ゲスト投稿記事No.2 豊村博明さん

父と娘の奮戦記 ~父はいつもあなたの味方だよ~

執筆者紹介:豊村博明さんは昭和シェル石油から石油販売会社に管理部長として出向されていた時に、体育会系のトップダウン体質の組織にSF的な要素をブレンドさせる試みを成功させ、その顛末を2016年の”SF inside” Dayにて「体育会系SFの組織作り」というタイトルで発表してくださいました。そのユーモラスな語り口をご記憶の方も多いと思います。その後退職され、現在は福祉施設に勤務する中でもSFを活用して人が活かし合う組織文化を創ることに貢献されています。

父と娘の奮戦記 ~父はいつもあなたの味方だよ~

「お前、今の態度なんや。ふざけんな、ボケ!」
17歳の娘は大泣きし、翌日から私への無視攻撃が始まった。

「おはよう。」「・・・・・」

「おやすみ。」「・・・・・」

「大学、どこ受けるのん?」「・・・・お母さんに聞いたらいいやん。」

その数年後、私と妻は広島の田舎に転居し、娘は京都で一人暮らしが始まった。
娘が20歳になって、私に娘から1通の手紙が届いた。

「お父さんとお母さんのお陰で、K子は成人になりました。これまで育ててくれてありがとう。」
・・・『どういう風の吹き回しや?母親からの入れ知恵か??』とひねくれ根性で思った。

22歳になって、娘からラインが頻繁に届くようになった。
「就職活動してるけど、どんな会社が良い会社?面接ではどんな風に答えたら良い?私はまだ自分のやりたいことが分からない・・・・・」
「K子がここやったら自分が成長できそうと思える会社かどうかかな。たった30分の面接でお互い分かりあえる訳ないと思うし。社会に出たことないのに、やりたいことなんてわからんやろ。肩ひじ張らず、自然体で臨んだ方が良いよ。それと、もし不合格でも、K子の人格が否定されたんとちゃうから。単にその会社とは縁がなかっただけやからね。」

こんなやりとりを何回か続けながら、本命は落ち、何とかY社に内定した後、また1通の手紙が来た。

「私の就活のとき、たくさんの相談に乗ってくれてありがとう。お父さんの言葉はいつも温かくてとても勇気をもらっていたよ。ありがとう。」

あれから2年、またまた娘から今度はメールが来た。

「もう今の仕事いやや。TELでお客さんの欲しがっていないものをいきなりセールスするのはつらいし、私は人が喜んでもらえるような仕事をしたい。これ甘えだと分かってるけど、どうしたら良いの?」
「そりゃそうやろ。K子がそう思うの無理ないよ。ただ、今は心のエネルギーが低下しているから、もう少し時間をかけて自分とゆっくり向き合ってみたらどう?」

数日後、またメールが来た。

「私に寄り添ってくれてありがとう。・・・・・やっぱり私は、もっと分かりやすく人の役に立つ仕事がしたい。違う業界、職種を研究してメリットデメリットを比べて納得ができたら転職しようと思う。だからそれまでは今の仕事を続けるよ。」
「K子の考え方を全面的にサポートします。自分の考えに正直に思い切ってやりなさい。いざとなったらいつでもこちらに帰ってきて良いからね。」

娘が自分の考えを持ってしっかり歩きだしてくれたことが何よりも嬉しかった。

「人(父と娘)は(お互い)肯定された時に変化の余裕を持つ」は本当だった!

ゲスト投稿記事No.2 豊村博明さん” に対して8件のコメントがあります。

  1. きたはたりょうこ より:

    素敵な父娘のお話に、とても温かい気持ちになりました。
    現在、私の父は70代ですが、いまだに父には認めてもらえていない気がして、距離を感じることや落ち込むことがあります。。
    父への寄り添い方や肯定する姿勢をもって、私も変化を呼び込みたいと思います。豊村さん、ありがとうございます。

  2. 豊村博明 より:

    きたはたりょうこ様

    早速のコメントありがとうございました。
    私は今、福祉施設で事務のアルバイトをしていますが、事務所のとなりの介護棟ではお年寄りの方が大勢いらっしゃって、そのうちの数人の方はいつも娘さんや息子さんから気持ちが離れなくて、「家に帰る~。帰る~。」と言って職員の方も困りながらも、大変つらい思いをすることがあります。
    それをそばで見ていた時に、「自分はこれからもっと年老いても、絶対に子離れしよう。」と思いました。私も娘は可愛いですが、お互いの将来を考えると、
    これからはある意味、一定の距離感をもって過ごすのが良いのではと勝手に思っています。
    お父様も・・・・・・・???
    私はまだ63歳ですが、今、家内と一緒に終活してるんですよ。(笑)

    1. きたはたりょうこ より:

      豊村様

      こちらこそありがとうございます。
      一定の距離感…子離れも、親離れも、たしかに必要ですね。
      もっと信頼して関わることで、ほどよい距離感を築いていきたいです。…父がどう感じているかはさておいて(笑)

      63歳でいらっしゃる今、すでに終活なさっているのですね!
      前向きな印象を受けたと同時に、
      お嬢様はそんなご両親のことを大好きで、尊敬されているのだろうなあと
      失礼ながら勝手に想像してしまいました。
      (一方的な妄想、お許しくださいませ。)

  3. おっくん より:

    豊村さんへ

     ご無沙汰しております。
     なんだか大河ドラマダイジェスト版の台本みたいで楽しいですね。(見たことないけど)
     セリフだけの文章だからこそ、読者それぞれに父娘の心の情景を思い浮かべることができるんでしょうね。
     娘との向き合い方に不器用ながらも愛情たっぷりに支え見守り続ける父と自分の進む道に葛藤する中で両親の思いを感じながら成長していく娘の姿は羨ましいのひと言です。
     僕は亡くなった親父とこんな風に接することができなかったけど、今の自分を外から見てみると「親父に似てるなあ」と思うと、自分の中に親父がいるようで嬉しくも思うこともあるんですよ。

     どんな職業でも人の役に立っていることは間違いないのですが、コラムの中で娘さん曰く、「やっぱり私は、もっと分かりやすく人の役に立つ仕事がしたい。」という気持ちは、豊村さんの今の福祉施設勤務にも繋がるところがあるように思いました。やっぱ同じDNAが流れているんでしょうね!

    「K子抄」
     あなたのその優しさは
      どこから来たのか
     あなたのその瞳の向こうには
       どんな世界が見えているのか
     未来がたとえ暗闇に見えても
       なにも心配することはない
     あなたの正義はいつも潔く
      あなたはいつも
       私といっしょなのだから
                 

    追伸
    SNSというツールがあって良かったですね。時代でコミュニケーションの取り方も変わっていくものなんですね。

  4. 豊村博明 より:

    おっくんさん
    ご無沙汰しておりますが、時々ZOOMでお顔、拝見しております。
    早速のコメントどうもありがとうございました。
    うちの娘はとても要領の良いところがあって、父親と母親に話す内容や相談することをちゃんと使い分けているようです(笑)
    私も自分の父親とはあまりよく語り合った記憶は無いのですが、おっくんさんのおっしゃるとおり、どこか小さい時の経験やその時に親に教えられたことが記憶に焼き付いていて、無意識のうちに自分の子供に同じようなことを言っている自分がいるのかも知れません。DNAって不思議ですよね。隔世遺伝することもありますしね。こんなところは我々両親には無いと思っていたら、おじいちゃんの血を引いていたりとか・・・・・
    おっくんさんの体の中にもお父様の血が脈々と流れていらっしゃるんですね。
    今回、おっくんさんから頂いたコメントをきっかけに、私もすでに他界してしまった両親
    のことを思い起こしてみる良い機会になりました。ありがとうございました。

    1. おっくん より:

      人生の先輩として豊村さんの背中を見ていて良いですか。今後ともよろしくお願いいたします。

  5. 飯塚有由美 より:

    豊村さん、お久しぶりです
    SF実践コースから、早数年。。
    時が経つのは早いものです。
    今では3児の母となり、近い未来、きっと同じようなことが起こるんだろうなと
    考えながら、読ませていただきました。
    またいつかどこかでお会いできるのを楽しみにしています!
    ほほえましいブログの投稿、心がホッとしました。
    ありがとうございます。

  6. 豊村 博明 より:

    飯塚さん

    お返事が大変遅くなり、申し訳ございませんでした。
    SF実践コース、懐かしいですね。
    え~。もう3児のお母さんになられているんですね。母は強し!
    これからのお子さんの日々の成長が楽しみですね。
    3人もいらっしゃったら、絶対バラエティーな家族ができますよ(笑)
    「この子、一体誰の血をひいているんだろう?」って思うこともたくさんありますけど。
    私もいつかお目にかかれることを楽しみにしています。
    コメント、ありがとうございました。

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