SF伝道者の四方山話 No.16 青木安輝

10年後の成果報告!

フェイスブックにも書いたのですが、昨年暮れにある方からとっても嬉しいメールをいただきました。10年前にソリューションフォーカスのセミナーを受講して、その後国際協力の様々な場面でSFを活用して成果をあげたことを報告したいという内容でした。メールをそのまま紹介します(ご本人の許可を得ています):

青木様

御著書「解決志向の実践マネジメント」を読んで非常に感銘を受け、10年ほど前に一度お会いし、その後SFの研修にも参加しました笹尾です。覚えていただいていたら、うれしいです。私は、日本政府のODA事業(政府開発援助、平たく言えば、政府の国際協力事業です)に携わる開発コンサルタントをやっておりますが、実は、その後、SFをいろいろな局面で使わせていただきました。ざっと記しますと、

・バングラデシュでのJICAの技術協力プロジェクト(=地方公務員の能力開発がテーマ)におけるモデル都市のビジョン作成のためのSFワークショップの実施(2014年)

・上記結果を論文にまとめての国際開発学会での発表(論文名「ODA事業におけるSF手法の活用による異文化コミュニケーションの活性化」、2017年)

・カメルーンでのJICAの技術協力プロジェクト(=日本のカイゼン手法の導入による中小企業振興がテーマ)における中小企業のミッション・ビジョン作成のためのSFワークショップの実施(2021年)

さらにわたくし、この度、「仕事革命・健康管理で人生100年時代を謳歌する」という本を東京図書出版さんから出版することになりました。これは、仕事の効率化・質の向上と健康管理を2大柱とする、若手ビジネスパーソン向けの応援歌のようなビジネス書ですが、同書の中でも、SFに関しては、有効なビジネスマネジメントの1手法として、紙面を割いて、私の活用例と御著書を紹介させていただきました。

これまでも節目でご連絡しようしようとは思っていたのですが、ついついしそびれてきました。それで、そろそろご連絡をと、思った次第です。

とりいそぎ、ご連絡まで。

笹尾 隆二郎

笹尾さんとはこの10年まったくコンタクトはなかったので、申し訳ないですがはっきりと記憶には残っていませんでした。それが突然このようなメールをいただいて、びっくりすると同時に本当に嬉しくて、年末だったのでクリスマスプレゼントをいただいたような気がしました。いやあ、こんな風にどこか僕が知らないところでSFを活かし続けてくださる人がいるんだぁと感激しました。

お正月になってから、笹尾さんとZOOMアポを取って、メールでご報告いただいた内容を詳しく取材させていただきました。ご著書もお贈りいただいたので、あらかじめ目を通してから臨みました。この本の中ではSFは2つのポイントで紹介されています。一つは「人間関係をよくするための一つの方法」として。もう一つは、組織開発をスタートさせる時に短時間で効果的なキックオフワークショップをする枠組みとしてです。

国際開発援助のお仕事をされている笹尾さんはバングラデシュやカメルーン等で自治体や中小企業の支援をする中で、「ここはSFを使うのに適した場面だ!」と感じられたところで大いにSFを活用され、クライアントの皆さんに喜ばれたとのこと。

普通は開発系のコンサルティング業務の中では、当事者と1~2日かけてまず問題点をしらみつぶしに挙げていくようなところから始める手法が多いそうですが、SFを活用した場合には、半日程度で最初のグラウンドワークが可能になるし、明るい雰囲気の中で問題点や犯人捜しをすることなく、参加した全員が関与意識を高めることができるので、お客様に大変喜ばれるそうです。

問題点について「これどうするつもり?」とギリギリしめあげるような雰囲気にするよりは、お互いへの「OKメッセージ」から始めて、一気にポーンと「フューチャーパーフェクト」に飛び、課題解決に関して自由な発想を活かす方が、チームの一体感や自発的な意欲を高めることにつながるとのこと。「まさにSF!」と思いました。そして、それが文化の違いを越えて有効であることに感動しました。OKメッセージへの肯定的な反応の大きさは文化によって違い、日本、バングラデシュ、カメルーンの順だったそうですが、SFの枠組みでの開発ワークショップが有効である度合いが高いことはどの文化の中でも証明されたようです。

SF伝道者としては、かなり昔に蒔いた種がこのような形で芽を出し実を結んでいたことを教えていただき、深く感銘を受けました。そう言えば、最近開催した「SFブログ読者Café」においても、参加した皆さんがさりげなく「前にSFを活用して・・・がうまくいったことがあるんです」とSF実践例を話してくださることがよくあります。ここ数年はSF活用事例共有大会をしていないので、積極的にそういう事例を集めることはしていなかったのですが、実は折に触れて色々な方がSF活用の様子を教えてくれます。

定期的に自社のSF的組織開発が一歩ずつ進んでいる様子を教えてくださる方や、自治体の職場でSF的コミュニケーションによってことがスムーズに進んだエピソードを教えてくださる方、教育現場で生徒の成績がグンと上がったことを報告してくださる方、家庭での問題がSFで解決したことに感謝を伝えてくださる方など、多岐に渡るSF活用の様子を伝えていただくたびに、この仕事をしてきて良かったと思います。そして、何等かの形でそういう素敵なSF活用事例を多くの皆様と共有する機会をつくりたいという気持ちが高まります。

もし皆さんが「もしかしたらこれもSFを活用したってことになるのかな?」と思う体験をしていたら、是非教えてください。このブログのコメント欄で多くの人と共有することもできますし、このホームページの「ご連絡フォーム」を使って私に直接お伝えいただくことも可能です。簡単な記述で結構です。その後私の方から連絡させていただき、可能であればZOOMでのインタビューもさせていただきたいと思います。そんなことが増えていったら、その先には皆さんのSF活用事例を共有する仕組みも創っていきたいです。

SF活用体験を共有しようとすることは自分のためになります。「SF実践者の“ザ・リアル”」執筆者の一人である小林シンイチロウさんは、SF実践コースに参加した後に初めてSF活用事例共有大会で発表する前に、人前で話すための練習をその当時のSF仲間と数回重ねた上でとても素敵な発表をされました。その時に彼が放った名言が「SF活用事例発表をすることは一粒で4回美味しい!」でした。(グリコの宣伝を知らない若い方にはピンとこないかも・笑) その意味あいは、まず実際にSF活用がうまくいった時点で1回美味しい。次にそれを発表内容としてまとめるための振り返り作業の中で多くの発見があり、いろいろなことのつながりが見えてくるので2回。次に発表練習をすると、聞いてくれたSF仲間がOKメッセージをくれるし、色々な視点で「良かったこと」をさらに深めてくれて3回。そして最後に実際の発表をした時の聴衆の皆さんの好意的な反応と達成感が自分の明確なリソースになるので4回です。

時は止まってくれずどんどん流れていき、「忙しい」という意識が先にたち、良かったことがあっても何がどう良かったのかを振り返る機会を持つことは稀です。何かうまくいったことがあったら、ぜひ「プラスの眼鏡」をかけてうまくいったことを振り返り、誰かと共有してみてください。実際にそのことをした時よりも振り返りをした時の方が感動することさえあります。皆さんは振り返る価値のある体験をきっといくつもしているはずです!

SF伝道者の四方山話 No.16 青木安輝” に対して8件のコメントがあります。

  1. おっくん より:

    青木先生へ

     10年ひと昔とは言いますが、蒔いた種を丁寧に育て上げた結果、あちらこちらで花を咲かせ、多くの実りをもたらすシーズンがもう始まっているんですね。たいへんおめでとうございます。

     拝読し、コンサルタントという仕事がとても特別なことのように見えてきた。もちろん笹尾さんのことも、どんなお仕事かも存じ上げませんが、国や地域の人たちと関わるなかでは、彼自身もそれらの人々と思いをひとつに新たな未来に夢を重ねていたに違いないのかと。

     ソリューションフォーカスとの出会いが縁となり、自分の中にこれまで気づいていなかったものが目覚め開花していく様子は、武器を纏って武装するのではなく、まるで最初から自分に備わっていた持ち物であるかの如く、気持ちよく、手応えを感じそして自由に操れる喜びに躍動していく。そうSFがまるで生命の一部のように思えてくる。

     ソリューションフォーカスの特質はその理論の正しさだけにとどまらず、関わる全ての人間や環境までをもプラスの方向に向かわしめるという現実性も兼ね備えているということかもしれない。
    理論と実態(実証)が同居しているが故に時空を超えて多くの人々に喜びをもたらす処方であると言えるのだ。

     ”たとえ苦しみの中にいても即座に希望を見出すことができる”このような素晴らしい智慧に巡り合えたこと事態が奇跡かもしれない。そして自身の振る舞いを通してその正しさを体現、実証出来ることの喜びやその使命感を知る者は本当に幸せなのかもしれない。
    と彼の手紙に書かれているようだ。

    SF伝道者の皆さんに感謝しつつ 合掌

    1. 青木安輝 より:

      おっくん、格調高いコメントをありがとうございます!

      以下の段落の表現に感動しました!
      「ソリューションフォーカスとの出会いが縁となり、自分の中にこれまで気づいていなかったものが目覚め開花していく様子は、武器を纏って武装するのではなく、まるで最初から自分に備わっていた持ち物であるかの如く、気持ちよく、手応えを感じそして自由に操れる喜びに躍動していく。そうSFがまるで生命の一部のように思えてくる。」

      「武装するのではなく、最初から自分に備わっていた持ち物」だから気持ちよく自由に操れるってのは、とってもぴったりな表現だと思いました。

      SF伝道者ってのは、「オレたち持ってるよね♪」とリマインドし合う人たちなのかもしれないですね。

      1. おっくん より:

        立命館大学のオンライン講座に笹尾さんの名前を見つけました。なんだか聞いてみたいなあって・・・もう仲間なのかも。

        1. 青木安輝 より:

          へえ、そうなんですか!アンテナ張ってますね。もし受講できたら、SF仲間だと言えば喜んでくれるかも。そんときゃよろしくお伝えください♪

          1. 青木安輝 より:

            笹尾さんに伝えたら、無料なのでぜひご参加くださいとURLを教えてくれました↓
            【SDGsを考える】国際協力と開発コンサルタントという仕事 -日本のODAの事例を通してSDGsを考える | 講義紹介 | 学びのプラットフォーム MIRAI | 立命館大学 (ritsumei.ac.jp)
            https://www.ritsumei.ac.jp/open-univ/course/detail/?id=31

  2. 青木安輝 より:

    笹尾さんからまた嬉しいメールが届きました。以下そのまま掲載します(本人了承済)。

    ———————————————————————
    青木さん、こんばんは。

    今日、カメルーンから帰国しました(フランス経由)。
    早速ですが、少しいい話を。

    当地の6日月曜日にプロジェクトの最終イベントとして、ずっと面倒を見てきた20人強のカメルーン人コンサルタントへの修了証書授与式を日本大使やカメルーンの中小企業省大臣の列席の下、行いました。

    式の後に、かれらを集めて、最後の活動の振り返りのワークショップを行いました。

    それで、私が最後の挨拶で、みなさん、今後、SFもぜひ継続的に活用してほしいと言って終わりましたら、1人私の下に来て、「最近2社でビジネスプランを作りました。最初の企業ビジョンやミッションの作成過程で、SFワークショップを持ちましたが、やはりOKメッセージの効果は高く、日ごろ知ってそうでお互いを知らない社員たちがお互いの長所を認め合うことで一気に場の雰囲気がもりあがり、いい議論ができました」と報告してくれました。

    SFに関するいい本(カメルーンは仏語が公用語ですが、英語で可)はないか、とも聞かれました。もし何かご存じであれば、教えていただけますと、幸いです。

    笹尾
    ——————————————————————

    書籍に関しては、ジャクソン&マカーゴウの”The Solutions Focus”、サイモン・リーの”Solution Focused Briefly Illustrated”、ピーター・ザーボの“Coaching Plain & Simple”を紹介させてもらいました。彼らを日本に呼んで、J-SOLを開催していた頃が懐かしい!!

  3. シオタリョウコ より:

    1回目のコラム、そして本日追加のメールを読んで感動と心にあったかいものを感じています。
    人と人との優しい繋がり、人に優しいマネジメントの「SF」がこんなに広がってそれも世界へ…。素晴らしいです。

    自分の皮膚感覚で「平和」を心から願うこの数年ですが、SFに出会ったからこそ意識が強くなったと思っています。
    『世界の平和を願って私が今できることは、今日出会う1~5人にOKメッセージを』を心がけています。
    笑顔や挨拶の簡単なことからです。OKメッセージで場の雰囲気が良くなったという笹尾さんやSFカフェで聞く参加者の方からのOKメッセージの効果、私も最近感じています。

    またカフェなどでシェアさせてください。((´∀`))

    1. 青木安輝 より:

      塩田さん、コメントありがとうございます。そしてCaféへのお申込も嬉しいです♪

      平和・・・の方が良いと誰でも思っているはずなんだけどねぇ、人間て・・・と思う今日この頃ですが、SFが功を奏したエピソードを聞かせてもらう度にやっぱり希望も持てるなあと気持ちが上向きます。

      Caféでお会いするのを楽しみにしております。

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