諏訪太郎の日々の気づきシェアリング No.39
「フューチャー・パーフェクト」を鮮明に描くことが人生の近道になる
私が部下と面談をする際に大切にしているのがフィーチャーパーフェクトです。
「全てがうまくいったとしたら、どんな状態になっていますか?」
「それを知るには何が見えたり、聞こえたり、感じられたりしますか?」
と、具体的に質問を重ねていきます。
なぜなら、この「フューチャー・パーフェクト」がはっきりすればするほど、私たちの「最初の一歩」が具体的になるからです。
しかし、頭の中で漠然と思っている「夢」や「理想」は、往々にして曖昧で、輪郭がぼやけています。特に、自分がまだ経験したことがない世界については、「こうなったらいいな」という希望はあっても、具体的なイメージを描くのは難しいものです。
そのぼんやりとした夢を、まるで高精細なカラー映像のように「鮮明な未来」に変える。そして、その未来に向かうための道筋をはっきりと照らす「羅針盤」を手に入れる。このプロセスこそが、最も大切なんじゃないかと思うわけです。
先日、私自身の体験を通じて、この「フューチャー・パーフェクトの鮮明さ」がもたらす効果を、娘から教えてもらいました。今日の話は、小学校3年生の娘とフーチャーパーフェクトについてのお話です。
小3の娘が描いた、JAXA研究者としての「鮮明な未来」
私たち家族は先日、以前から行きたかったJAXA相模原キャンパスの特別公開に参加してきました。
朝から行く予定が、娘の習い事の都合で、到着したのは終了間際の残り2時間。実は、「今年もいけないかな」と諦めかけていたのですが、「行きたい!」という娘の一言で、遅くなってしまいましたが行くことになりました。この限られた時間での体験が、娘の未来に大きな影響を与えることになるとは、その時は思ってもいませんでした。
特別公開では、テレビで見るような第一線で活躍されている研究者の方々が、自らの研究について直接来場者に話をしてくれるという、非常に貴重な機会が設けられていました。娘は、特定の研究者の方に質問をするとその人のカードがもらえるイベントに夢中になり、「どんな研究をしているのですか?」と積極的に話しかけて、熱心に耳を傾けていました。
親としては、「この人たち、普段はこんなに気軽に話しかけられる人じゃないのに」と思いながらも、「こんな日頃できない経験をさせてもらい、娘がさらに宇宙に興味を持ってくれたこと」を心から嬉しく思いました。
しかし、私が最も「来てよかった」と感じたのは、JAXAで研究をされている「学生さんたち」との出会いでした。
相模原キャンパスには、様々な大学から専門分野の研究のために学生さんが来ています。私たちは、その学生さんの一人と30分ほどお話をさせていただきました。どんな大学の人が来ているのか、どんな研究をしているのか、サークル活動を含めた日々の生活はどのようなものか、といった具体的な話を娘と聞いていきました。
元々、薬剤師や薬の研究をしたいと言っていた娘でしたが、「宇宙の研究も面白そう」と、とても興味を持ったようです。特に、自分が好きな研究にトコトン打ち込める話や、楽しそうに研究について語る女性の学生さんの姿を見て、「女の子でも楽しく研究ができるんだ」ということが、より具体的に、自分のこととして深くイメージできたようでした。
そして、学生さんと別れる際の娘の言葉に、私は驚きました。
「私、ここで研究できるように、まずは、相模原高校に行く。そして、都立大に通って、JAXAに研究しにくる、そして、お姉さんと一緒に研究する!」
以前は、ぼんやりと「研究者になりたい」と言っていた娘の夢が、この数十分の体験を通じて、「鮮明なフューチャー・パーフェクト」として具体的に描かれたのです。
この娘の姿を見て、私は確信しました。フューチャー・パーフェクトとは、どれだけ具体的に、リアリティをもって描けるかで、その実現に向けた道筋が開ける。そして、自分のフューチャー・パーフェクトにすでに携わっている人との出会いこそが、その曖昧なイメージを「鮮明なイメージ」に変える、どれだけ貴重な物かということに。
イメージが鮮明になればなるほど、そこにたどり着くための「スモールステップ」が具体的になり、試行錯誤を繰り返すことなく、目標達成への近道となるのです。
フューチャー・パーフェクトの「鮮明さ」が行動を変える
今回の娘の体験が示しているように、曖昧な「未来」からは、曖昧な「最初の一歩」しか生まれません。「なんとなく頑張る」では、努力の方向性も定まらず、いつしかモチベーションが途切れてしまいがちです。
しかし、娘が「相模原高校に行く」と決意したように、具体的で鮮明な未来図が描けると、それに向かうための行動もまた具体的になります。「まずは高校について調べてみよう」「都立大の受験科目はなんだろう」といった、具体的な行動(スモールステップ)をすぐに思いつき、実行に移せるようになります。
では、あなたのフューチャー・パーフェクトを鮮明なものに変えるために、今日から何が出来るでしょうか。その答えは、娘が得た経験、つまり「体験すること」に尽きるのではないでしょうか。
一つは、「フューチャー・パーフェクトに関わる『人』に会いに行く」ことです。理想の状態をすでに実現している人、または、その実現に向かって努力している人の姿や話に触れることで、頭の中でぼんやりとしていた未来が、一気に「リアリティ」を帯びます。「自分にもできるかもしれない」「この未来はリアルに存在する」という確信こそが、行動への大きな原動力となります。
もう一つは、「フューチャー・パーフェクト」を疑似体験できる「環境」に飛び込むことです。今回のJAXAの特別公開のように、その場所の雰囲気、そこで働く人々の熱意などを体感する機会を持つことが重要です。物理的な体験は、頭で考えるよりもはるかに強力に、未来のイメージを鮮明にし、私たちの感情を揺さぶり、「絶対にこうなりたい」という強い動機づけを与えてくれます。
もし、あなたの「フューチャー・パーフェクト」が少しでも曖昧だと感じたら、ぜひ、それを体現している人に会いに行く、あるいは疑似体験できる環境に足を運ぶという具体的な「最初の一歩」を踏み出してみてください。
鮮明になった未来は、あなたの行動を迷いなく加速させ、最短距離で理想へと導く、強力な「未来の羅針盤」になってくれるはずです。
ちなみに、テレビにもよく出演されている研究者の方にも臆することなく、「先生の下で研究します!」と宣言し、「待っていますね!一緒に研究しましょう!」と激励の言葉をもらって得意げになっている娘の姿には、もう将来はJAXAの研究者になる未来しか見えませんでした(笑)

