諏訪太郎の日々の気づきシェアリング No.41
「えっ、本当にやるんですか?」
~諦めていた部下が、未来を語り始めた日~
「会社には期待していません。
何もやりたくないんです」
本社での研修の帰り道。
同じ電車に乗っていた部下が、
ポツリとそう言いました。
怒ってるわけでもない。
不満をぶつけてるわけでもない。
ただ、感情がすっかり抜け落ちたような、
静かな声でした。
私は思わず
「え、前の上司に、そんな扱いを受けていたの……
それはやる気もなくなるよな」
と言葉が出ました。
話を聞いていくうちに、見えてきたんです。
前の職場で、
彼は長いあいだ否定され続けていたこと。
「それ、前に失敗してるよね」
「そんなの無理に決まってる」
年末年始も働いて、それでも「当たり前でしょ」
一生懸命やっても評価されない。
それどころか、評価を下げられ、ボーナスまで削られる。
そんな経験が積み重なって、
「どうせ何をしても無駄だ」という感覚が、
彼の中には深く染みついていました。
あなたの職場にも、いませんか?
過去に否定され続けて、
もう何も言わなくなってしまった部下。
やる気がないんじゃないんです。
ただ、自分を守るために黙っているだけです。
職場では、
つい「過去」を基準に話してしまいますよね。
前例は?実績は?以前こんな失敗があって……。
もちろん、それも大事な情報です。
でも、そればかりを突きつけられると、
人は次第に口を閉ざしていきます。
過去を基準に評価され続けると、
人は「変わろうとすること」
そのものを諦めてしまうんです。
時間の向きを、逆にしてみる
過去から今を見るんじゃなくて、
未来から今を見ることが大切だ。
だから私は、こう考えるようにしています。
未来に「こうなっていたい」
という姿が先にあれば、
今、目の前で起きている失敗は、
ただの失敗じゃなくなります。
それは、
未来へ向かう途中にある
必要な一歩になるんです。
未来が見えていれば、
「うまくいかなかった」も、
「じゃあ、次はどうする?」に変わります。
逆に言えば、本当の失敗って、
うまくいかなかったことじゃないと思うんです。
過去を恐れて、「どうせ無駄だ」と何もしないこと。
それが、本当の失敗なんじゃないでしょうか。
とはいえ、頭で分かっても、
すぐには切り替えられません。
特に、長く否定されてきた人ほど、
難しいです。
紙1枚の日報が、意識を変えていく
だから私は、日報を使って、
少しずつ部下の意識を変えていっています。
使うのは、紙1枚の日報。
書くのは、たった2つだけです。
① 今日、できたこと
② さらによくするには?(スモールステップ)
反省欄は、あえて作りません。
枠が決まっているから、
思考は自然と「次の一歩」に向かうんです。
最初は「②さらによくするには?」
が書けない部下もいます。
そんな時は
「どんな小さいことでも大丈夫ですよ。
例えば、挨拶をするとか」と、
簡単な例を出してあげます。
私がこの日報で大切にしているのは、
コメントの返し方です。
部下が「こんなことがありました」と
事実だけを書いてきたら、
「報告してくれてありがとうございます」と
まず認めます。
その上で「どうしたらいいと思いますか?」と
返してみます。
返答が来たら「じゃあ、やってみますか」とか
「いいですね。少し、
こんな感じのアレンジも付けてやってみますか」と、
一緒に形にしていきます。
このやりとりの中で、
部下の提案は少しずつ変わっていきます。
最初:「こんなことがあります」(事実を伝えるだけ)
次に:「こうしたいんですけど」(提案してくるようになる)
最後:「こうしておきました」(事後報告になる)
事実とスモールステップに対して、
丁寧にコメントを返していく。
ただ、それだけで、部下は変わっていくんです。
「えっ、本当にやるんですか?」
「何もやりたくない」と言っていた彼にも、
変化が訪れました。
ある日、話の流れで彼がポロっと言ったんです。
「そういえば、ここに棚をつけたら、
もっと便利になりますよね」
本当にそれをやりたいという感じではなく、
ただ話していて気づいたので口にした、
という雰囲気でした。
私はすぐに
「やりましょう! 見積もり、お願いできますか?」
って任せました。
すると、彼は逆にビックリしていました。
「えっ、本当にやるんですか?」
彼にとって、
自分の提案が即採用されるなんて、
想像もしていなかったんでしょうね。
数日後、「これ、すごく便利!」
って周囲から感謝された彼の顔には、
久しぶりに誇らしげな表情が浮かんでいました。
今でも彼は、ときどき言います。
「何をしても無駄だと思ってます」って。
それでも、
以前みたいに過去ばかり見てるんじゃなくて。
「こうしたら、もう少し良くなるかもしれない」
そんな未来の話を、
少しずつしてくれるようになったんです。
上司が、時間の向きを変えてあげるだけ
人は、いつからでも変われます。
上司が、ちょっと時間の向きを
変えてあげるだけでいいんです。
過去を見るのをやめたとき、
部下は未来を語り始めます。
リーダーの仕事は、答えを出すことじゃなくて、
一緒に未来の地図を描くこと。
そして、その途中にある一歩一歩を、
「いいですね」って一緒に眺めることです。
今日も、あの紙1枚が、
誰かの未来へ向かう一歩を静かに支えている。
私は、そう信じています。


諏訪先生へ
おはようございます。
今回は、「言葉の持つ力」について改めてすごいなあって
感じています。
「やりましょう! 見積もり、お願いできますか?」という
諏訪さんのひとことは、紙一枚の日報をきっかけにしてプラスの眼鏡や
OKメッセージをはじめととするソリューションフォーカスのすべてが
詰まっていたんだろうなって思います。
っていうかしかしそれは理論的な側面であって、その時諏訪さんから
出てきたそのひとことは、諏訪さんそのものであり、彼にとっては
深く慈愛に満ちた言葉に感じられたことでしょう。
諏訪さんの日々の姿に信頼を寄せる彼であったからこそ発せられた
「会社には期待していません」の言葉が、いつしか笑顔に変わっていった
ことは彼にとってとても意味のあることなんだろうなって。
小さな積み重ねを怠らず、小さな変化に敏感に反応されている諏訪さんと
その職場から今年も目が離せませんね。諏訪さんの周りにもきっと近いうちに
第二、第三のソリューショニストが登場されることも期待しております。
今年一年間もよろしくお願いいたします。 おっくん
おっくん、こんにちは!
素敵なコメントを、いつもありがとうございます!
おっくんに言ってもらったことで、「やりましょう! 見積もり、お願いできますか?」という言葉には、実は、色々な要素が集まってできたんだなと実感しました。
日々の関係性があるから、この言葉が聞けた。
日々の関係性があるから、素直に言葉がでた。
日々の関係性があるから、見積もりをすぐに取ってくれた。
SFは、1日にしてならず。
日々の関わりがやはり大切なんですね!
改めて、気づかせていただきありがとうございました!
また、
遅くなりましたが、
今年も、よろしくお願いいたします🙇
諏訪さん
またまた素敵なブログをありがとうございます。
ブログを拝読しながら、長いサラリーマン生活の中で、私と上司の関係性が険悪に壊れていた時期の頃を思い出しました。一生懸命に自分の考えを伝えようとしても、「お前、なぐるぞ。」って返ってきたかなあ~。今ではもう良い思い出になっていますが、その時自分が決めたことがあります。「もう言われたことだけしよう。」「もう聞かれたことだけに答えよう。」そうか、その時の私は自分を守る為に自分の殻に閉じこもろうとしていたんだなあって理解できました。人間って自分を守ろうとする時はまる虫みたいに縮こまって行動にブレーキをかけてしまうんですよね。そうなると残念ながら成長もストップしてしまいますけど。
10年以上前に出たSF研修の中で青木先生がおっしゃっていた言葉も思い出しました。
「自分が新入社員の時、若気の至りで社長にどんどん提案したことがあったけど、その時の社長は何と自分の提案をほとんど全部その通り受け入れてくれて、こんな新入社員の言うことを全部聞いてくれるなんて驚きました。」この社長もすごいなあ~。
「自分の責任において、部下の可能性を信じてその通りやらせてみる。」上司の度量が試される場面だと思います。
①過去から今を見るんじゃなくて、
未来から今を見ることが大切だ。
②リーダーの仕事は、答えを出すことじゃなくて、
一緒に未来の地図を描くこと。
こんな想いで自分に関わってくれる諏訪さんのような上司に巡り合えた彼の今後が楽しみです!
「理論はシンプルだけど実践はアートね。」
正にアーティスト諏訪さんの一面を垣間見ることが出来ました。ありがとうございます。
豊村さん、こんにちは!
貴重な実体験をありがとうございます。
まさに、自分の意見をどんどん取り入れてくれた度量の深い社長さんと、自分の意見を全く取り入れてくれない上司という、両極端の上司を経験されているからこそ、その違いが分かる豊村さんの体験を聞かせていただき、ありがとうございます。
この経験を聞いていても、やはり、部下が仕事を楽しめるか、楽しめないかは、上司次第なんだなと改めて思いました。
そして、未来から見る(フーチャーパーフェクト)、それに向かって1つづつ進んでいく(スモールステップ)、そして、上司がその1つ1つに対して承認する(okメッセージ)。
SFの基本的なステップを踏むだけで、マネジメントってとても上手くいくんだなと、私も新ためて感じることが出来ました!
また、豊村さんのご経験も、色々とお聞かせください!