SF伝道者の四方山話 No.34 青木安輝
時空を超えて響き合うもの
SF20周年記念イベントとして、「メッセージボード」が始まりました。1月7日午前8時現在で24名の方々から寄せられたメッセージが既に掲載されています。そして11日には、もう一つのイベント「SFブロガー座談会」を開催しますが、そのテーマを「時空を超えて響き合うもの」とすることにしました。このブログ記事はその理由を皆様にお伝えするために書きました。
実は座談会の内容に関しては当初あまり深くは考えていなかったのですが、メッセージボードに寄せられたコメントを読ませていただいている内に、これは単に会社の周年イベントであるだけではなく、SFを大切に思う人たちで「時空を超えて響き合うもの」を確認する大切な機会なんだという想いが湧いてきました。
皆さんは旅先で、たまたま見つけた石碑を見て、そこに書かれた短い文章を読み、その石碑が建てられた場所ではるか昔に活躍した英雄の姿を思い描いたり、悲運の人々の魂を慰めようとした人たちのやさしさを感じたりしたことがあると思います。人の心を打った感動的なエピソードは、長い時を経ても、詳細な事実はわからなくても、人の胸に響きますよね。そして自分が大切にしたいことを思い起こさせてくれます。
「20周年記念メッセージボード」は、そんな風に「時空を超えて」大切なことを思い出させてくれる感覚を既に僕に与えてくれています。
ボードには送っていただいた順にメッセージを掲載しています。真っ先にメッセージを送ってくださったZACROS株式会社の布山さんは、僕にとっては企業経営者としてSFの価値を認識してくださった最初の方です。出会ってから数年後に、ZACROS社内のSF活用事例がJ-SOL大会で発表されることが多くなってきたので、インタビューさせていただきました。その中で、僕のある問いかけに対して答えてくださった言葉が今でも耳に残っています。
「SFって人類愛のことだと思うんだよね。」
まったく力みがなく、落ち着いた静かなトーンで、ただ当たり前のことを言っているかのようなご発言でした。僕は自分の胸が熱くなるのを感じました。SFを広めていく際に宗教的とか道徳的教えみたいと思われるのがイヤで、「愛」という言葉は使わないようにしていたのですが、布山さんはシンプルに本質をついたことを何のためらいもなく言葉にしてくれたのです!感動しました。
そのことを思い出したら、ZACROSの製造現場チームが初めてJ-SOL大会で発表しれくれた時のことも浮かんできました。製造現場というのは効率重視なので不具合を起こしてはいけない、製品の不ぞろいを出してはいけないと、一般的にはダメダメメッセージが先行するので、関係がギスギスしがちです。ところがZACROSチームがSFを取り入れてOKメッセージが増えたことで、先輩が後輩を後継者として大事にし始めたり、無愛想で厳しいだけに見えていた人が笑顔を見せるようになったりと、職場の雰囲気がだんだん変わってきて、若手の成長がそれまでとは違うスピードで見られるようになった様子が発表されました。
それ自体大変素晴らしい内容の発表で、僕は興奮しましたが、その発表を通訳を通して聴いていたスイス人SFコーチのピーターさんが、部屋の後ろの方で感動して涙を流していたと聞き、本人のところに行って「どんなことを思ったの?」と聞いてみました。
彼はこう言いました。「僕は少年時代に工場でアルバイトをしたことがあるんだけど、現場はとても殺伐としていて、皆幸せそうではなかった。こういうところでは将来働きたくないと思ったし、コーチになってからはSFでそういう現場を変えていく仕事をしたいと思っていた。ZACROSの皆さんの話しを聴いたら、まさに僕がやりたかったことを自分たちでやり遂げている。そう思ったら胸が一杯になったんだ!」と目を潤ませていました。それを聞いた僕の目頭も熱くなっていましたし、これこそが僕がSFを広めたいと思った理由だ!SFを始めて本当に良かった!と思いました。
布山さんからいただいた記念メッセージ一つからでも、そんなことを色々思い出すことができました。その後、いろいろな方からメッセージが届くたびに、「ああ、この人はこんなことを語ってくれたよなぁ」とか「この人がこんな風に変化を起こしたことが感動的だったなぁ」とか、時を超えて様々な記憶が蘇りました。
記憶はもちろんファクトそのものではなくて、いいように書き換えられているかもしれません。でも、それらの時空を超えた記憶は、僕の中の大切な“何か”と響き合っていて、その“何か”というのはSFを知る以前にもあったし、これからもずっとあると思います。それは多分いつもあるんだけど、忘れてしまうことも簡単なので、時々SFっていうキーワードで思い出すことも必要なのかなと。記念メッセージボードに寄せられたメッセージを読むと、僕たちはSFというキーワードを通じて自分の中の何か大切なものを思い起こすようにしているところが共通しているのかなと思いました。
SFセミナーの中で「SF格言・名言」として紹介している様々なフレーズは、古今東西の哲学者、科学者、その他色々な人の言葉が並んでいます。ある意味、SFを知らない人でもSFを知ってるんだよなぁと思います。もしかしたら時空を超えて響き合うものに、たまたまSFと名前をつけただけなのかもしれません。
座談会のテーマを「時空を超えて響き合うもの」にしたいのは、SFを通じて僕たちが共有しているのは何なんだろうというところを言葉にしてみたい、そこに参加してくれるそれぞれの人の言葉で語ってもらいたい、そんな想いからなんです。ファクトとしての20年間のいろいろな出来事を思い返すことが目的ではなくて、ソリューションフォーカスを大切にしてくれている皆さんと、昔も今もこれからも自分(たち)の中で「SF」というキーワードの刺激でスイッチが入る“それ”って何なのかについてワイワイおしゃべりしたいって思ったんです。
これを書いていて1月11日がとっても楽しみになりました!
青木さんへ
「時空を超えて響き合うもの」・・・なかなかおしゃれですぞ! 青木さんらしくていいですね!
参加させていただく側としてもより明確なテーマによりワクワク感が増してきたようで、当日がとても楽しみです。まるでJ-SOLのようです。おっくん
おっくん、コメントをありがとうございます。「おしゃれ」という風に受け取っていただけたなら嬉しいです✌ ちょっとかっこつけ過ぎかなあとも思ったのですが、よ~く考えてみると本当に「時空を超えて響き合うもの」が作用しているからこそSFのつながりができたんだなあとあらためて思ったのです。
では、11日にお目にかかるのを楽しみにしています!