快く生きる日々 No.36 渡辺照子
私にとって、カッコイイ生き方
7月初旬の5日間、私はアメリカからやってきた、元教え子さん家族をアテンドさせてもらった。
私の元教え子さんは、チーちゃん(仮名)という。ご主人のコナさん(仮名)と、小学校6年と4年のお子さん達の総勢4名でやってきた。最初の数日は、私の実家を拠点にして過ごし、3日目から、彼女らがラフティングをやってみたいということで、水上(みなかみ)という場所の近くのペンションに、彼女らは滞在した。彼女らをペンションに届け、翌朝迎えに行ってと、5人乗りの私の車にキツキツ満員で、一緒に乗り込んで移動して楽しく時を送った。
チーちゃんの生き方はカッコイイ。自分が食物アレルギーのある子どもを育てた体験を、世のアレルギーのお子さんを持つ親御さんの応援に活かしたいと、いま奔走している。日本にやってくる目的の一つが、そのビジネスを発展させようと情報収集にやってくるということである。
コナさんの生き方もカッコいい。毎朝5時に起きて、筋トレして、朝7時から、2つの大学を掛け持ちして教員をやり、夏休みはしっかり休暇を取り、家族と1ヶ月間日本に滞在することを楽しむ。日本語に興味をもって、私がたまたま使った、「ヒョウタンから駒が出た」ということわざを、翌日には自分が使ってみようとする好奇心を持ち合わせている。ライフスタイルも、心意気もカッコイイ。
それでだ、二人ともカッコイイのだが、今日私が書きたいカッコイイ生き方をしているのは、彼女らが滞在したペンションのオーナー夫妻のことだ。
そのペンションをインターネットで探し出したのは、チーちゃん。すごい世の中で、8ヶ月後に泊まりたい異国の宿を、インターネットで調べ上げることができる。ペンションで出される料理がおいしいとの評判を見て、彼女は日本の食に大いなる興味を持っているので、気に留まったのだと思う。8ヶ月前に、このペンションに泊まることを決めていた。その宿に電話して予約をしたのは私だが。
予約の電話をかけると、電話は転送されて繋がった。奥様が電話口で応答してくれた。電話をかけたとき、畑にいたのだそうだ。「食事を前は出していたんだけど、今サクランボとブルーべリーを作っていて、私もう大変になっちゃってね、食事は出していないのよ。電子レンジやお皿は備え付けてあるから、自分たちで食事は作ってもらって、それでも良ければどうぞ泊まって。」とのこと。
実際に宿に着くと、その奥様が迎えてくれて、施設を案内してくださって、さっき宣伝用の写真撮影に使ったサクランボをどうぞと、コップいっぱいに入ったのをさし出してくれた。そして、さらに、夕食の食材を調達しに車で出ようとすると、「今採ったところよ。持ち帰って食べて。」とキュウリ3本とズッキーニを1本、袋に詰めて助手席側の窓から、私に渡してくれた。
思えば実家の母も、このようなことをよくする。しかし、違うのは量だ。母はもっとどっさりプレゼントする。私には、ペンションのオーナー奥様のさりげない行動、量の加減が、カッコよく感じられる。
自宅に戻ると、チーちゃんからメッセージが来て、「最終日は、ピックアップに来て、駅まで送ってくれなくてイイですよ。というのは、オーナー夫妻にタクシーの予約方法をたずねたら、〝俺が新幹線の駅まで送っていくよ。〟とご主人が言ってくれた。〝俺たちもアメリカに行ったとき、向こうで色々してもらってるからさ。〟」とのことである。翌日、どういうことかお聞きしたところ、オーナーご夫妻は、1年間必死でフルーツ農家として専念して、1月に1ヶ月間ハワイで過ごすという生活を毎年しているのだそうだ。なるほど、それで、〝アメリカで色々してもらってる〟の発言が理解できる。
このご主人は、英語の、「Pay it forward」、誰かから受けた親切を、その人に返す代わりに別の第三者に対して、親切を行うということを行動で表現したのだろう。さらっとこういう風に言って行動に移してしまうところがカッコいい。必死に一年働いて、1ヶ月ハワイで過ごすというライフスタイルを取り入れているところもカッコイイ。
このペンションのある場所は、実家のあるところとそうは離れていない。例えば、同じ地域に住んで宿を経営する姉が、11ヶ月しっかり働いて、1ヶ月休みを取るかといったら、そういう選択はしそうにない。多分、私自身もそういう選択ができない。カッコイイと感じるのは、自分ができないことを、やってみたい、憧れはするけれど、それができていないから、カッコイイと感じるのだと思う。私はこの後の人生で、研鑽して、ペンションオーナー夫妻のように、手放すことは手放し、本当に望む境地に移行する選択を行えるだろうか?(そうしたいだろうか?)もし選択するのであれば、そのためには、大きな思い切りが必要だ。快い生き方を真に追求するのであれば、常時ベストに活動・行動しようとする自分を卒業し、手放したり、捨てたり、減らしたり、休んだりして、新たな境地に移行する必要があると思うよ、自分。
こんな風に思っている私を皆さんはどう思いますか。
ペイフォワードは私も心がけているのですが、このチーちゃんとオーナー夫妻の生き方は本当にかっこいいですね。刺激を受けました。
渡辺さんへ
そうだなあ、実家を一ヶ月くらいじっくり手伝ってみたら?
だんなさんと一緒に自治会でがばってみるのもいい。
自分できめない、来るものに自分を合わせる生き方。
自由ってあんがい身近なところにあるのかもしれないし、
やっぱ”ひと”のやさしさやちからづよさが一番すきだ!
峠でひとやすみしながらうしろを振り返えると
「もうこんなところまで来たんだ!」とこれまでのことが
ほほえましく思い起こされてくる。
かっこいい照ちゃん、もっとカッコよくなあれ!
自由詩人のおっくんより