SF伝道者の四方山話(最終話) 青木安輝

ソリューションフォーカス20周年の2025年師走、67歳になりました。自分は今人生のどんな段階にいるんだろうという自問をここのところ続けてきた結果、「SF伝道者の四方山話」というブログの冠タイトルを、来年からは「自分と究極に仲良くする」に変えることにしました。今回は「SF伝道者の四方山話」最終話ということで、SFの20年間を含めた過去50年間の自分のヒストリーを超短ダイジェストした上で、来年からこういう方向性でいきたいという希望をお伝えします。(相変わらず長いです・苦笑)

【「悟り」の世界への憧れ】

50年前、高校の友人がインドにはお釈迦様のように本当に悟っている人が今も生きているらしいと言うのを聴いて、そんな境地にいる人が存在するなら会ってみたいという好奇心が湧き始めました。その後、予備校の一年間と大学前半2年間の約3年間はいわゆる“精神世界”の本を読んだり、そういう世界で自己探求しているように見える人たちの色々なコミュニティーに顔を出してみて、求める世界への自分なりの入り口を探しました。しかし、沢山の面白い人に出会ったり、様々なカウンターカルチャー(対抗文化)の魅力に惹きつけられたものの、その入り口は見つかりませんでした・・・。

【“至高体験”と人生の目的】

大学3年になった頃、コリン・ウィルソンの「至高体験」という本を読み、こんな体験をしたいと思う気持ちが高まったちょうどそのとき、尊敬する友人に誘われて参加したセミナーでまさにその本で描写されていたような境地を味わうことができました。その時の個人的体験を文字にするのは難しいので、本の中の1フレーズだけ紹介します:

「至高体験とは、美的、宗教的経験の極致に感得する精神的エネルギーの奔出である。」

この文字の並びを見ても何だかわからないですよね(笑)。宗教的って言葉が入っていますが、この時は瞑想のように一人で行をしたのではなく、人との深いコミュニケーションの中でいわゆる通常の対社会的装いを取り払った「素」の自分を体験した・・・そんな感じでした。もう他に何も求めなくても心の底から満たされているという感覚、そして人に対してとてもやさしい気持ちになれる体験でした。その素晴らしさは言葉で表現するとわざとらしいので省略しますが、僕は自分の生きる道を見つけたと思いました。ここから先の人生は、この“至高体験”の境地を真に自分のものにするための“修行”に専念すれば良いのだと思えたのです。

【“修行”時代の11年間】

それで大学4年の一年間はそのセミナーの会社でアシスタント(今でいうインターン)をして、就職どうしようと迷っていたら、社長のIさんが絶妙なタイミングで「ウチ来るか?」と言ってくれたので、二つ返事で「はい!」と回答。就職試験はなくそのまま入社しました。人生で究極に望むことを仕事にできて、なんてラッキーなんだと思いました。

それから11年間は、Iさんを師匠として“修行”をさせてもらいました。付き人のように随伴してセミナーの進行方法はもちろんのこと、日常の一挙手一投足からも色々学ばせていただきました。また、アメリカ西海岸の様々な心理系ワークショップやインドの瞑想アシュラムに勉強に行かせてもらったり、本当にありがたい学びの11年間でした。早くIさんのようになることを目指して他のことにはわき目も振りませんでした。

【挫折と独立・・・そして自己不信の危機】

しかし、「Iさんのようになる」という目標は達成困難で自分が苦しくなってしまい、激しい葛藤の末、ものすごくお世話になったIさんの会社を辞めることにしました。そして、「自分なりのやり方なら何かできるかも」というところに希望をつなぎ、35歳で自分の会社を立ち上げました。NLP(神経言語プログラミング)という心理手法をベースにコミュニケーション技法を教えるセミナーや研修を提供する会社です。当初は医師とコラボして心臓病に対して多角的な治療を施す実験的なプロジェクトのチームに参加させてもらったり、プロゴルファーのメンタルトレーニングをしたりと刺激的な仕事をする機会に恵まれて充実感がありました。企業研修も有名企業からご依頼いただけるようになりました。

ところが、その会社のスタート当初から、実は自分はそのNLPという手法を100%マスターしているわけではないという負い目を心のどこかでずっと感じていて、その不全感が少しづつ積もっていきました。「自分はこのままでは行き詰まる・・・」という危機感が年々募っていったのです。

【ソリューションフォーカスに救われる!】

そんな時期に自分を救ってくれたのが「ソリューションフォーカス」でした!

NLPの会社をつくった当初から、知人の依頼で毎年2~3回ブリーフセラピー関連のセミナーで海外講師の通訳をする機会をいただいたのですが、そのコンテンツの中でSFA(ソリューションフォーカストアプローチ)の部分がとても自分にフィットして、通訳をしながら自分が助けられる感覚がありました。「マイナス面を深く分析して直そうとするのではなく、可能性があるところをシンプルに活かす!」「小さくて良いから一歩進んでみる。」そんな風に考えていくと安心して「自分OK!」と思えたのです。

「もし職場や家庭でこの考え方が採用されたら、誰でも良い方向への変化がつくれるはず!」と思えたので、これを自分の仕事にしようと決めました。でも自分はセラピストではないし、一般の人が日常のコミュニケーションに応用して人間関係を良くしたり、生産性を高めるサポートをするのだから、用語もわかりやすいものにしようと「OKメッセージ」という造語をつくり、SFAの代わりに欧州SOL Worldで使われていたSF(ソリューションフォーカス)の呼称を採用して、自分なりの解釈でなるべくシンプルに伝わるようにと工夫したSFセミナーをつくりあげました。

【SF伝道者誕生!そして20年】

そして2005年の1月に株式会社ソリューションフォーカスを創立して、「SF伝道者」となったわけです。2006年「解決志向の実践マネジメント」出版、2007年「SF実践コース」開始、2008年「日本ソリューションフォーカス活用事例共有大会(J-SOL)」創設。その後コロナ禍になるまでの間に様々な企業や自治体その他の組織でソリューションフォーカスを伝えてきました。この20年のことを書くとキリがないので省略しますが、その間のお客様の声として、20周年にお寄せいただいたお祝いのメッセージ、動画、歌などが記念ページでご覧いただけますので、興味が湧いた方はどうぞそちらをご覧ください。

【現在は転機・・・どんな?】

さて、コロナ禍で研修の仕事やセミナーも大分減り、前期高齢者となって老化現象を自覚することも多くなりというのがここ数年の実態です。こう書くと悲観的に聴こえるかもしれませんが、実際には「“転機”が自覚できてよかった♪」が正直な気持ちです。

どんな転機なのか?一言で言うと、「大勢を相手にする」から「一度に一人を相手にする」仕事への転換。実際には数人でもいいんですが、ようするに自分がサポートする相手のことを直接感じとれる距離感でのコミュニケーションワークをするってことなんです。

若い頃は大勢の人に一度に影響を与えられる人が偉いと思ってたし、自分もそうなれたらいいなって思ってました。でも、SF伝道をする中で、自分は信念を断言してグイグイ人を引っ張っていくタイプではないし、安輝という名前の通り、安らかな状態を大切にしてゆっくり輝きを育てていくことが似合っているのだという自己認識がしっくりくるようになりました。それだと一人ないしは少人数を相手にする形式が合っているし、それなら今の体力でも、多少の老化現象があっても(笑)まだまだできる自信は持てています。むしろ力まずに済んでいる分だけ、前より上手くできるかもしれません。

【2026年は】

今年やったプログラムの中で、「SFプログレス」や「ワンデイ・アプリシエート」はまさにそのような形式で、一対一のセッションを基本としてとても充実感がありました。そして参加していただいた方たちが何かを手に入れていく様子がよく伝わってきました。なので、来年は個人セッションをサービス提供の基本単位としたいと考えています。

そこで中心に置きたい考え方が「自分と究極に仲良くする」ということなのです。これは言い換えれば、「自分に対してソリューションフォーカスする」ということで、SFの中身を変えるのではなく、それを活用する方向をまず「自分自身」に向けるということです。

【自分自身を「整える」】

SFはもともとカウンセラーが相談者に対して使う手法だったので、相手の肯定的反応を引き出すために自分の対人コミュニケーション行動をどう変化させるかのノウハウを伝えるセミナーをやってきました。

しかし、SFを伝え続ける中で、それを自分自身に向けて活用するようになり、とても効果がありました。ずいぶんと気持ちが楽になったし、レジリアンス(大変なことに耐える能力)や与えられた状況の中で必要なだけ自分の力を活かせる度合いが高まったと思います。また、無理をしない、場合によっては上手にあきらめることも学んできました。能力を発揮するという積極的な方向だけでなく、退却する自分を許して自分を守ることも上手になったと言えます。

外的基準に自分を合わせようとするのではなく、自分の基準で自己と外的世界の間の調整をすることが気持ちよくできるようになってきたのです。言い換えると「自分を整える」ことがうまくなったと思います。

そんな僕自身の体験もシェアしながら、自分の歩みたい道を前進したいと願う人を個別にSFコミュニケーションでサポートする。それが来年の僕の仕事の基本的なイメージです。「青木さんと話してると、特別なことは何もないのになんだかうまくいくような気がしてくる・・・」と言われたことはまだありません(笑)。でも僕が目指す境地はそんな風に言ってもらえるあり方です。

【リトリート(準備期間)】

来月イギリスのある教育施設のプログラムに参加します。これは「自分と究極に仲良くする」の意味あいを掘り下げて、今後自分が提供できるサービスについての準備をするリトリートの時間であると思っています。なので、新しい提供プログラムを具体的に発表するのは、節分前後になります。来年のSFプログラムに参加したいというお問合せを何人もの方からいただいているのですが、しばらくお待ちいただくことになります。申し訳ありませんがご了承ください。

「自分と究極に仲良くする」の意味がわからないと思われる方も多いと思いますが、来年のブログの中で徐々に明らかにしていきたいと思います。徐々にというのはもったいぶっているわけではなくて、確定した定義があるわけではないので、色々な切り口で書くうちに自分にとっても少しづつ明らかになっていくだろうという意味です。読者の皆様からコメントをいただいて交流することができたら、より多面的に掘り下げることができると思います。どうぞお楽しみに♪

【YouTubeでのインタビュー動画】

来年のことで一つ始めることが確実に決まっていることが一つあります。SFブロガーの一人渡辺照子さんの発案で、僕へのインタビューをYouTubeで公開しようという計画です。

セミナーや研修などでは限られた時間の中でSFのコンテンツを伝えようとするあまり脱線があまりできません。渡辺さんは僕と雑談をする中で出てくるSFにまつわる色々なエピソードに価値を見出してくれて、これはソリューションフォーカスを学び実践する人たちにとっても知る価値があるということで、青木安輝インタビュー動画をシリーズとしてプロデュースしてくださることになりました。

実際シリーズにするほど語るべきものを僕が持っているかはやってみないとわかりません。一回で終わってしまうかもしれないし、かなり続くかもしれません。どっちになったとしてもやってみる価値はあるかなと思えるので、挑戦してみようと思います。どうぞお楽しみに♪

さて、「SF実践者の四方山話」」から「自分と究極に仲良くする」に変わっていく意味あいは受け取っていただけたでしょうか?僕としては、より気軽に青木安輝のプログラムに参加してみようという気になってもらえたら最高なんですが・・・どうかな!?

よかったら、ぜひコメントくださいね。お待ちしております。ここまで読んでいただいたこと、本当にありがたいです。深謝m(_ _)m

SF伝道者の四方山話(最終話) 青木安輝” に対して2件のコメントがあります。

  1. 上野哲生 より:

    青木さんの歴史や考え方の筋道を知ることができて、興味深く読ませていただきました。ありがとうございました。来年からの新たな活動を期待しております。

    1. 青木安輝 より:

      上野さん、早速のコメントありがとうございます!
      ご期待に応えられるよう精進したいと思いますv(^ ^)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA