SF伝道者の四方山話 No.22 青木安輝

自分の人生を「アプリシエート」したい!

*「アプリシエート(appreciate)」は「よさがわかる、おもしろく味わう、ありがたく思う」という意味の動詞で、「人生を深く味わう」ために「自分語りを聴き合う」ワークショップの名称です。


僕の母は還暦を迎える前後くらいから、「ありがてぇなぁ」が口癖でした。歴史の教科書に出てくる「女工哀史」そのままに、14歳くらいで織物工場に奉公に出されて、親が受け取るその対価はすべて酒飲みの祖父がつくった借金返済にあてられる。そんな大変な苦労の上に、戦争で婚期を逸して40歳になる少し前にようやくお見合いで結婚したと思ったら、その相手がまたこれが・・・(いけない、これを語り始めると止まらなくなるのでここでやめます・汗)。

ま、とにかく僕が生まれて、日本の経済高度成長のおかげでなんとか暮らし向きもよくなってきて、僕が高校3年の時に家を新築できた時には「ふんとに(本当に)ありがてぇなぁ」と、今までの苦労がかなり報われたという感覚になれたのではないかと思います。それ以降も色々な苦労はあったのですが、人生の前半の苦労を思えばそれでも「ありがてぇ」ことの方が多いと思えたようです。

このブログでは「アプリシエート(自分語りを聴き合うワークショップ)」のことを書こうと思ったのですが、「“アプリシエート”は日本語にすると『ありがたく思う』だな」と思ったら、急に母のことが思い出され、少し思い出話を書きたくなってしまいました・・・。

では、本題に戻ります。

僕自身が還暦を過ぎ、「目標に向かってつき進みたい」というエネルギーが後退してきて、これまでの人生とこれからの人生が天秤に乗って、どっちが重いわけでもなくゆらゆら揺れているような感覚になりました。これは悪い感じではなく、ここで「何を思うか」によって、若い頃とは違う種類の豊かな選択の余地が残されている年代だと感じるようになりました。

では、「何を思うか!?」と自問するのですが、まず最初に出てくるのは「正しい答え」のような使い古した陳腐なセリフ・・・と感じるようなこと。これだと「~であらねばならない」という義務感が勝ってしまいストレスになります。また、その反動で「思い切って違うことを!」と反発力に頼ろうとする自分もいます。しかし、どちらも本音というよりは心の表層で起きているパターン化された反応のような気がしたのです。

そんな中で、自分が考えていることを「全部語ってみたことがない」ことに気づきました。断片的には書いたり語ったりしているのですが、語り切るわけではなく「いつもの曲がり角」の手前で終わっていて、その角を曲がった先の風景を見てないなと思ったのです。で、色々な人の会話をそういう視点で観察していると、やはりいつものパターンで行けるところまでしか行ってないのでは・・・と感じることが多かったのです。それなら「その曲がり角の先に何があるのか一緒に見てみようぜ!」という感覚で企画したのが「アプリシエート(Appreciate)」です。

コロナ禍もようやくおさまってきて、マスクは個人の判断にまかされるようになったので、「よし今だ!」と思って募集を開始しようと思いましたが、はたして申し込んでくれる人はいるのかなという心配もありました。ところが、それはまったくの杞憂で、期待以上の勢いですぐに満席(定員8名)となりました。

9月1日から受付開始と8月中に予告したにも拘わらず、8月が終わる前にフライングで申し込んでくれた方がお二人いらっしゃいました。また、「プレセッション・ワーク21」という「自分の人生を振り返ったり、自分の意識の中に何があるのかを探ってみようとする課題」に取り組まないと申し込むことができないというハードルを設けたにも拘わらず、それを知ってから2,3日でそれをクリアして申し込んでくださった方々もいらっしゃいます。そして僕の予想よりずっと早く定員が埋まりました。とっても嬉しいです!自分の意識(心)の中に何があるのかを対話を通じて確かめたい、他の人たちがどんなことを思っているのかを、オンラインではなく対面コミュニケーションの中でじっくり聴いてみたいという欲望は潜在的に数多くの人々の中にあるのだろうと確信できました。

ただ、今回申し込んでくださったのはソリューションフォーカスのセミナーを体験した人ばかりです。これは僕のことを知っていて、安心できるからというのもあると思いますし、「自分語りを聴き合う」ことがソリューションフォーカスな場であれば気持ちよく成立すると期待できたからではないかと思います。

「アプリシエート」を思いついた当初は「自分語り」だけをキーワードにしようとしていました。ところが「自分語り」をネットで検索すると、「自分語りばかりするヤツへの対処法」みたいな記事がドッと出てくるのです。つまり、無造作に「自分だけ」が自分語りをして、聴かされる側の迷惑を感じていない場面が世の中には数多くあって、対話が成立していないという状況が多いので、「自分語り」にはネガティブなイメージを持つ人も多いのだと理解しました。僕もプライベートな場面で、調子に乗って話している内に相手が聴く気を失っている様子に気づくことが時々あります(苦笑)。

しかし、ソリューションフォーカスのセミナーの中で、短時間ながら「自分のリソース体験」を語り、それに対して「OKメッセージ」をもらうという「お互いに聞き届けられた、理解された、受け入れられた」心地よい感覚を記憶に残している皆さんは、似たようなことをもっと長い時間をかけてやれるプログラムだと想像してくれたのだろうと思います。自分だけが語るのでもなく、聴かされ続けるのでもなく、「自分語りを”聴き合える”」楽しさ♪

「アプリシエート」においては、聴く側は「プラスの眼鏡をかける」というのを約束事にしています。もし自分の良いところだけが映る鏡があったとして、その前に立ったら自分がどんな風に見えると思いますか?「アプリシエート」における「自分語り」は、まさにそのような鏡の前に立つような感覚でやりたいと思っています。もちろん表面的な承認ゲームにはしたくないですし、お世辞は嫌いです。しかし、3日間をかけて「お互いのことを聴き合う」対話をしたいと思う皆さんであれば、心の琴線に触れるレベルで「プラスの眼鏡」を活かしてくださるだろうと期待しています。

「アプリシエート」参加申込に必要な提出書類の中の記述を拝見すると、既にもう皆さんの中で自分との対話が始まっていることが感じられました。そして、これから「認め合い、学び合い、応援し合う」ことになるアプリシエート仲間との出会いが待ち遠しいという気持ちも伝わってきます。それはきっとその先にある「曲がり角の向こう側まで語った自分」がどんなことを思うのかを知るのが楽しみだからなのでしょうね・・・ってか、僕はそうです!

まだやってもないのに、良いことばかり期待しているのもどうかと思いますけど(笑)、心配症の僕がこれだけ良い期待しかしていないのも珍しいことです。12月に入ったら「実際やってみたら」のレポートをお届けしますので、待っててくださいねぇ♪

SF伝道者の四方山話 No.22 青木安輝” に対して8件のコメントがあります。

  1. かや より:

    うふふふ。
    どんなことが起きるんでしょうかね。
    楽しみにです

    1. 青木安輝 より:

      これだけは確実に言えます・・・
      NOBODY KNOWS!!
      わはははは♪

  2. 金原由香 より:

    青木先生、お久しぶりです。

    かなり前に、京都で開催された「ソリューション・フォーカスセミナー」に参加させていただきました。今回開催される「アプリシエート(自己紹介を聴き合うワークショップ)」は本当に素晴らしいプログラムですね。リスナーが「プラスの視点で聴く」というルールは、無意識の偏見から解放される一助とも言えます。

    「アプリシエート」の意味は「感謝する」という単語で覚えていましたが、改めて確認すると、 「真価を認める/~の良さを理解する」「(状況を)認識する・把握する・理解する」「価値が上昇する/値上がりする」といった意味も含まれています。そのため、「アプリシエート」という言葉は、きっと参加者全員にとって有益な経験になることを確信しています。

    青木先生、ご報告を楽しみにしておりま~す

    1. yasuteru より:

      金原さん、お久しぶりです。「アプリシエート」の意味に注目してくれてありがとうございます。報告を楽しみにしていてください♪

  3. こばちゃん より:

    その日が訪れることも、事後レポートもとーっても楽しみにしています。私は参加しませんが、それでも、楽しみ!って思えることは、このプログラムはなんだかすごいなぁ〜 と感じています。(笑😄 その頃、私は南半球にいるので申し込みを控えました。次回に期待してます)

    1. yasuteru より:

      こばちゃん、コメントありがとうございます。「参加しないのに楽しみ!」ってすごいことですね。嬉しいです!南半球の旅をどうぞ満喫してください。次回お待ちしていま~す!

  4. おっくん より:

    青木先生へ

    「ありがてぇなぁ」・・そんなふうに振り返ることができる人生ほど豊かなものはない。僕は未だその境地には至ってないのすが、そんな感謝の気持ちで生きていけることを羨ましくも思います。お母さんはすばらしい人生のお手本です。ありがとうございます。

     そう、普通なら「ありがてぇなぁ」で済ませておいても何の問題もないはずなのですが、青木さんはさらにその曲がり角の先まで見てみたいと仰るし、それに賛同される方々もおられる。
     IPS細胞など人体や宇宙、地球や歴史の探究は進化を止めません。果たして青木さんの「心の探究」の旅はどこまで行かれるのでしょうか。喜怒哀楽の範囲でしか見えていない私でも、いつか曲がり角の先の風景が見えてくるのかなあとワクワクしてきました。お母様のように全ての人の心が幸せになる何かが見つかるといいですね。  おっくん

    1. 青木安輝 より:

      「心の探求」かぁ・・・そう考えると、心の落ちつきどころを探している、ということなのかもしれないですねえ。いろいろと話してみる、かなりじっくり聴いてみる、というのを3日間やることは、ありそうでなかなかないことなので、どうなるかはわかりませんけど、予感としては、なんだかとても落ち着くような気がするんですよねえ。

      おっくん、いつもコメントをありがとうございます。

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