。

部門が変わることに対して、思うこともあると思う。でも、それだけ会社から期待されていることを知ってもらいたい。今まで通り頑張ってもらえれば、すぐに昇進もできるだろうし、ぜひ、新天地で頑張ってほしい。」

15年ぐらい前の話ですが、今でもこの時の上司の言葉は鮮明に覚えています。
それだけ私にとって、この上司の言葉は感慨深いものでした。

植物もマネジメントも愛情が大切

冒頭でシダ植物のアクリル標本についてお話をしました。展示されているシダ植物は、特別なシダ植物ではなく、普通のシダ植物です。みなさんのお家の軒先などに生えているものと同じものです。

でも、博物館のシダ植物と、軒下に生えているシダ植物では、価値が全く違いますよね。
同じものなのに、何がこの2つの違いに影響を与えているのか。
それは、関わる人がどれだけ愛情を注いだかの違いではないでしょうか。

愛情をもって関われば、関わるほど、磨かれていく。
そして、マネジメントも同じだなと思うんです。

上司がどれだけ、愛情をもって部下と接するかによって、部下の成長が変わっていきます。
今回の私と斎藤さんのように。

私は、部下が働いてくれている時間については、「楽しく」・「自分で考え」仕事をしてもらいたいと常々考えています。そして、それを実現するために、交換日記日報やシンプル面談を通じて、部下の不安や悩みを解消して、部下が建設的な未来に向かっていけるようにサポートをしています。

もしかしたら、私の上司としての在り方は、今回登場した上司がお手本になっているのかなと書いていて感じました。

いつでも部下の気持ちに寄り添い、成長をサポートしていく。
部下からそんな上司として頼りにされる存在になれるよう、これからも1人1人としっかりと向き合っていきたいと思います。

「明日からやってみようかな♪」と思えるSF流シンプル面談 No.8 諏訪太郎” に対して9件のコメントがあります。

  1. 深山敏郎 より:

    いいお話ですね。個人のご体験と植物を、愛情の注ぎ方でまとめてあり、共感を覚えました。これからも拝読することを楽しみにしております。

  2. 諏訪太郎 より:

    深山さん、OKメッセージを、ありがとうございます!
    娘と博物館に行き、植物の標本をみていたら、昔のことが、思い出されました。
    今後とも、よろしくお願いいたします!

  3. おっくん より:

    諏訪さんへ

     とても興味深く読ませていただきました。私も偶然の出会いを大切にしたい方なので、諏訪さんや小林さんのような上司と巡り合っていたら・・・と思うこともあります。でも現実の上司は残念ながらお二人ではありませんでしたね。でも私は不幸とは思ってないのです。

     そこで、ちょっと反論😊

     読んでいて思ったのは、もしかしたら斉藤さんは「シダ植物」ではなかったんじゃないだろうかということでした。

     例えば同じ農家さんに育てられても「桃栗三年、柿八年」のように元々備わっているDNAが異なれば、その成長が違ってくるのも当然ではなかろうかと。
    そして柿は八年かかってやっと実をつけることになるのですが、時間がかかったことは決して不幸とは思っていないはずとも。
     僕も斉藤さんに近い?タイプなので、斉藤さんご自身の中にも何かの実りはあったはずかなあと感じています。

     諏訪さんが、いち早く新しい天地に目覚めることができたのは、諏訪さんご自身のDNAのなせる技よような気がします。不安だから上司の言葉から養分を吸い取り、栄養に変えていく。諏訪さんにはそんな力がおありなんだろうと。
     それはご両親の影響か、育ってきた環境かわかりませんけどね。

     SF的な関わりはやはり「愛情」という言葉に集約されていくように思われますが、発信するのも受け取るのも難しいことですね。

     諏訪さん、新しい気づきをありがとうございました。

    1. 諏訪太郎 より:

      おっくんさん、コメントありがとうございます!
      コメントを読ましていただき、「なるほど!」と、感じました。
      「おこったことはすべて最高」ですから、今回の出来事は斉藤さんにとっては最高の出来事で、結果にフォーカスするのではなく、課程にフォーカスすることも大切ですよね!
      おっくんさんが言われるように、この出来事は、斉藤さんとっては色々な気づきがある出来事だったのだと思います。
      別の視点でコメントいただきまして、ありがとうございます!

  4. 青木安輝 より:

    おっくん、コメントありがとうございます。
    確かに、物理現象ではなく、人間がXXに関して何年かかったかを他人と比較して、その要因を特定のこと(今回の場合は上司の対応)だけに求めるというのは、実際には事実というよりは、一つの解釈ですよね。同じ言葉をかけられても、それを諏訪さんのように受け取るかどうかはその人次第ですもんね。
    そして、おっしゃる通り、「愛情」というのは、誰もが言葉として知っているし、求めてもいるし、体験(その存在とその不在)もしているはずなのに、発する側と受け取る側が一致するかどうかが難しくなってしまいますよね。
    それと、標本のシダは確かに美しいけど、地面に根を生やして生きているものの方が美しいと感じる人もいるかもしれないから、そもそもそこも異論があり得るところですね。

    ただ、僕にとっておっくんの書いてくれたことの中で一番響いたのは、「諏訪さんに上司の言葉から養分を吸い取る力があった」というところでした。

    愛情を与えられる力というのは、そういう養分吸い込み口が広い人がより沢山もてるのかなあと思いました。

    1. 諏訪太郎 より:

      青木先生、コメントありがとうございます!

      >愛情を与えられる力というのは、そういう養分吸い込み口が広い人がより沢山もてるのかなあと思いました。

      上司として部下にいっぱい愛情を注ぎ、部下の養分の吸込口を広げてあげたいなと感じました。
      そうすることで私の部下が上司になったときに、その部下たちによる多くの愛情を注ぐことができるようになる。
      そんな良いサイクルを作っていきたいです!

      1. おっくん より:

         素敵なコメントですね。

         僕もホテルの送迎ドライバーとしておもてなしを自分なりに考えたりしますが、素敵なおもてなしを受けた経験があればある人ほど、お客様に対しても細やかな気配りができるのだと自負しております。
         お互いに精進は続きますね。楽しくガンバ、ガンバ!

  5. 本間俊介 より:

    自分がこだわっていることは本当は何かを考えさせられました。
    大量生産で同じものを作る時代から、品ぞろえして市場を広げまたそれに対応した仕組みの構築の時代、更に「ことづくり」により事業領域を広げオンリーワンを目指す時代に移り、それに伴って、マネジメントも大きく変化してきました。
     異動を通して新しい世界を知り、対応できた諏訪さんは、上司の一言から考えを少し見直し、たぶんその他の事でも、柔軟な対応力をもともともっていたと思われます。
    斉藤さんについてはこれだけの情報ではわかりませんが、「ものづくり」のこだわりがあったのかもしれません。ことづくりの知識情報をいれたものづくりを期待されていたともおもわれます。
    異動や昇格について、たまたまそのポストに穴があいたり、新しい事業のタイミングでそこに居合わせたり、きっかけはたまたまの場合がほとんどで、平等なチャンスは与えられていません。しかしそれが何度も続くことはなく、以外な自分を発見し、その結果ではと思います。以外な自分を発見させてくれる、会社の風土は素晴らしいと思いました。
    当時の時点のコメントとして「斉藤さんのこれからもまた多いに楽しみです。」

    1. 諏訪太郎 より:

      本間さん、ありがとうございます!

      >自分がこだわっていることは本当は何かを考えさせられました。

      素敵な視点をありがとうございます!
      私は、紳士服よりも数字に興味がありました。
      どうやったら数字があがるのか?
      そのPDCAを回すことを楽しんでいました。
      だから、紳士服からカルチャーにいっても、対象が変わるだけで「数字をあげる」楽しさはかわらないので、斎藤さんよりこだわりは少なかったのかもしれません。
      それに対して、斉藤さんは紳士服にこだわりがあったような気がします。
      そんなところも、大きな違いになって現れたんだなと気が付きました。
      ありがとうございます!

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