「あるもの」をつなぐ No.2 小林シンイチロウ

「うまくやれてる」を引き出す部下育成

ぼくらのグループには全社イベントを企画・運営する業務があります。今期はぼくがやってきた予算計画の仕事をAさんに経験してもらい、引き継いでいこうと思っていました。そしてAさんは見事にやりとげました。今は心からほっとしています。

実は前回からAさんに予算計画を引き継ごうとしたのですが失敗してしまったのです。働き方がリモート中心に変わった時期で大変ではあったものの、今思えばぼくの進め方がAさんに合ってなかったのだと思います。

ちょっとAさんの話をしますと、Aさんは幅広く業務を見渡せるし、理解力が高いし作業も早い方です。しかし急な遅刻や欠勤が多いことで納期が守れないという問題がありました。

ぼくの上司(部長)から

「Aさんは社会人としてどうなんだ?しっかり指導しなきゃダメじゃないか」

と言われ続けていました。ぼくからAさんに

「急な遅刻や欠勤をしたり納期遅れになると、後が大変になるから無くす努力をしてほしい」

と伝えていました。するとAさんからは

「急に体調悪くなっているのにそんなこと言われても困ります!」

「出社の途中で仕事の電話が入ってしまったので遅刻しました」

「他の案件が忙しいのでこの案件は間に合いませんでした」

という返事。Aさんにしてみれば正当な理由だと思います。しかし、ぼくからみたら言い訳にしか聞こえないこともしばしばです。どちらが正しいのかはわかりません。

結局、ぼくはAさんの遅刻や欠勤にとらわれてしまい、前回の予算計画の仕事はぼくが全てやってしまうことになったのです。これではいつまでたってもAさんに引き継ぐことができません。

ここから今回の話です。前回と同様におねがいしていた業務は進んでいませんでした。肝心なときに休んでしまう。このままでは、前回の繰り返しなってしまいます。

初めの一歩を踏み出してもらうために予算計画のつくり方を必用な素材をそろえて丁寧に説明すると、

「なるほど、よくわかりました!これならできそうです」

と良い返事が返ってくるのですが、結局おねがいした納期が守れません。

「緊急案件の対応でそれどころじゃないです」

と返ってきます。確かにそうなんです。Aさんの担当は緊急案件が多いことは僕も知っています。にもかかわらず自身の工夫でなんとかしろとぼくはAさんに伝えていたのです。

「今のAさんには難しいことを要求しているんだな・・困ったなあ。何か他のやり方を考えなきゃなあ」

ここから解決志向のスイッチが入ったような気がします。そして、そんな中でうまくやれていることに気づくことができたのです。

再び、リモートで予算計画づくりの説明をしているときのことです。説明中にAさんはブツクサと独り言を言いながら予算計画の作業を進めていました。

「ん?・・ちゃんと自分で考えながら作業してるならこの状態もありだよなあ・・」

と気づき、ひと段落するまで作業を続けてもらいました。これはいける!と思い次回もこのスタイルで進めるのはどう?と聞いたら

「しっかり時間確保して落ち着いて取組めるので良いです。わからないところもすぐに質問できます」

というので、その後はリモート同席スタイルで進めることにしました。電話を無視できる口実にもなりますし、他業務に流されることなく予算計画の作業に集中できるのだと思います。ぼくも同席しているだけですし、自分の仕事を進めることができます。

数回リモート同席で作業を進めましたが、その後

「別件が落ち着いてきたので、ココまでは一人でやっておきます。メールしますので小林さんが良い時にチェックしてください」

と対応が変わってきた。だんだん頼もしく見えてきました。

もし、あのリモートの打ち合わせのとき、解決志向のスイッチが入っていなかったらどうだっただろう?たぶん作業している様子に気づいても、自分一人でできそうだなと思って

「じゃあ2日後にできたものを共有して確認していきましょう」

となってまた納期遅れになっていたと思います。

さて、リモート同席スタイルによって予算計画の策定はグングン進み、少し予定より遅れたものの、先日社長決裁まで通すことができました。予想以上の出来です。Aさんが一段成長できたようで本当に嬉しい出来事でした。

振り返ってみると、ぼくは2つのことに縛られていました。1つ目は教えて、一人でやらせて、報告させて、フィードバックするという一般的なOJTのやり方への固執。2つ目はAさんに「言い訳を言う人」というレッテルを貼ってしまったこと。

これらによって、Aさんの個性や都合を置き去りにして仕事を進めようとしていました。

ぼくは窮地に立たされてようやく、Aさんが言っていることにちゃんと耳を傾けたのです。そして2つの縛りが緩められ、「あるもの探し」が始まり、解決への道筋につながっていったと思います。

結局、Aさんの遅刻や欠勤の問題はあいかわらずです。しかしこのグッドニュースは部長に対してAさんの印象を変化させるのに役立つと思います。今後は部内の成果報告会でもAさんから成果発信してもらい、周囲の見方が変わることも期待しています。勤怠も変化するといいけどそれは欲張りかな 笑

出来ているところを見つけて、成長の力に!

「あるもの」をつなぐ No.2 小林シンイチロウ” に対して10件のコメントがあります。

  1. 谷奥勝美 より:

    小林さんへ

    「なるほど!」と気づかせていただきました。

     私は今年定年を迎え、先日新しい就職先にお世話になりました。
    出会う人は初めての方ばかりです。
    緊張も挟みながら「この人はどんな人なんだろう」と様子を見ながら接していくことになるのですが、それも最初の一週間で捨てました。
    つまらない先入観や印象を捨ててしまえるのがSFのいいところですよね。

     私は少なからず自分なりにですがこの職場での使命を感じています。それを実現するための第一歩として「その人のいいところ」を直接、間接的に伝えようと考えています。時間がかかるようで一番確かな道かと。
    小林さんの仰りたいこととずれているかもしれませんが、私の考えが間違っていないように思われました。
    ありがとうございます😊

    1. 小林シンイチロウ より:

      谷奥さん、コメントありがとうございます♪とても嬉しいです。

      ご定年されての再就職、おめでとうございます!

      ぼくもあと10年(早!)ほどで訪れます。人生の先輩として谷奥さんのご経験は興味深々です。しかも使命を感じられてお仕事できるなんて素敵です。よろしければ使命と感じられていることをお聞きしてみたいです。

      たしかに新しい人に出会うと最初に「この人はどんな人なんだろう」と見てしまいます。なんででしょうかね。昨日もありましたよ。最初「優しい人」と思っていた人が会議中にぼくに対して強い怒り口調にあったので「あれ?優しい人のはずなんだけどなあ」と戸惑ってしまいました。そのあとちょっとギクシャクしたりして。まあ優しい人だって怒るときは怒りますけど 笑

      思い返してみると、最初の印象をもとに次に接したら「あれ?違うぞ」となったり、考えすぎちゃってドツボにはまったり。よくある気がします。

      先入観や印象をもつ代わりに「その人のいいところ」を見つけて直接、間接的に伝えていくほうが、おっしゃるように確実に良い関係が築けると思いました。ぼくもやってみます♪

      >つまらない先入観や印象を捨ててしまえるのがSFのいいところですよね。

      はい、そう思います!ありがとうございます😀

      1. 谷奥勝美 より:

        小林さんへ

        「おめでとう」と言っていただいて
        なんだか照れくさいですね。
        しかも小林さんだから嬉しいですね😂

         再就職してみて思いました。
        人間関係を作り上げるのって結構面倒くさい
        ことなんだなあって。
        だってゼロからのスタートなんですものね。
        でもゼロということは、プラスにいくらでも
        伸び代があるということなのかも!
        もちろんマイナスにも。

         そのために今、一生懸命なのは「名前」を
        覚えること。(マスク越しは大変ですが)

         僕の経験によると初対面や不慣れな人に
        いきなり「名前」で声をかけると高い確率で
        笑顔になってくれます。
        例えばスーパーのレジの人は名札をつけています。
        「○○さん、レジのスピード早いですね。
        全国大会があったら優勝だね」だとか
        「○○さん、丁寧にカゴに詰めてくれましたね。
        しかも重さのバランスも素晴らしい!」と
        いうふうにです。
         嘘ではなく、心に感じたことをストレートに
        名前を添えて相手に伝えます。
         そうすると初対面でも割とフレンドリーな
        雰囲気を作れることが多く、次に会う時には
        もう知り合いになっているわけです。

         いきなり「名前」で声かけをすることは
        少し勇気も必要ですが、相手の人に
        「私はあなたの味方ですよ」と言っているような
        もので、安心感を抱かせるのかも知れません。
         結構、プラスの眼鏡の鍛錬にもなりますよ。

         最後に使命のことですが、一言で言うと
        「ソリューショニストとしての誇り」でしょうか。
        カッコつけすぎですね。
        要するに小林さんや皆さんと同じだと思います。
        周りの人の笑顔が見たいだけですから。

  2. 小林シンイチロウ より:

    谷奥さん、お返事ありがとうございます。月曜日は終日会議でヘロヘロ・・ですが、お返事読んで元気になりました。

    最初は人間関係ゼロだから伸びしろあるって新鮮です!いろんなことにあてはまりますよ。初めての仕事は伸びしろいっぱいあるとか。あるべき姿と現状とのギャップは問題じゃなくて伸びしろだ!

    使命・・ソリューショニスとしての誇り・・教えてくださってありがとうございます。使命を感じて生きられるなんて素敵です。

    谷奥さんの文面を読んでいると、とてもやさしい気持ちになるのはなんででしょうかね。

    1. 谷奥勝美 より:

      シンイチロウさんが優しいからですよ!

      1. 小林進一郎 より:

        谷奥さん

        返事しにくいじゃないですかあ 笑
        やっぱり相手に向ける優しい気持ちが相手の優しさを引き出すんでしょうか。
        私も引き出されてとても穏やかな気分です。

        1. 谷奥勝美 より:

          シンイチロウさん

          どんどん引き出しましょう。
          それが誰かの一歩前進になって
          FPに近づいて行けるのなら
          そんな素敵なことはないですよね。
          力抜いて頑張りま〜す(^^)

          1. 小林進一郎 より:

            谷奥さん

            そうですね。だれかの一歩前進をそっと後押しできたらとっても素敵です✨

            なんなラリーが続いてしまい恐縮です。

            ぼくは日々の大変さやつらさを乗り越えるのに苦戦している人でして。

            行き詰まることばかりで、どうにかちょっとでも前進することで次につなげている感じです。

            必要にせまられてSFをつかっています。解決志向だと後味よく乗り越えていけるのが心地いいんです。

            他の方も、自分なりに取り入れているんでしょうね。興味あるなあ。

  3. 谷奥勝美 より:

    シンイチロウさんへ

    ラリー、いいてすね❗

     以前、J-Solのテーマに「一人1SF」というのがありました。100人いれば100SFとなるのでしょうか。
     青木さんがこのコラムを始める理由を語られた冒頭に
    このようにおっしゃっておられます。

    【それは一言で言えば、SF実践者にとっていつでもアクセスできる
    「認め合い、学び合い、応援し合う」場をつくるためです。】

     だから、シンイチロウさんの知りたいこともきっと
    このブログのラリーを通じて発見できるのだと思っています。
    僕もこのブログでJ-solで聞けなかった実践者の確信に
    触れたり、その意味を深掘りできるところがとても
    嬉しいです。
     何が起こるかわかりませんが、シンイチロウさん含め
    皆さんのコラムを楽しみにしています。よろしく😉👍🎶

  4. 小林進一郎 より:

    谷奥さん

    こんばんは。
    ワクチンを打ったので調子に乗って一杯だけやってきました。もっと気軽に飲める日々がきて欲しいです。

    コメントでコミュニケーション、よいですね。何が起こるかわかりませんが、居心地よく温かい場になればいいなあと思います。

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