SF伝道者の四方山話 No.25 青木安輝

アプリシエートの後で

前回に続き、「アプリシエート」の後日談です。なんだかワークショップの宣伝をしているようだったり、単に自慢話にも聴こえる内容かもしれませんが、本当のことだし、自分としては嬉しいことなので、そのまま書かせてもらいますね。

良かったことは今の段階で確実に以下の3つがあります。

1.「できることを丁寧にやる」という言葉がとてもしっくりきていて、日常の様々なことをこなしていく上で、低ストレス、効率向上に役立っていること。

2. ゴルフの調子が良い!

3. アプリシエート終了後に机の上をきれいに整理したら50日たってもきれいなまま!

正直言って、これらのことと「アプリシエート」のプログラム内容がどうつながっているかは、現段階では論理的には説明ができません。また、自分が参加者である面と主催者である面と両方の側面があったので、どちらの影響がより強かったのかは判然としません。ただ、主催者として事前に感じてきた初開催に向けての不安等が大きかった分、実際に皆さんに喜んでもらえた様子を拝見したことで、単に参加者であったよりも大きな安堵感やこのプログラムの良さへの確信を感じることができた可能性はあります。逆に、純粋な参加者でなく、ずっと進行に気を遣った分だけ、このプログラムの良さを純粋に100%享受したのかどうかはわかりません。でも、どのように参加したとしても一期一会(個別に固有でその時の)の体験をしたのだろうと思います。

そういう前提の上で、上記の3つの「良かったこと」にコメントしたいと思います。

★「できることを丁寧にやる」:

アプリシエート直後には、「等身大でマイペースに生きる」という言葉がしっくりきていました。これは多分「自分語りを聴き合う」ことを通して、本当に人生色々だなぁ、人と比較しても意味ないなぁという心持ちに今まで以上に落ち着きの良さを感じたからでしょう。

今まででもある種の体験後にそんな心持ちが増幅されることはありましたが、だんだん薄れていきました。今回は、「アプリシエート」がきっかけだったことによって、あの体験はどういう意味があったのかと自分に説明したくて、自問することを繰り返したので、その度に「等身大でマイペース」という感覚が呼び戻されて日常のものとして定着していったようです。

すると、以前に比べてある種の「焦り」が少なくなっていることに気づきました。「こんなことをしているのは時間の無駄だ」とか、「本当はもっと有用なことをしていなければならないのに・・・」という内なる声、「今この瞬間の大切さ」を割り引いてしまう根拠のない自己叱咤が内側から湧いてこない、あるいは湧いてきてもすっと消えていく感じなのです。

その「焦り」があると、こんな(価値の低い)ことは適当にやっておいてもっと価値のあることにしっかり時間を使おうという気持ちになるので、目の前のことは面倒くさいことと感じてしまい、必要最低限トラブルにならない程度にやっておくということになりがちです。

ところがその「焦り」がないと、字はちゃんときれいに書いておこう、ものは元あったところに戻そう、ものを置くときは次にそこに来たときも気持ちいいようにきれいに並べておこうという余裕ができます。それって余計に時間がかかること・・・と以前は思っていたのですが、実はどうもそうではないようです。いいかげん(テキトー)にやっていると、本当はこれじゃいけないなという微妙な罪悪感がつきまとったり、あとで捕捉が必要になって余計な手間が増えたり、その時は短い時間で済ませたと思っても、案外余計な負担がついてきてしまいます。それが「丁寧にやる」と意識してその通りにすると、清々しいし、心残りがない分だけ精神的余裕も感じます。なんだか道徳の時間みたいですか(笑)。でもね、ホントそんな感じなんですよ。

ただ、「よし、すべてを丁寧にやろう!」と飛躍してしまうと、また息が浅くなる感触(無理してる)があるので、「できることを」を主語にすると、「スモールステップ」の感覚で、それならできそうと思えます。そうやって、上手に自分を楽にさせて、余裕を増やすことが前よりうまくなったぞと感じています。

★ゴルフの調子が良い!:

これは1年くらいたったところで平均スコアを取ってみないと「たまたま」なのか、実際に「上達した」のかはわかりません。ただ、上記の「できることを丁寧にやる」を実行すると結果が良くなる確率は確実に高まっていると思います。

振り返ってみると、以前は身の程以上に「結果を求める」気持ちが先行するので、やはり「焦り」が生じて、「ここでどうしてもこのパットを入れたい」とか「ここは絶対あそこにボールを打たないといけない」という縛りの感覚で自分を動かそうとしていました。「こんな簡単なホールでダブルボギー(パーという基準打数より2つ多い数)なんか打ったら、『それでも本当にシングルなんですか?』と皆に笑われるぞ」という人目を気にする性分がその焦りに油を注ぐので、それを打ち消すために急いで(良い)結果を出したくなります。しかし、そんなメンタルでスイングすれば、実行面で必要なところに向けられるエネルギーが少なくなってしまうんですよね。例えば、パットをするときにライン(ボールが転がっていくであろう線)を確信できるまで傾斜をよく観察するとか、パターの重心や身体各部の力の入り具合を感じたり、フェースの向きを確認したりという現実的に重要なことが疎かなままなのに、早く良い結果をつくりたいがために急いで打ってしまうのです。良い結果を出すために「必要なこと」を疎かにしたまま急いでいるだけなので、当然結果は悪い方に出ます。

それって、以前から“わかってはいた”ことなのですが、本番になると結局「焦り」の気持ちが勝ってしまうのでした。特に大事な試合の時ほどそうなるのです。友人にそう言うと、「あれっ、青木さんてメンタルを強くするような仕事してなかったっけ?」と言われてしまうので、気持ちよくグチることもできず、「あ~あ、俺って・・・」とうなだれるのでした。

ところが、ところが、ところが、「アプリシエート」の後では、「できることを丁寧にやる」というのを大事なときに思い出せることが圧倒的に増えました。そうすると、「焦り」の気持ちが生まれても、一つ深く息をして今ここの自分の世界に心地よく”戻る”ことができるんですよね。だから、自分の身体の状態や周囲のことを冷静に観察することができる。結果として身体を思った通りに動かせる度合いが高まる。所属ゴルフ場の研修会で過去最高の「69」というスコアを出すことができたり、昔だったら90近くの酷いスコアになってしまいそうな調子悪い時でも、80くらいでとどめられるようになったのは、そのおかげです。すごい筋トレやスイング改造はしていないけど、潜在能力が発揮されている度合いが高まったと思えます。

★机の上がずっときれいなまま!:

アプリシエートの後に、机の上や本棚にあった本のほとんどを目の前からどかして整理してしまいました。なぜなら、ほとんどは具体的な目標と関係なく「もっと知識を増やさなければならない」という妙な渇望感から買ってしまったもので、実際には読むことがないであろう本が多かったからです。それらを目にすることで、「お金出して買ったんだからちゃんと読めよ」と自分にプレッシャーをかければ、いつかは読むと思っていたんですよね。

でも自分のSFセミナーの中で、「プレッシャーをかけて何かをやらせようとしても自発的で有効な行動は起こらない」とレクチャーしてるんですよ(笑)。読むわけないじゃん!

アプリシエート後に「等身大で」と思った中には、自分に無理やり何かをさせようとしない、やりたくてできることを大事にするという意味がありました。そういう目で自分の部屋の中にあるものを眺めてみると、結局「気が向かなかったけどいつかは活用しなければならない」と思い込んでいるものが大半でした。で、それらを断捨離しました。そして、空いたスペースに今切実に必要だと思っている身体のコンディショニングのための腹筋台(9,800円)を設置しました。で、それを使い始めてみると、気持ちいいんですよね。読まない本が重なっているのを見て「・・・」とジクジクしていた心が、筋肉を気持ちよく使うことで「⤴⤴⤴」という感覚になったのです。

で、その清々しい「気持ちよさ」と机の上に余計なものがないという「ビジュアル」がアンカリング(心の中でつながった一体のものとして感じる)されているので、それら両方を大切に継続したいと無理なく自然に思えて、“ついつい”机の上は片づけてしまうのです。ちなみに、以前だと大掃除で机の上やまわりをきれいにしても大体1週間たてば元に戻ることが多かったです。

以上、「アプリシエートの後」の良かったことについて書いてきましたが、四六時中ずっとこの感覚の中にいるわけではありません。そこからはずれてしまうことはしょっちゅうです。すぐに「もっと~しなくちゃ」とか、自分のやっていることにケチをつける気持ちも湧いてきます。しかし、それと一体化している時間がすごく短くなりました。そして「できることを丁寧にやる」を思い出して、気持ちの良いマイペース感をとり戻すことができます。

今年は「ソリューションフォーカス」のオンラインコースを復活させる予定ですが、以前よりも、セルフコントロール(セルフケア、ライフケア)に活用できるという側面を強調できるかなぁと思っています。それは自分自身をある種の教条に無理やり従わせたり、エサを見せて一時的に釣るのでもなく、SF的な自問自答が有効になされることで、自発的に湧いてくるものを大切にできるということかと思います。結局自分とのコミュニケーションを解決志向にすることはとても重要とあらためて気づかされたのだなと思います。

<蛇足>ここに書かれたことは「アプリシエート」プログラムが目指していることそのものではなく、あくまでも青木安輝の個人的体験です。

■「アプリシエート」のご案内ページ

SF伝道者の四方山話 No.25 青木安輝” に対して6件のコメントがあります。

  1. おっくん より:

    青木先生へ

     おはようございます。今朝、薄明かりの中で浮かんできた言葉が「断捨離」。
    コラムから色んな思いが浮かんできたけれど一番しっくりきたのがこれ。

     例えば、セロリは瑞々しさが一番だし、子供の頃真夏の畑で食べたきゅうりの味も忘れられない。ともかくそのままの生が一番美味いらしい😋

     僕も振り返ると人の前に出るときには”カッコつけたい”とか”目立ちたい”という欲望がどこかにあって、知ったかぶりして等身大以上に大きく見せようとしていたことがあったのも事実。「目の前の人のために」の思いだけでない自分が同居していたんですね。
     でも定年を迎え、やりたいことが選択できる環境に身を置くことで「今の自分に何ができるのだろう」という可能性を楽しめるようになってきたと思っています。力を発揮する場がどんな場面でも、どんな時であっても自分の中の等身大の割合が増しているように感じるのです。
    結局、胡瓜はどこをかじっても胡瓜でしかないように、自分から放出できるエネルギー量に気がつきはじめたのかもしれません。しかもそれが1番身体に優しいんですよね。
     
     僕の自分語りはコメントに出さずに自分の中だけに収めていますが、青木さんのブログを通じてアプリシエートしていただいているような気分ですね。読者の中にはそういう方もおられるのではないでしょうか。ありがたや、ありがたや。合掌😊

    1. 青木安輝 より:

      おっくん、コメント嬉しいです。

      「断捨離」は最近通底音のようにいつも意識してますねえ。実行はそれほどできてはいないけど、それでも「ええい!」と思いきれるときは増えました。

      今回書いたことはモノの断捨離以上に心の中の断捨離なのかと思います。「アプリシエート」で何の価値をアプリシエートするのかって考えると、外から絶え間なく入ってくるの情報や、心のどこかで絶え間なく湧いてくる自分への否定的評価や無理な指令を断捨離できたあとの清々しい「自分」感覚なのだと思います。その感覚を得るための色々な方法があると思うけど、「アプリシエート」が合う人にはとても良い方法だと思います。

      こういうやりとりを読んでくれる人が、一緒にそんなインナーワールド体験をしていると思うと楽しいね♪今回も素敵なコメントありがとうございました。

      1. おっくん より:

         こんなふうに悩んでおられるからSFを広めたいって伝道魂が揺さぶられるんですね。
         ならば、余り断捨離しすぎないでくださいね!仙人になっちゃうとダメですよ😁

        1. 青木安輝 より:

          仙境はあこがれの地です(笑)

  2. 豊村博明 より:

    青木先生
    「できることを丁寧にやる。」この「丁寧にやる。」に気持ちが揺さぶられました。
    先日私と一緒に暮らしている93歳の義母が夜中に転倒して救急搬送され、これから施設に入れた方が良いか、でも出来るだけ母の気持ちも尊重して自宅でケアーしてあげたいけど・・・みたいな事で奔走された1か月でした。でも最近では、「環境の変化に無理に逆らっていくよりも、それが自分の力ではどうしようも無いことなんであれば、むしろその与えられた環境の中で今自分は何が出来るかを考えてみよう。」と思い始めています。「起こったことは最高さ!」でもその起こった出来事が自分にとって強烈な負のインパクトであれば、なかなか最高という境地にはなれないけれど、今足元で自分が出来ることから始めてみようといういう気持ちにさせてくれたのもSFのお陰だと思っています。そんな悶々とした日々が続いた今日この頃でしたが、そこに「丁寧にやる。」と言う言葉が加わった時、「できることをやる。」よりも一段と上質の何かが得られそうな気がしています。起こってしまった事実は自分の力ではどうにも変えることができないけれど、「丁寧にやることは自分の努力でできる。」ということを青木先生のブログから教わりました。「あなたの事をもっと理解したくて丁寧に話を聴く。」「字は下手であっても気持ちを込めて丁寧に書く。」「レストランのような凝った料理は作れないけれど、美味しいねと喜んでもらいたくて丁寧に作る。」丁寧にと言う3文字を自分の行動の頭に付けていくことで、今までとは見違えるような何かが変わって行くのだなあと青木先生のブログを拝読して想いを強くしました。私もレッスンプロに教えてもらった面白いことも何ともない単純なスイングの反復練習をもっと丁寧にやれば、ひょっとしたら今年中に100切りが出来るかも知れないと希望が湧いてきました。〈笑)ありがとうございます!

    1. 青木安輝 より:

      豊村さん、コメントありがとうございます!

      「丁寧にやる」ということの意味あいをとてもうまく表現してくださったなあと深く感心しております。そして「丁寧にという3文字」の力を実感してくださっている様子から僕も力をいただきました。

      お母さまもそんな豊村さんの丁寧な言動からきっと息子の愛を感じてくださっていることと思います。どうぞお大事になさってください。

      ゴルフの100切りですが、「まあまあの結果が出るやり方は直そうとしない」「うまくいったことはもっとやる」「うまくいかないことはやめる」の3つを念頭において”丁寧に”練習することで絶対達成できます!断言できます!どうぞご丁寧に♪

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