「活かし合う力を高める」はJ-SOL7(第七回ソリューションフォーカス活用事例共有大会)の大会テーマとして掲げたフレーズです。このエッセイは大会資料に掲載された文章を「SF実践者ブログ」関連の資料として加筆修正したものです。
活かし合う力を高める
J-SOL6に会社のチームメンバーと参加したある組織のリーダーの方が、後日談として語ってくださった言葉を紹介します。
「部下や仲間に何をどう説明するよりも、あのJ-SOL大会の雰囲気を味わってもらったことで、組織の中で人がどう関わり合うことが可能なのか体感してもらえたようなんですよ。それがその後の社内活性化活動に大いに役立ちました!」
2008年に創設されたJ-SOLは、回を重ねる毎にSFコミュニケーションの実践者の皆さんがつくる気持ちのよい学び合いの場として、ソリューションフォーカスのエッセンスを空気のように体感できる機会となっていたようです。大変嬉しくこのコメントを受け取らせていただきました。
ソリューションフォーカスは支援的面談(カウンセリング)の領域で、SFA (Solution Focused Approach)として開発され、人が解決に向かうのを支援するために、一定の時間枠の中で、支援者と被支援者の役割が明確な文脈(カウンセリングおよびコーチング)で活用される理論およびコミュニケーションスキルの体系でした。やがて、その考え方やノウハウの汎用性が様々な領域で受け入れられ、2002年頃から10年ほどの間に欧州SOL(Solutions in Organizations Linkup)World国際大会や我が国におけるJ-SOL大会等で、組織内の日常的なコミュニケーションにおけるSF活用事例が数多く発表されました。その中では、時間枠を限定したり、「誰が誰に対して」という主語と目的語を明確にした(あるいは支援者と被支援者が明確である)文脈だけで語ることができない、日常的で多元的なものが増えました。
「活かす人」と「活かされる人」にはっきり分けてしまうのではなく、「活かし合う」ためのコミュニケーションという捉え方をすることで、手法の柔軟性がより高まり、多くの人をつないで相互活性化を促進する、よりオープンなSF応用法を工夫しやすくなります。そのようなソリューションフォーカスの進化を踏まえた上で、「活かし合う力を高める」をJ-SOL7の大会テーマとしたわけです。
チームでJ-SOL大会に参加したり、チームで活用事例を発表する企業の方が回を重ねる毎に増えました。J-SOL7では日本人のSF活用事例12本の内、7本が組織内チームによる実践内容の発表です。職場の日常のコミュニケーションの中にSF要素が増えれば、確実に人と人のつながりが強化されます。つながりが強化されれば、自発性や創造性が発揮される度合いが高くなります。ルールを守るとか目標を達成することは、組織にとって不可欠なことですが、「縛り」の要素だけが強くなると活力をそぐ可能性もあります。そこにSF要素が加味されるとどのような違いを生むのか、J-SOL7の分科会の中にはそのような重要なテーマに取り組んだものが増えました。
組織目標を達成しようとするプレッシャーがかかる中で、「活かし合う力」をどのように発揮することができるのか。そのヒントを探したり、そのための新しい方法を一緒に創り出してみることがソリューションフォーカス活用事例共有大会のそもそもの目的でした。だからJ-SOLでは一方的に発表するだけの人、一方的に受け取るだけの人はいませんでした。発表されるSF活用事例は参考になるところが沢山あったはずですが、発表者も「うまくいく」ことを増やすためにSF仲間からの助言や刺激的なコメントを求めていました。多くの皆様にご参加いただき、お互いの体験から学び合うことで、「活かし合う力」を高めていただけたと確信しております。
「SF実践者のブログ」を通じて、また違った形での「活かし合う力を高める」体験を共有したいと思っています。
青木安輝