快く生きる日々 No.7 渡辺照子

物にOKメッセージを伝える

去年の11月に、ある組織での研修講師としての仕事を終え、建物から出たところで、呼び止められ振り向くと、なんと高校の同級生が目の前に。とても久しぶりだ。私たちは寅年生まれ。あとちょっとで還暦。彼女から数年前に、「私たち結婚しました」のハガキが届いたときも驚きと喜びがこみ上げたのですが、この時もしかり。彼女は少し前から、この組織でパート職員として働いているところをばったり。話しの中で「最近、こうたろうを迎え入れて、もうかわいくて・・・。」と語る彼女。「?」「赤ちゃん生まれたの? それとも養子縁組したの?」と私は心の中で。話してみてわかったことは、ラボットという「LOVEをはぐくむ家族型ロボット」を購入し、家族の一員として共に暮らしているとのことで、それはもう幸福そうな表情で、楽しい日々を語ってくれた。彼女の中で、「こうたろう」は完全に人格化していた。

そして、12月年末のとある日、家族経営のスキー宿の女将をしている姉が、「ここんところ寒いでしょう。毎日ボイラーと対話しながら暮らしているんだよね。」と。「は? ボイラーって、誰? もしかしてロボット?」。

ボイラーは、水を加熱する装置。今使用している機械は、父の代から使っているもので結構古い。ボイラーが作動しなくなると、水道管が凍り、お湯が出なくなったり、管が破裂して水が漏れたりする。そうなったらとても大変なことになるわけです。ここのところ、部品の調達が難しいらしく、壊れても修理が効かないという話もある中、春を迎えるまで、ボイラーに壊れてもらうわけにはいかないという姉の思いがあるようだ。ボイラーは水を温める機械だが、姉はそのボイラーを温めるために、ボイラー室に毎晩ストーブをつけ、毎朝・毎晩ボイラーのところに通っては語り掛けるのだそうだ。朝には「おはよう、今日も一日頑張ろうね~。」、晩には「今日も壊れずに一日頑張ってくれて、ありがとう!」と。

はじめは、物にOKセージを伝える姉のことを、何となく稀だと捉えていたが、よく思い返してみると、ソリューションフォーカスのセミナーで、販売しているガス器具にOKメッセージを言うことで、営業成績が上がったという実践発表を聞いたことがあったな。日曜の朝は、必ず愛車とドライブする。エンジン音や体に伝わってくる振動を感じながら車と対話するのが、こよなく楽しいと言っていたHさん。陽の入る部屋で、いつも釣り道具の手入れをしていた祖父。愛でるように釣竿を長い時間扱ってるのはすごいなあと子どもながらに思っていた。そういえば自分も、車の買い替えで、その車最後の日に洗車を済ませ、吾子達と一列に並んで、❝車さん、今までありがとね。❞ってお礼を言ったっけ。

「OKメッセージ」は青木安輝さんの造語だそうだ。こう用語解説されている。「相手や状況を肯定するメッセージ。SFAの『コンプリメント』とほぼ同義だが、直接言語で伝えられるものだけでなく、非言語メッセージも含むより広範囲の概念。日常生活の中では、『ほめる』等の意図的に発せられた言動だけでなく、気持ちの良い笑顔で挨拶をしてもらった、メールの返信がすぐにもらえた等の行為が自分のことを大事に思っていてくれる証としての『OKメッセージ』と受け取られる等、相手に『自分のことを大切に扱ってもらえた』と感じさせる行為は、意図的であれ無意識的であれ『OKメッセージ』の範疇に入ると考えられる。」と。

改めて、姉に電話して聞いてみた。「ボイラーに語り掛ける良さって何があるの?」。姉の回答は、「ボイラーは、厳しい冬を共に乗り越える同志なんだよね。ひとりじゃない、共に闘ってくれる仲間がいると思えて、ありがたくて、感謝の気持ちが湧いてくるんだよ。同時に、今、日々をこうして暮らせることは、周りの人やすべてのおかげ様である。だからこのありがたい気持ちからくる思いやエネルギーを、今度は誰かのために使いたいなあって思うんだよね。」と、優しいけれど力強い声。

私が思う、物にOKメッセージを伝える良さは、OKメッセージを伝える自分がごきげんになれるところ。OKメッセージのバリエーションは豊富。自分からどのようなOKメッセージを発することができるのか色々これからも見つけていきたい。人だけでなく周りの物や事象のすべてを対象にして、自ら発動できるOKメッセージをあれこれ探求することを楽しんでいきたい。そうやって豊かな暮らしを創っていきたい。

快く生きる日々 No.7 渡辺照子” に対して12件のコメントがあります。

  1. 笠木理恵 より:

    渡辺コーチ、青木さん、ナイスなタイミングでブログ投稿をありがとうございます。

    なぜ、私にとってナイスなタイミングかというと‥。

    実は、先月中旬に、同居中の娘が結婚のため引っ越しをし、先月末には、夫が退職を迎え、単身赴任先から戻ってくることとなり、同居メンバーが入れ替え。バタバタと慌ただしい日々。
    それに伴って、夫の日用品が自宅の一室を占拠しており、処分しようかと思案中でおりました。
    そこへもってきて、同居している息子が、突然自活を始めると言い出し、新生活のため、夫の日用品をゴソゴソとあさり、段ボールに詰めている状態です(笑)

    そんなこんなで、夫の使っていた物たちが、また別の場所で活躍することになりました。👏

    まだまだ現役の物たち!
    「これまでありがとう!そして、これからも息子のところで頑張ってね~、よろしくね~!」
    息子が転居するときには、そんなOKメッセージを物たちに伝えようと思います。

    ということで、物へのOKメッセージをつたえるチャンスをいただきました!
    ありがとうございました。

    1. 渡辺照子 より:

      笠木さん、コメントをどうもありがとうございました。

      ご主人様の元で活躍していた日用品たちが、今度は
      息子さんの元で活躍してくれるんですね。

      「物へのOKメッセージをつたえるチャンスをいただきました!」という
      プラスの眼鏡目線が、素敵ですし嬉しいです。

      お嬢様のご結婚、ご主人様がご赴任先から戻られ、息子さんがお一人暮らしを
      お始めになる。ご家族のために心を尽くして一生懸命関わりなさる
      笠木んさんのお姿が想像されます。
      どうぞ、笠木さんの心身を大切になさりながら、変化の時を
      お進みくださいませ。

  2. 柴田 篤 より:

     「物理」が苦手でした。ついでに「数学」も。

     立春を過ぎ、寒いけど、暦は春に向かっております。今は雪を白く照らす光も、やがて雪を溶かし、花の芽を励まし、開かせることでしょう。

     やがて、夏。ビルの窓に、反射する光。道路のアスファルトを溶かすような、照り返し。

     その光や熱は、どこから? 太陽から、届いているのかな。

     ボイラーやストーブを動かすのは、地球が貯めた石油、石炭、天然ガス。あるいは電気。その元はやはり石炭、ガス、ウラン。はたまた太陽光か、地球を巡る風なのか。物理に疎い私には、分かりませんけど。

     ボイラーに向かって放つ声という音はこだまとなり、眼差しという光はボイラーから反射して、自分に降り注ぐのかもしれません。ロボットなら、撫でたり、香水を振りかけたり。それもこちらに、戻ってくる。

     夏の陽射しの、照り返しのように。

     

    1. 渡辺照子 より:

      柴田さん、コメントをどうもありがとうございます。

      柴田さん、私も物理と数学は時ではなくて、学生の時は、理性で何とか勉強していた
      感じでした。

      さて、柴田さんの文章はまるで詩人。
      それで意味をつかもうと読んで味わっていると、
      この世の森羅万象には、良く作用するときとそうでないときがあって、
      それが巡っていることに気づきました。

      寒さが、すべてを凍てつかせるとき、
      たくさん降った雪の重さが、建物を破壊しそうになる時、
      凍や雪は、まるで「敵」のように思える。同時に太陽は「味方」や「恋人」のように思える。けれど、季節が巡れば、私たちはかき氷を好んで食べたり、
      「冷」や「涼」を人工的にこしらえてでも引き寄せようとする。

      柴田さんの文章を拝読し、肩の力が緩み、
      森羅万象を俯瞰した眼差しで観ることができるような感覚を得ました。

      「ボイラーに向かって放つ声という音はこだまとなり、眼差しという光はボイラーから反射して、自分に降り注ぐのかもしれません。ロボットなら、撫でたり、香水を振りかけたり。それもこちらに、戻ってくる。」

      ↑上記のところを読みながら、私の表情はいつしかほころんでいました。

      柴田さんの目線・視点が、私に中の拡がりや深さに繋がります。感謝しています。

  3. おっくん より:

    渡辺さんへ

     昔むかし、ある灯油配達人の中に心と体が住んでいました。いつも力を合わせてお客様に喜んでもらいたいと一生懸命は働いていたとさ。
    あれっ、こんな会話が聞こえてきたよ。

    心)体よ、今週もよく頑張ってくれた。ご褒美に大好きな温泉に入れてあげよう。よーく温めてほぐしておくれよ。

    体)心遣いありがとう。お互いよく頑張ったなあ。あー固まった筋肉が伸びていくなあ。こうやって手のひらから足先までグーっと伸ばせば気持ちいいんだよ。

    心)そうか、そんなに喜んでくれるか。あんたにはいつも無理ばかり言ってるもんなあ。存分に浸かってすり傷もひび割れも治るといいね。

    体)いや、なんだか元気が出てきたよ。温泉の効能もだけどあんたのまごころが嬉しいんだ。なあ、また来週も頑張るからさあ、一緒にお客様の笑顔を見に行こうぜ。

    心)ああそうだね。君がいてくれてうれしいよ。君がいてくれるおかげでなんだか生きてることが楽しい気がする。これからもよろしく頼むね。

     そう言いながら心と体はずーっと楽しく暮らしましたとさ。おしまい。

    LOVOTや渡辺さんのお姉さんには色々教えられます。やはりOKメッセージって人も物も幸せになるんですね。
    ありがとうございました。

    1. おっくん より:

      変なコメントですいません。補足です。
      言葉を発しない「物」の代表として自分自身の身体が素直に思い浮かびました。
      物と発信者の間にこんなやりとりがあるんじゃないかとコラムを読んで想像できました😊

      1. 渡辺照子 より:

        おっくん、コメントをどうもありがとうございます。
        おっくんのコメント、全く変ではないです。
        むしろとてもよく理解できます。というか、私も思っていたことを
        言葉にしていただいた感じがします。

        私は、今から5年ほど前に、体を壊してしまったことがありました。
        当時の私は、すべてのことを「気合と根性でやればどんな状況でも
        超えることができる。」と思っていました。なので、自分の体の声を
        聞き取らず、酷使していたので、壊れてしまったのだと思っています。

        自分の体の声を聞こうとしなかった時の私は、自分の体をいわゆる
        「物扱い」していたように思えます。
        おっくんの表現でいうところの、
        「言葉を発しない『物』」として捉えていました。

        今は、そのことを申し訳なかったと感じて、
        体の声を聞き取るようにしています。

        人であろうとものであろうと隔てることなくOK
        メッセージを伝えられる自分であったなら、5年前の私の出来事は
        起こらなかったはずだ思います。

        おっくんは、既にそのことをわかっていらっしゃるから、
        おっくんという存在の主として、バランス感を備えて素敵に
        暮らしていらっしゃるんだなと思えます。

        おっくんの心と体は、これからもずーっと楽しく暮らしましたとさ。

        1. おっくん より:

           返信を読んでうまく受け止めていただいたこと、ホッと一安心しております。
           そう言えばもうすぐお誕生日ですね。ようこそ還暦の世界へ。現在過去未来が共存してとても居心地良く感じると思いますよ♪ようこそようこそ(^^)

          1. 渡辺照子 より:

            おっくん、コメントをどうもありがとうございます。
            誕生日を覚えていてくださるって、嬉しいものですね。
            2023年の今頃に、還暦の世界に突入します。

            「現在過去未来が共存してとても居心地良く感じる」
            という未来を楽しみにいたします。
            肯定的未来をご示唆いただくことができ嬉しいです☺

  4. 小畑怜美 より:

    今回も、読後感の心地よさを感じています^^

    私は、ふと、未返信/未読になっているメールに対してOKメッセージを出してみたくなりました。「はるばるメッセージを届けてくれてありがとう。おかげで毎日いろんな方と繋がることができているよ」として、メールに触れてみたくなりました。億劫になっているメールを開けやすくなります(笑)メールを運用するためのプロバイダーや通信の基地局、internet exchangeの保守運用の方々にも感謝ですね。

    私は 少し気分が凹んだときや緊張した状態になっている時に、こちらのWebサイトへ訪問しブログにお世話になりますが、『SF実践者の”ザ・リアル”』掲示板?スペースに超OKメッセージを。

    1. 青木安輝 より:

      小畑さん、「SF実践者の”ザ・リアル”」に”超”OKメッセージをありがとうございます。こちらで一息つくことがあると聴いて主催者としては大変嬉しく思います♪
      僕も渡辺さんのこのブログを読んだら、何にでも「ありがとう」と言ってみたくなりました。その瞬間に体のどこかがふと緩む(和む?)感じがありますね。

      1. 渡辺照子 より:

        怜美さん、コメントをどうもありがとうございます。
        「少し気分が凹んだときや緊張した状態になっている時に」に
        「SF実践者の”ザ・リアル”」を訪ねてくださるのですね。
        そういう風に日常で扱っていただいていることが、とても嬉しいです。

        未返信や未読のメールにOKメッセージを送って、億劫になっているメールが
        開けやすくなると記されていたところが思いに留まりました。

        確かに、メールが未返信や未読になっているときには、メールそのものや
        相手に意識があるというより、未返信や未読にしている自分の方に
        なんらかの理由をつけている気がします。メールにOKメッセージを
        伝えて、いったん心を通わせると、自分の意識は自分ではなく相手(未読・未返信のメール)に移行する感じがしますね。だから、❝読もう❞❝送り主に返信しよう❞
        っていう気持ちになるのかなと思いました。

        怜美さんの「超OKメッセージ」を真筆者の皆さんと共に受け止めさせていただき、
        これからも楽しんで書かせていただこうと思いました。

柴田 篤 へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA