快く生きる日々 No.32 渡辺照子
勇敢にも「呑み込んだ」夫の話
ソリューションフォーカス(SF)の元となっている解決志向アプローチ(SFA)は、1980年代にスティーブ・ディシェーザーとインスー・キム・バーグ夫妻らによって開発されたという。彼らは、アメリカ・ミルウォーキーで家族療法センターを設立して、心理療法家として活躍していたそうだ。
私は、青木安輝氏のSFセミナーに参加したときに聞いた解決志向アプローチ開発過程での一つのエピソードがとても印象的で、15年以上も前に聞いたことなのに、くっきり覚えている。以下、青木氏が著した記事から抜粋する。
離婚寸前の夫婦に対する面談の話がある。初回面談で20以上の問題をあげつらったりののしり合うだけの夫婦に対して「今のままの生活の中で相手がすることを観察して、良いことが見つかったらメモをする」という観察課題が出された。するとその夫婦は2回目の面談には仲良く手をつないで現れたという。
さて、今日は夫婦のことを書こうと思う。夫と私のことだ。
夫は定年後、3年間シニア派遣という形で、単身赴任していた。昨年の春戻ってきて夫婦2人で暮らすようになった。それで、秋口からは私の仕事の経理を手伝ってくれるようになった。どちらかというと、夫は経理が好きではないようだが、努めてくれている。目下、私は自分がこれまでやってきたことを、夫に教えている最中である。
実は、私の性格上、夫にいちいち説明するのは面倒だ。おそらく、私の夫への説明は、高圧的で不親切なのだと思う。そういえば、子ども達が幼い頃、スキーに連れて行ったことがあった。私は群馬県の北部山間地出身なので、子どもの頃からスキーをやっていて得意だった。その勢いで子ども達に教えたら、「今度行くときは、お母さんじゃなくて、お父さんと行きたい。」と言われてしまったことからも、私が親しい関係の対象に物事を教えるときは、どのような態度になるか、想像していただけたと思う。(苦笑)
先日も私にとっては当然なことについて、夫があり得ないような解釈をした場面があった。理性で制御はしたつもりだが、かなり圧のある態度を私はとったと思う。それで、夫はきっと嫌な気分だったと思う。
この後どうなったか・・・。
夫はどこまでも穏やかな性格というのでもないので、私の予想では、「逆襲」があるのではないかと、ある程度身構えをした。ところが、夫は、ぐっと呑み込んで、数分後は何もなかったかのように、別の会話に応じたのだ。私はとても夫に感謝している。もし、私の取った態度に、夫が反応していたら、今日の私どもの関係は、きっと荒れたものになっていただろう。しかし、夫の勇敢なる「呑み込み」のおかげで、穏やかな日常が手にできている。いや、私が反省している分、前よりも私は夫のことを気にして生活するようになった。
さて、先ほどの青木氏の記事の続きは、こうである。
相手の良いところが一つ見つかることが突破口となり、関係性が変わる。あげつらった「問題」に対しては何もしていないのに「解決」が手に入ったわけだ。同様のエピソードを数々経験していく中で、問題と解決は必ずしも関係していないという画期的な着想がスティーブの中で生まれた。そして問題を深く分析して原因をつきとめてから変化を起こすという問題解決(problem solving)論理とは違ったプロセスを彼らは模索し、解決構築(solution building)という手法に行き着いた。つまり問題の原因を追究せずに、問題を解決する方向や解決されたとしたらどうなっているかの未来イメージを探求すること、そして既にその方向に向かっている要素(リソース)を探すこと、その方向に向けてすぐに実行可能な小さな行動(スモールステップ)を特定していく、という解決に直接関係のある要素だけに焦点をあてるコミュニケーションの流れをつくるのである。何が悪いのかをつきとめるという原因追究プロセスをはぶくことで、困難要因に意識を向けることから派生するネガティブな感情を引き出さずに済み、肯定的未来についてのイメージを明らかにしたり、そこに向かうための小さな一歩を具体的にすることで望む結果が得られそうだという希望の感覚が増し、結果として解決行動を起こすまでの時間が大幅に短縮される。
夫は、SFを学んではいないけれど、「solution building」な関わりを、私にしてくれたのだと思う。先ほど、「夫は呑み込んだ」と表現したが、実は呑み込んだのではなく、自然な形で、そのときの気持ちを脇に置いたのではないかという気がしてきた。青木氏の記事の「問題の原因を追究せずに、問題を解決する方向や解決されたとしたらどうなっているかの未来イメージを探求する」というのを、夫は私の目の前で、体現してくれたのではないだろうか。
毎日は色々なことが起こる。夫婦の関係の中にも変化が常に起きている。その変化の中の、良くないところを取り上げるのではなく、良いところを取り上げる。相手の中のよいところに目をつけて増幅していく。相手を待つのではなく、そういう見方を自分からしていく。まさにそこに、快い時の広がりがあるのではないだろうか。
どうしたら自分からできるか・・・を、さらに探求してゆきたい。
渡辺さんへ
こんにちは。夫婦って面白いなあって思いながら、いっぱい書きたい気持ちが湧いてしまいました(笑)
その1
やっぱり照ちゃんもそんな気分になることがあるんだ!と白状してもらったおかげで。プロコーチでも人間なんだなあと安心させてもらいました。ありがとうございます😊
その2
夫婦の間でのSF的関係って難しいっていう側面もあるけれど、案外普段の中で使ってるのかなあって気付かされました。わが家だって怪しい雰囲気の時に楽しかった昔の話や美味しい料理が助けてくれることもよくあります。これでいいんだよね😅
その3
照ちゃんはよく青木先生の言葉を引用されますています。それは青木先生への尊敬はもちろんですが、単に結果だけを求めるのではなく、「人の間に生まれる心の動きをどのように導き出すか」を大切にされているのだと思いました。やはりプロなんだなあ。
その4
青木さんの記事から開発段階でのスティーブ夫妻の会話も想像してみました。案外、自分達の夫婦喧嘩からの仲直りも役に立っていたのかもしれないですね(ここだけの話☺️)
その5
旦那さんとの生活、うーんと楽しんでみてくださーい!ハハハ!
おっくん
おっくん、いつもお心を今ここに置いて、ブログを読んでくださり、コメントくださり、
とてもありがたいです。
その1
「やっぱり照ちゃんもそんな気分になることがあるんだ!」。ありありです。いつもです。そうなる風に見えていないとすれば、・・・?!
その2
おっくん家では、「楽しかった昔の話」や「美味しい料理」から、好い御出汁がでて、ご夫妻の笑顔へとつながるんですね。
その3
青木さんのなさる表現は、難しいことをすっきりとした表現で表してもらえるので、私の理解を大きく広げてくださいます。
その4
開発段階でのスティーブ夫妻の会話・・・確かに、こういうことからの叡智も開発内容関わっているかもね。おっ君の想像力は、どこまでもたくましい。
その5
はーい、そうさせていただきます。(笑)
おっくん、お誕生日おめでとうございました。
あいよ。サンキューでーす!