快く生きる日々 No.41 渡辺照子
素敵なリーダー・Aさん
研修講師をしている私がいただいたのは、鉄道会社の線路の整備をするチームが、働きやすくベストな成果を上げるための研修。
電車との接触や、高圧の電気に因る事故など危険が高い分、リーダーはメンバーを緊急時には、かなりな叱責をする。そのことをまるで、自分個人を責められたかに受け取ってしまって、ストレスを高める後輩メンバー。このご時世、後輩を注意・指導するのに、どのようにすればよいのか、自分の言動が果たしてそれでよいのか、不安や恐れを抱くリーダー。
このような現状がある人々に、どのような研修がご提供できるのか考えていたら、ぜひ話を聞いてみようと思える一人の人物が思い浮かんだ。彼はAさん。わが子が小学校の時にPTA本部の役員をしていた時の会長さん。誠実で、物腰が柔らかく、けれど芯があって。役員チームメンバーが、こころよく活動する雰囲気を見事に作ってくれていた彼の職業は、とある鉄道会社の施設整備の仕事だったことを思い出したのだ。
さっそく朝の時間帯であったが、ラインで、今回引き受けた研修デザインの参考にしたいので、お話を聞かせてほしいと伝えた。すぐに返信が来て、「今、夜業明けで、帰宅するところ。とりあえず今日は空いているけど、その他の日は、帰らないとわからないから、再度連絡します。」とAさん。睡眠をしっかりとって可能な時にという私に、「夜業開けでも寝ずに動くことあるから、その点は大丈夫。」とのことで、お話をその日ランチをしながら聞かせいただくことになった。
話を聞く目的は、私が仕事で引き受けた研修デザインの参考にしたいからであったが、聞き進むうちに、語ってくれたAさんが、なんて素敵なリーダーなのだろうと感じ入り、聞き入ってしまったことをここに記したい。以下は、Aさんが語ってくれたこと。
自分が上からされて嫌なことはしないようにしている。電車は石ころ一つで脱線することがあるし、設備の電圧は、66000ボルトだったりすると、近づくだけでも命がなくなってしまうほど。“行ってくるよ”と朝出てきた人を安全に家族の元へ返す責任がある。預かった子供を五体満足で返してあげなければならないという親心で、後輩に向き合う。「危ないよ」では、間に合わない。自分は、言葉じゃ遅いから、態度で先輩に注意をされた世代で育った。集中するけど集中しすぎないのが仕事のポイント。言葉も態度もきつくなるけど、どうフォローするかが大切。それから、以下のことは、チームメンバーたちに最初に言っておく。自分の命も大切にしてほしいし、君が先輩になったら、君が後輩を守っていくんだぞ。俺もミスをすることがあるかもしれないから、その時は俺を守ってくれ。危ない時は言ってくれ。俺の言葉がきつくなることもあるかもしれないけど、お互いさまでやっていこう。何かあった時には、連帯責任。先輩も後輩もない。チーム全員でやっていくんだ。
さらに、
「昔はこうだった」は通用しない。「お前やれよ。」ではなく、「わるいけどやってくれ。」じゃないと、やってくれない。教えながらでないとだめで、背中見て盗めは通用しない。検査表と工程表が用意してあって当然ではなく、「検査表と工具用意した?じゃあ、あとはこれ用意してくれ。」 一緒になってやる。そうでないと若手は、「先輩は人にやらせるだけで何もやらない。」という。今の世代に合わせていかないと進まない。ある程度指示してやらせて、振り返らせる。「どうだった?」と。必ず後輩に意見を訊いて、気づきの感度を高める。
それから、自分の過去の失敗も話す。30年前、金属バンドの時計をしていて、ねじが出ていたところに触れてしまってショート、施設を止めてしまった。その時上司は、「仕事やってなったんだからしょうがないよ。今度気をつけろ。」と。それからはずっと布ベルトの腕時計をしている。だから、お前はやるなよ。(腕時計は、電車のダイヤを気にしながら、線路で作業をするので、命を守る必需品。) 後輩が失敗して、上司が注意したとき、「その言い方はない」と思わせてしまったら伝わらない。頭ごなしにおこっても伝わらない。
そして、私をしびれさせたとどめの一言。
“やっぱり、一生懸命やっているやつは守らなきゃ。反省はさせるけど、俺は上司とけんかしてでもそいつを守る”
Aさんは心底素敵なリーダーだと思う。時にきつい言動があっても、リーダーとして、先輩として、メンバーや後輩を思う気持ちが伝わるんだろうな。そして、Aさんの話をお聞きして、仕事をするということは、仕事の成果を上げるというだけでなく、人としてどう生きるのか、それを日々表していくということなのだということも再確認した。
Aさんが最後に言ってくれたのが、「自分は、元航空会社出の方が来てやってくれた研修で教えてもらった、『人の話は最後まで聞きなさい。その後で、否定するなら否定しなさい。後輩との話もそうだよ。』という講師の話が心に響いて今もやり続けているよ。」と。そうなのか、研修講師の話が長年Aさんの言動に影響を及ぼしているんだ。私も研修講師だ。現場の人々にお役に立てる可能性が広がっているということと理解しよう。6日間13回に渡って行わせてもらう鉄道会社様での今回の研修は、現在半分終えることができた。素敵なリーダー、Aさんの話は、私に、そして私の研修に生きている。感謝の思いを込めて、もう半分に私は臨む。


ウーン、いつの世も同じことで悩むものだね。昭和の時代も、戦前も、日本だけでなく、ヨーロッパでも、アジアでも、ひょっとしたら未開の土地でもそうかもしれない。難しい問題。
興味深く読み進めてみると、事例や教訓はとても面白く参考になります。ただ、意外と答は想定内の事柄・教訓。でもそれでいいのかな。ただ……
これは、当たり前のことを言っているということではなく、その当たり前のことを多くの人ができていないということだと思う。AさんはAさんの部下達に対してそれをやれたのでしょう。それは彼の素晴らしい能力、信念の賜物。では、私が私の周りの人たちに、ここに書かれたことをできているかというと、そうではない。……違う状況だから。……違う文脈にいるから、そんな言い訳をしてしまう。私には難しいと思うのは、Aさんの良さが消されている気がするから。
私がAさんに感じる魅力は、渡辺さんが感じたところにあります。「彼はPTA会長さん。誠実で、物腰が柔らかく、けれど芯があって。役員チームメンバーが、こころよく活動する雰囲気を見事に作ってくれていた人」ここに彼の魅力が詰まっている。
彼が語る、職場での硬いナラティブヴ、自分がやっていると信じている行動規範は、恐らく魅力の一端、ごく一部なのではないのかな。彼が自分で気がついていないところに、彼の行動の良さ、実践の成功が隠されている気がする。部下に聞くともっと違う答が出るかもしれない。
渡辺さんの後半の講義の、終わった後の感想を聞きたいものです。(*^_^*)
今日は久しぶりに青木さんに事務連絡でメールを見たところでした。
これまで使っていたアドレルnagataclinicは2月で使えなくなります。
今後はcapのアドレスを使ってください。
渡辺さんへ
おはようございます。
YouTube拝見しました。大きくのけぞりながらの対談は、お二人の気の知れた間柄がよーく出ていましたね。照ちゃんの久しぶりにも変わらない笑顔に癒されています。
今回のコラム、僕もAさんのようなリーダー像にあこがれをもって読ませていただきました。もし、僕の中にAさんのように周りの人への心配りと愛情のまなざしがあったとしたら、どんな組織の中でもうまくメンバーの個性を引き出すことができるではないでしょうか。そんな未来の僕らしさに向かって一歩でも近づけるように目の前の出来事に取り組んでいきたいと思っています。
(今年は町内で新しい取り組みを起こしてみようかと計画しています)
また、コラムからは依頼された会社や職場の人々にどこまでも寄り添って、一緒になって成果を生み出そうとされる渡辺コーチの情熱を垣間見ることができました。遠くからですが益々のご活躍をお祈りしております。
おっくん