「Appreciate ~その価値に気づく~」は”SF inside” Day 2017(第10回ソリューションフォーカス活用事例共有大会)の大会テーマとして掲げたフレーズです。このエッセイは大会資料に掲載された文章を「SF実践者ブログ」関連の資料として加筆修正したものです。

Appreciate ~その価値に気づく~

“SF inside” Day 2017の大会テーマは、「Appreciate ~その価値に気づく~」でした。Appreciateを辞書で引くと、SF要素満載の単語であることがわかります。

appreciate:
よさがわかる、真価を認める、(…を)高く評価する、鑑賞する、おもしろく味わう、ありがたく思う、感謝する、識別する、わかる

ソリューションフォーカスの重要なツールである「OKメッセージ」はまさに このappreciateした結果が伝わる行為だと言えます。逆に言えば、appreciateしていないのにとってつけたように褒めても、相手に届くOKメッセージにはならないでしょう。プラスの眼鏡をかけて「よさをわかって」「真価を認め」「おもしろく味わった」人が、「ありがたく思う」気持ちとともに発するメッセージが多い場は、”SF inside”の度合いが高いと言えます。appreciateは何とSF度の高い言葉なんでしょう!

さて、サブタイトルを「その価値に気づく」としましたが、何の価値のことだと思いますか・・・?

実は「その価値」は特定の内容を意図していません。ということは、appreciateする人の焦点のあて方によって、無限大の可能性があります。あえて言うならば、具体的に何の価値を認めるかではなく、価値があるという前提で人やものを見る姿勢のことを指していると言えます。つまりappreciativeな姿勢。

「相手の素晴らしさに気づくことにより自分自身が幸福を感じることがある。」 横田理彦(キヤノン)

これは「SF実践コース」第5期生横田理彦氏の修了レポートの書き出しです。僕はこの一行を読んだだけで、このレポートの内容がappreciateする体験に満たされたものであることを直観し、心が震えました。ソリューションフォーカスの意味を知っていたり説明できたとしても、単なる知的理解のレベルでは人とつながる感覚に乏しく、新しい行動を促すようなコミュニケーションを取るまでに至らないことが多いです。一方、appreciateする体験に裏打ちされているコミュニケーションにおいては、心が響き合い、そこに何かが生み出される可能性がグンと高くなるのではないでしょうか。

J-SOLから”SF inside” Dayに至るまでソリューションフォーカスの事例共有大会が継続できたのは、参加された皆さんが、そこに関わる人々をappreciateし、自分自身もappreciateされる体験を通じてお互いにエネルギーを高め合う場であることが実感されたからだと思います。私がSFプログラムを企画する時は、私たちがお互いにappreciateし合う機会がさらに増えるようにしたいという願いを込めています。

SFの事例共有大会において発表された皆さんは、発表の準備をする過程であらためて、自分がやったことの価値、創意工夫の効果、協力してくれた人々をありがたく思える気持ち、思った通りにいかないときに発揮した柔軟性等、その時点では無自覚だった様々なことをappreciateしたと言っています。

そして、その発表を聴いた皆さんは、その発表内容のどこに真価を認めるか、どの部分が味わい深いと感じるか等の焦点が一人ひとり微妙に違うことから、参加者同士でappreciateすることが沢山あったようです。

そのような学び合いの場を一緒に創り上げる人たち同士の間に生まれる感謝(appreciate)の念は、その後に自分が志すことに向けて一歩を進めるためのエネルギーを気持ちよく増幅してくれたようです。

青木安輝