諏訪太郎の日々の気づきシェアリング No.34

解決しようとするな、まず聞け・・・
元ハラスメント職場で起きた逆転劇

「前任の上司がハラスメントで解雇されました。」

そんな話を異動初日に聞かされたとき、正直、空気がピリつきました。
新しい職場のメンバーたちは、口では何も言いませんでした。
けれども、その沈黙が何よりも雄弁でした。
何を言っても“また同じように無視されるかもしれない”、“傷つけられるかもしれない”という
見えない緊張が漂っていたのです。

私がこの職場に異動になったのは、いわば“火消し役”でした。
いくら実績や経験があったとしても、「信頼」はゼロからのスタート。
いや、むしろマイナスからのスタートでした。

でも、ソリューションフォーカスを学んできた私には、一つだけ確信がありました。
それは「話を聞くこと」が、最初の一歩になるということです。

「ラポールづくり」は、技法ではない。態度だ。

私がやったのは、極めてシンプルなことです。
それは、とにかく話を聞くこと。 

仕事の悩みはもちろん、家族の話、趣味の話、推しの話、ペットの話。
話題はなんだって良いんです。
大切なのは、「あなたの話に興味がある」という態度を持って、丁寧に耳を傾けることでした。

正直、話が長くて、こっちが疲れることもありました。
話を聞いたことで、残業時間も多くなりました。
それでも話を親身に聞き続けました。
なぜなら、相手が「話したい」と思っていることには、必ず意味があるからです。

話の中身の良し悪しより、
「あなたがここにいてくれてよかった」と感じられるような時間を共有する。
それが、私にできる“最初の介入”でした。

変化は、ある日突然やってくる

ある日、いつものように雑談していたら、フッとこんなことを言われました。

「諏訪さんが来て、職場の雰囲気が変わったんです。 
前はみんな“いつ辞めようか”って話ばっかりだったけど、
今は“今週末どこ行く?”みたいな話ばっかり。 
楽しく働けるって、こういうことだったんですね。」

その瞬間、すべてが報われたような気がして、とても嬉しくなりました。

ソリューションフォーカスでは、よく「OKメッセージ」が大切だと言われます。
けれど、言葉だけじゃ伝わらない場面もあるわけです。
OKメッセージが伝わるのは、「聞く」という行為の中にある。
それを、職場の仲間たちが教えてくれたのです。

ハラスメントがあった職場でなくても

今回の職場は、特別な状況でした。
でも、実は、こうした「話を聞いてほしい」というニーズは、どこの職場でもあります。

上司として、何かアドバイスしなきゃ。
部下を成長させるために、フィードバックしなきゃ。
ちゃんと評価しなきゃ。

そう思う気持ちはわかります。
僕もそう思っていました。

でも、もっとも必要だったのは、「聞く」ことでした。 
ただ、黙って、相手の話を受け取ること。 
評価しない。解釈しない。分析しない。

「うん、なるほど」
「それで?」
「それは大変だったね」

 ただそれだけで、人は安心し、力を取り戻していくんだと知りました。

「話を聞くこと」は、最強のソリューションフォーカス

ソリューションフォーカスは、「解決志向」です。
だからといって、「解決」しようと思わなくていい。
むしろ、「解決」ではなく、「安心」が必要なんです。

そしてその安心は、
「話を聞く」というシンプルだけど強力な行為によって育まれるんです

「聞く」ことは、スキルではなく、在り方。
「解決」を急がず、まずはラポールを築くこと。 
それが、チームの再生にとって、どれほど大きな意味を持つかを、
この職場で学びました。

あなたがもし、今、ちょっとギクシャクしているチームを担当しているなら。 
メンバーとの関係がうまくいかずに悩んでいるなら。 
何か“技”を探す前に、試してほしいことがあります。

それは、今日、誰かの話を5分、全力で聞いてみること。
それだけで、世界はほんの少し、変わるかもしれません。

諏訪太郎の日々の気づきシェアリング No.34” に対して3件のコメントがあります。

  1. ナカガワシンイチロウ より:

    まさに一年前の自分がこのような状況でした。そしてやったことは全社員への面談。一対一で、2ヶ月かかりクタクタになりました。外に言えない話が山のように出てきました。おおむね評判は良かったようです。
    その後社内改革案を作るにあたり、全員から意見聴取し、計画案はまとまりましたが、この間わたしから一方的に話すことが多く、社員の話を聴くことがいつの間にか少なくなっていたと感じました。
    ちょっとアタマを切り替え、一年前を思い出し、もう一度違ったやり方で話を聴く時間を作ろうと思いました。

    1. 諏訪 太郎 より:

      ナカガワさん、コメントありがとうございます。

      ナカガワさんもご苦労されたんだろうなと思うと同時に、
      やはり「聞くこと」が大切なんだなと改めて確信することが出来ました。

      きっと、ナカガワさんに話を聞いてもらいたいと思っている部下も多いと思います。
      そんな部下の方々の想いに答えるきっかけになってくれたら、嬉しく思います!

  2. おっくん より:

    諏訪先生へ

     「聞いてもらう」ってことが人の心に大きな安心感をもたらすってことですよね!

     実は昨日、自治会の上部組織の方とお話しする機会があって、「五分だけいいですか?」と切り出して普段考えてることを聞いてもらう時間をいただきました。自分の心の中に「聞いて、聞いて!」っていう気持ちを抑えきれなくなったんですね。
     だから逆の立場ですが、諏訪さんの仰ることが手に取るように感じることができました。

     わが番町自治会も新年度に入って新しいメンバーになりました。私より年配の班長さんばかりですが、彼らの力をうまく引き出せるように「聞くこと」を意識してみたいと思います。
     とても有意義なお話、ありがとうございました。なんだかワクワクしてきたようです。

     諏訪さんも新しい職場で本領発揮のチャンスですね。僕には職場が良くなっていくのが見えるようです、だって諏訪さんがいらっしゃるんだから。
     おっくん

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