快く生きる日々 No.34 渡辺照子
快く生きる工夫
『座右の寓話』という本を見ていたら、第5章・強い組織の精神・NO.27「ゴ―グルをつけろ」のところに、イタリアの化学工場で、それまで保護用ゴーグルをかけなかった従業員たちがとある変更をおこなったところ、こぞって着用するようになった話が載っていた。
〝あれ~、この話どこかで読んだことあるぞ!〟と思い巻末の出典をしらべると、青木安輝さんの『ソリューションフォーカス 解決志向の実践マネジメント』であった。
この話を私は大好きだ。というのは、ガミガミ注意しなくても、自分からその行動がしたくなっちゃうような関りができたら、自分で自分をきらいにならなくて済むものな、我が子が幼少の頃、注意ばかりしている自分のことがいやになった経験があったので、とても印象深く残ったのだ。青木さんの本の出典に当たってみた。
「化学工場では安全は何にもまして重要だ。人の安全となるとことさらで、会社には作業用胸当てズボン、ヘルメット、手袋、保護メガネなど個人用の安全保護具の供給が法的に義務づけられている。しかし、これを実際に着用させるというのはまた別の問題だ。創業年数の長い工場などでは、従業員たちが身の回りの危険に無感覚になってしまいがちだ。
イタリアでゼネカ社が共同経営している化学工場もその一つだった。経営幹部(と法律)は工員たちに保護メガネの着用を求めていた。ところが工場の従業員たちはこれを渋った。
解決策が浮上したのは、誰かがみずから次のような問いかけを行ったときだった。「このフューチャーパーフェクトが部分的に起こっているのはどういうときか?うちの工場で、厳しく言われなくともみんながメガネをかけるとしたら、それはどういうときだろう?」
これはイタリアの話だ。イタリアの男たちは、どういうときに、言われなくともメガネをかえるだろう?そのメガネがかっこよくて、おしゃれなサングラスなら文句なしだ!
そこで経営陣はミラーシェイド・タイプの保護メガネを何種類かつくらせ、工場の機械作業員たちに渡してみた。すると奇跡が起こった。従業員たちはすぐにメガネを手に取り、ほとんどの時間、科学的に危険のない区域にいるときでさえ、着用したのだ。単にデザイン上の変更が行動様式にこれほど大きな変化をもたらしたのだ。
工場側は、問題志向型のアプローチを選ぶこともできた。その場合、変更前はみんなが保護メガネをかけなかった理由、わが身とその健康を危険にさらそうとする動機、あるいは身の回りで起こる自己の根底にある原因を調べていたことだろう。そういう探求から、先ほどの解決策がうまれてきただろうか?おそらく無理である。」
(マーク・マカーゴウ+ポール・Z・ジャクソン著 青木安輝訳 『組織の成果に直結する問題解決法 ソリューション・フォーカス』、120~121ページ)
この話は、ナッジ理論を調べた時、事例で掲載されていた話にも通ずるところがある。外国の話だったかな、公共の公園で、ごみのポイ捨て対策として、ごみを捨てると音が鳴るゴミ箱を開発したところ、音が鳴るのが楽しくて、自分のごみだけでなく、そこら辺に落ちているゴミまで、集めて捨てるようになったという話。
注意する、注意される、批判、監視、罰則、過剰な経費が発生する、闘い、隠ぺいなどの対岸にあるようなゴーグルの例とゴミ箱の例だと思う。先掲のゴーグルの話やごみ箱の話のようなのが取り入れられると、社会や組織の穏やかさや人々の笑顔に繋がっていく気がおおいにする。
しかし、今日は、私は、自分が日々を快く生きるための工夫として取り入れたいと思って、この話題を書かせていただいた。
どうなったらいいかな?と未来のありたい姿や得たい状態を思い浮かべ、そのようになるための手立てを考えるのだが、しかめっ面をして取り組む手立てではなく、無理がなくて、自然で、自分が快い工夫だ。
思いを巡らすと、自分の周りにそうやって生きている人がいるし、自分も何かやってきた気もする。ちょっと思い出してみよう。
・購入するノートは、書きたくなる好きなワクワクするデザインのノートにする。
・椅子を買おうとなったら、ホームセンターとかで買わないで、息子の友達のお父さんが木工作家なので、その方にお願いした。注文にしに行けばお店番をしている友達のお母さんにも会えるし。
・実家の旅館業の手伝いに行くとき、忙しいはざまで休憩するとき用の、立ったままでも食べられるようなおやつを、買ってゆく。メンバーの顔を思い浮かべて、皆に喜んでもらえそうなものをチョイスする。→ いずれ鼻歌歌いながら、自分が手作りしたのを持ってゆけるようになったら最高。
・講演やクラスをスタートする時点で、なんとなく気が重い感じがするときは、途中や終った時、皆さんが喜んでくれたり、役に立てた状態になるようなイメージをして、こころや意識の切り替えを行ってから始める。
・家の隣にある仕事部屋に行くとき、厚ぼったい靴下を履いていても、楽々つっかけられるような、大きめサイズのサンダルを用意している。
とここまで書いてきて焦点がずれてきているような気もしないでもないような。でも、思い出し、あれこれ考えていること自体が楽しい。
快く生きる工夫、ポイントは、どうなったら最高なのか、出口から考える。軽やか。自分が面白い・楽しい・・・。
イタリアの化学工場の防護メガネの話、僕もとても印象深く残っています。アシュタバクラの話と同じくらい。(あと、気球に乗って壁を越えて壁の向こうを見に行くイラストもなんか好きです。)
一昨日、新一年生の心臓検診があったんですが、機材を見て急に怖がって嫌がりだして困ったのですが、ベテラン検査技師さんが何やら手足につけるクリップと、体に吸い付けるスポイトのパーツを持ってきてくれて、ちょっと遊ぼうかーと、ピタッと胸に吸い付けたら、、、???「あれ、磁石かな?」と気分が変わってしばらく遊んでいるうちに、ほどなく先に検査していた人が何事もなく終わっているのをみて、無事に検査を受けることができました。
楽しむ工夫、いろいろなところでできるんだなぁと、教わったことを思い出しました。
素敵なエピソードをありがとうございます♪
さすがベテラン技師さんですね。面白いエピソード!やっぱり「従わせる」とか「理解させる」とか「やらせる」という使役の意識よりも、「えっ、これって何だろう?」と自分から近づきたくなる意識を大切にするっていいですね。
小野さん、コメントをどうもありがとうございました。
小野さんが、小野さんの身の回りに起きたエピソードに思いを巡らせてくださったことがとても嬉しいです。
私は狭いところが嫌いで、おそらく、MRI検査は今のところ受けられなさそうなのです。
なので、「検査」というものを前に、怖がる嫌がる児童の方の気持ち、理解します。
ベテラン検査技師さんの存在は、まるで救世主ですね。
渡辺先生へ
最近の僕の頭のメモリーの70%が自治会が占めています。総会も終えて、新しいメンバーと共に新年度のとりくみをスタートするのは新鮮です。
2年目ですから昨年よりは余裕も生まれますが、色々見えてくるだけに、どのように見て、考え、行動するかも周りの期待とともに問われていることを感じています。
いかなる組織であっても中心者は、自分達の采配が正しいのかそうでないのか気になります。そしてその判断基準はあくまでも自治会の場合は会員(もしくは住民)の反応になるでしょう。
今回のコラムに描かれたゴーグルのお話は、経営幹部たちが従業員の気持ちに寄り添うことの大切さを説いたものと受け止めています。中心者の心は常に構成員とともにあらねばならないと。
僕は、これからの人生の長い時間を自治会活動の中で過ごすのではないかと思っています。どのような関わり方になるかはまだ分かりませんが、前途のことは大切にしていきたいと思っています。
いつも皆さんのコラムにコメントをさせていただくことで、自分を振り返る時間が持てることに感謝いたします。
谷奥勝美
谷奥勝美さま
コメントをどうもありがとうございました。
経営幹部たちが従業員の気持ちに寄り添うことの大切さを説いたものと受け止めていま
す。中心者の心は常に構成員とともにあらねばならないと。
経営幹部が、従業員の気持ちに寄り添ってくれる、そういう組織で、従業員として存在できたら、安心して所属でき、やる気も高まるだろうなと思います。
谷奥さん、私の夫も、この春から自治会の副会長になって活動しています。不燃ゴミ等の集積場所に、毎週土曜日に係員の方々のサポートにいっています。圏内でご葬儀があれば、会長と分担して参列しています。頻繁にミーティングにも行っています。ものすごい時間とエネルギーを稼働している様子です。
谷奥さんもきっと同じようだろうなと想像しつつ、主体的にすべてのことに臨んでおいでのご姿勢に敬意をいだいております。
渡辺照子
ご主人も副会長さんですか。
地域の中でご活躍のご主人の姿が
遠くの空の彼方に見えるようですね。
人から頼りにされるのはもちろん嬉しいことですが、奥様の「ごくろうさま」のひと言はもっとうれしいと思いますよ😊
これってコラム内容から外れてますね。いつものように。