ゲスト投稿記事 No.7 小畑怜美さん

スーパー、パーキング、アイム オーケー!

執筆者自己紹介小畑怜美(こばたけ さとみ)です。2回目の投稿になります。「人と人の思いと知恵をつなぐ」をミッションに、コーチングと対話、リーダーシップの学び合いを届けています。東京の山の麓で育児と仕事に目まぐるしい日々を過ごしていますが、産後まもない頃に受講した”SF基本コース”の学びとSFの哲学・知恵に支えられてきました。そんな私の体験エピソードをお届けできたら幸いです。


芽吹きの春、勢いの夏、実りの秋、そして耐える冬、と季節は巡る。あなたは、今、人生のどの季節を過ごしていますか。

二人目の子を出産してから今日まで歩んできた道のりは、予想外のてんこ盛りで、ほろ苦い記憶が多い。けれど、この間には、私を癒し、労り、勇気づけ、知恵をくれた人や出来事があって、それらが、今、私の宝物になっている。私が道端で集めてきたちょっと切ない、でも大切な宝物。これから紹介するのは、そんな私の冬越しのエピソードの2つ目。

西松屋の中心で、助けを叫べなかった日

ある日の午後、子どもたちを連れてスーパーを歩いていると、息子のあんこ君(仮称)が、タンブラーを胸に抱えて私の元へ走ってきた。私は一呼吸おいて「あんこくん、それはお家にあるから、今日は買わないよ。」と伝える。すると、あんこ君、駄々っ子モンスターに変身!彼はタンブラーを脇腹下に隠して床に這いつくばり、全身で抵抗を見せた。ああ…闘いが始まった。

育児書に書かれた言葉がけも虚しく、あんこモンスターの叫び声が店内に響き渡る。レスラーの如く低姿勢に固めた身体はびくともせず、彼の手からタンブラーを取り出すことはできない。この親子合戦の数分間に、私たちの横を数名のお客さんが様々な表情を浮かべて通り過ぎていった。

「誰か助けてください!」

私の”心の中の叫び”は「はぁぁぁぁぁ・・・」という深いため息に変わる。その日は結局、私が無理やりタンブラーを返品して、ジュースでなんとか彼に気を取り直してもらった。

その日の日記にはこの様に書いてある。『自分の中の助けてほしいという小さな声が、周りへの助けてほしい!という悲痛な願いに変わっていく。私たち親子の困っている状況を冷ややかな目で見られることに心が痛み、そんな周囲への嫌悪感も……。自分勝手な話だけど。』

今思うと、待機児童問題と仕事・家事の両立で不安や不満、色々なことを溜め込んで一人よがりになっていた。I’m not OK. You’re not OKという心境。このマインドに陥ると、誰かに助けを借りることができなくなるのかもしれない。

パーキングで助けてくださいと言えた日

車で子どもを病院に連れていった日、事件は起きた。病院のパーキングから出庫しようした時、グギギ…と車に違和感を感じて慌ててブレーキを踏むと、車の左サイドにアーチ型のポールらしきものがあたっていた。

このまま前に進む?バック?!ハンドルはどう切ったらいいの?運転スキル初心者の私はプチパニックだ。幸い、後部座席の子どもたちはマイペースにアイスを食べていたので、私は急いで運転席から降りた。

「すみません。車がぶつかってしまって、、、助けていただけませんか!」

私の唐突のヘルプ要請に、そこにいた年配の男性は少し戸惑った表情を見せていたと思うが、直ぐに車の方に来て親身にアドバイスをくださった。大変に有り難く、私の不安で心細い状態は大丈夫!と安心へ変わっていた。しかし、私の運転技術が未熟すぎたために理解が追いつかず、車を動かすことはできなかった。

そこへ通りかかった方が声をかけてくれ、教習所の先生の如くハンドル捌きを丁寧に教えてくれたのである。2人に見守られながら私は恐る恐る車を前に動かした。

すると、ここにもう一人警備員さんも助けにやってきてくれた。警備員さんは、車の位置を確認した後にアーチ型のポールを引き抜き、これで大丈夫だよとグッドサインを私に向けてくれた。私はゆっくり車の方向転換をして精算機の横に車を付け、ホッと安堵した。私は救世主の3人へ何度も感謝を伝えると、ふたり目の救世主の方が「車、そんなに傷ついてないですよ(ニコッ👌)」と励ましもくれたのだった。

コインパーキングを出ていく時、3人は並んで皆笑顔だった。私はこのときの光景が忘れられない。大袈裟かもしれないが、その場は多幸感に包まれていたと思う。助けていただいた感謝の気持ちももちろんだが、助けを求めた私と助けてくれた人たちの心意気それぞれの思いが繋がったと感じられ嬉しかった。後部座席でアイスを食べ終わったあんこ君が、「ママ、くるま、じこしなくてよかったねー」と言ったので「そうだね。車は少し凹んだかもしれないけど、ママはとても良い時間だったよ。」と私は返した。

さて、二つの事件を通して私が学んだこと、人生の冬越しの知恵はなんだったかを振り返ってみよう。

助けを求められた私とできなかった私の違いは、「自分にできること、できないこと」を冷静に理解できていたかどうかである。西松屋では、母として場を治めることができないと分かっていなかった。もっと言うと、できないことを認めてしまっては母親失格といったプレッシャーを抱えて、自分のことも状況も受け入れることができていなかった。できない自分はダメ!なんとかしなきゃという思いが強くなるほどに、人に助けを求めることのハードルが上がっていくのだ。

一方、車の運転技術に関して、私はドライバー初心者として、自分の苦手や経験がないことに関して快く受け入れている。ゆえに、恥ずかしさなどは多少あるけれども「できない。仕方ない ⇨ 他の人に助けてもらおう🎵」と思考が進むのだ。

同じできない状態に対して、自分の捉え方が異なることがとても興味深い。前者は、「母としてできない自分はダメだ」と言うI’m not OKマインド。後者は、「ドライバーとしてできない自分も、仕方ないよね〜」I’m OKマインドである。そして、I’m OK!と肯定できた先に、人の選択肢は広がりを持つということを、身をもって体験したのである。

八方塞がりの状況になることは、育児をしていると四六時中訪れるわけだが、次にそのような状況になった際には「できない私も、I’m OK!」と3回言ってあげようと思う。そこから気持ちの余裕が生まれるだろう。うまくいっていない状況に気づき、他に何ができる?と希望を見出す方に気持ちも視点も移るかもしれない。また、私は助けを求めることのポジティブな側面を知ることができた。自分一人でできないことが、誰かと一緒にやることで解決されるというクリエイティブや協働の面白みに変わる。温かい交流も生み出す。私たちの社会にとって、今、とても大切な関わり方だなと感じている。

冬越しから1年後の今も、I’m OKが私を日々助けてくれている。

つい先日、あんこ君が病院で診察を受けている最中に小児病棟を脱走し、レントゲン室で器具を蹴り飛ばすという事件があった。私は冷や汗をかきながらも、看護師さんと放射線技師さんらと協力し合いながらあんこモンスターを捕獲し、I’m OK. We all are OK!! 精神でその場を治めたのだった。I’m OK.が出せた時には自分の内側に「余裕が生まれる」ような感覚があって、気負いが少し減るみたいだ。イライラや相手を怒るような感情が減り、かわりに一呼吸できる。I’m OK発動の打率はもちろん10割とはいかないけれど、私にも子どもにも、こっちの方が楽で気持ちがいい♪

ゲスト投稿記事 No.7 小畑怜美さん” に対して7件のコメントがあります。

  1. はじめてレスをさせていただきます。

    心に響きました。ちょうど私も、I’m OK. You’re NOT OK.に陥っていたところでしたので、ご体験やそこからの学びが、とてもとても嬉しいヒントとなりました。有り難うございました。

    1. 小畑怜美 より:

      深山さん、コメントをどうもありがとうございます。
      「陥っていたところでしたので」という言葉を読み、ナイスタイミング♪で深山さんに記事を発見していただけたことをうれしく思いました。「I’m OK. You’re NOT OK.」という時もありますね、昨夜の私はそんな感じだったかもしれません…こちらこそ嬉しいヒントをいただきました。ありがとうございます!

  2. 渡辺照子 より:

    小畑さん、2回目の投稿拝読。小畑さんの書かれた内容が、深山さんにとっての、「ちょうど私も、I’m OK. You’re NOT OK.に陥っていたところでしたので、ご体験やそこからの学びが、とてもとても嬉しいヒントとなりました。」・・・ということに繋がったって、素敵ですね。小畑さんが、できごとや思いを文字にして発信したからこそ、起きたことですよね。なんだか感動的~~~。

    小畑さんの記事を読んで、おまけつきお菓子を買わないと決めて家を出たのに、欲しくて泣きわめく息子とスーパーマーケットで意地の張り合いをしたこと。11月に山道で、車が氷で滑って側溝に落ち、途方に暮れたところにやってきた作業帰りの男性3人が、いとも軽々と車を持ち上げて救ってくれたことなど思い出しました。

    日々は忙しく流れていくけれど、思い、できごとを文字書いてあらわすことは、書く本人にも、それを読む方にも、生きていることを味わわせてくれる機会になるんだなと思えました。私も、これからも、文字にしてあらわすことを続けていきたいと思いました。

    1. 小畑怜美 より:

      照子さんにも息子さんと意地の張り合いをされていた日がありましたか^^そうなんですね。私が「子どもの頃」は、よく祖父母におまけ付きのお菓子を買ってもらっていました。これはただのお菓子じゃないぞ、ワクワクドキドキが詰まった箱だぞーと子どもの私の目には映っていたのだと思い出しました。そして私は両親にはねだりませんでした(笑) 親にも子にも、わけがあるのですね。

      今回もコメントをどうもありがとうございます!今、昼寝する娘を抱っこしながらお返事をスマホで打っております。本当は、しっかりお返事を書きたいから机に座って、PCで文を書きたいなと思っていましたが、これはこれでOKですね^^

      > 「日々は忙しく流れていくけれど、思い、できごとを文字書いてあらわすことは、書く本人にも、それを読む方にも、生きていることを味わわせてくれる機会になるんだな」

      照子さんのこちらの言葉も素敵ですね。私も小さく楽しく書き続けたいと思います。

  3. おっくん より:

    小畑さんへ

     勇気ある2度目の投稿、楽しみにしてました。
    ありがとうございます。

     お子さんとの闘いの様子、わかります。といっても僕には子供がいないので逆の立場でして、泣きわめいて困らせたこともあったなあと。

     しかし、プロとしてコミュニケーションのお仕事をされているようですが、、、、お子さんを操るのはよほど難しいようですね。僕も仕事柄、わかる気がします。
     小さな子供といっても立派に人格を持ったひとりの人間ですもんね。表現が未熟な分おとなにとっては一番苦手な存在かも。彼らも徐々に成長をしていくなかでいろんなことを覚えていくようです。お母さんの愛情いっぱいの分だけ人の役に立つ人になるようですね。頑張ってください。

     これは冬というより「春夏秋が近いよ」というお知らせと思っています。
     小畑さんもお子さん相手にコミュニケーションの勉強中でしょうか。😄 この試練を乗り越えたらお客様にとってもいい先生になれるように思えてきますね。

     こんな勝手な解釈ですが、いろいろ気づくことができたようです。ありがとうございました。
    「二度あることは三度ある」って誰が言ったのでしょうか。次回もよろしくお願いいたします。

    1. 小畑怜美 より:

      おっくん、今回もエールをありがとうございます!ブログ投稿に対してや母業の試練に対して、一人の人生に対してと全方面からの応援の声をいただいてる感じがします^^有り難くコメントを受け取らせていただきます。

      そして、正に毎日が「子ども相手にコミュニケーションの勉強中」です。わたしの場合は失敗だらけなの、しくじり先生になれそうな気がしてきました。それもアリですね!

      三度目!??
      予定はありませんでしたが(°▽°)書き続けたいとは思っているので、がんばってみます!

      1. おっくん より:

        しくじり先生、いいね!
        しくじった分だけだよね、人生は‼️

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