ソリューションフォーカスNEWS 10月26日号

「ソリューションフォーカスDay 2020」レポート

”SF実践を積み重ねて生み出されるもの”

こんにちは。ソリューションフォーカスの青木安輝です。

先週の土曜日に「ソリューションフォーカスDay2020」が開催されました。J-SOLから始まったSF活用事例共有大会として13回目となるこのイベントの様子を、13年間で初めて「参加者の一人」としてそこにいた青木安輝がレポートいたします。

コロナ禍によって、参加者数は例年よりずっと少ない12名となり、ソーシャルディスタンスを取り、全員マスク着用なので寂しい感じがするのかと思いきや、まったくそのようなことはなく、旧知のソリューショニスト同士も、初参加の方も気持ちの良い親密感が感じられる空間となりました。そして、分科会に分かれることなく5本すべての発表を全員で共有できたので、”見逃した”ものがあるという残念感もなく、「SF実践を積み重ねて生み出されたもの」を伝えてくださる中身の濃い5つのストーリーを共有できました。

では、語られた一つひとつのストーリーに関して私にとって最も印象に残ったポイントを中心にお伝えします。

【共有事例No.1】

「働きやすい職場作り」~“気付く”ということの大切さ~

製造業の現場若手リーダーである福本さんは、職場の雰囲気を良くして働きやすい職場をつくりたいという想いがありました。しかし、そのためにはメンバーのうち数人の態度が思わしくないので改めさせる必要がある、という考えが心の中にひっかかっていました。

そんな時、「SF実践コース」修了者の先輩との会話によってある”気付き”が生まれました。それは「他人を変えることはできない。だけど働きやすい職場をつくることを目指すことはできる」というものでした。問題ではなく、その向こう側にある解決像を見据えるというソリューションフォーカスの基本に立ち返った時に気持ちがとても軽くなり、自然に人の良いところの方が目につくようになったので、職場全員の「いいところリスト」を作成したそうです。その後、福本さんが提案した職場改革の案が通り、スムーズに受け入れられ、様々な成果が生み出されました。

問題にこだわるのではなく、「望むことを目指す」意識になった瞬間に、まず自分自身の心が楽になるというのはとっても重要な「気付き」であるとあらためて認識しました。

【共有事例No.2】

「1人実践コースを続けた変化」~マンスリーレポートの実践とこの時代に活かしたい組織へのSF~

社会保険労務士事務所を経営する山本さんは、「SF実践コース」を修了した直後の2018年に「SFと自分の生き方」というタイトルで日常生活に根差したSF活用事例を発表してくださいました。その後さらにSF実践を継続すべく、「1人実践コース」というプログラムを自分で工夫され、自分なりのSF実践スタイルを模索し続けてこられました。

「マンスリーレポート」とは、毎月その実践した結果を1枚のA4レポートにまとめたものです。初めてからなんと20か月間それを継続してこられて、まさに「SF実践を積み重ねる」を絵に描いたような努力の跡を見せていただきました。努力と言ってしまうと苦しそうなイメージになりますが、山本さんは「やればやるほど飽きることがない」とおっしゃっています。私の勝手な想像ですが、それを可能にしているのは、山本さんが自分自身に対して深くソリューションフォーカスしているからだと思いました。無理に大きなゴールを立てずにできることを実行する、失敗を責めずにそこから学ぶことでさらに前進する、だから確実に成果がある。それを静かにやり続けるってカッコイイな!と思わせてもらいました。

【共有事例No.3】

「『諦めない』SFアプローチ」~お互いをよく知り信頼を得るということ~

停滞気味の支社活性化を託されて単身赴任した木村さんは、人間関係と協力体制の2つをキーワードとして取り組み始めましたが、年長者なのに部下(組織でよくあるパターンですね)の一人がなかなかチームに溶け込まずに悩んでいました。ここから「諦めない」が始まります。

食事に誘ったり、OKメッセージを伝えたり、あらゆる機会をとらえて距離を縮めようとしますが、相手が乗ってくれません。そんな彼の支えになったのが「SFスケッチ」というツール。これに「スモールステップ」を書き込むことが楽しくなった木村さんは、「うまくいかなければ違うことを”やり続ける”」ことが楽しくなったようです。とにかくコミュニケーション回路を確保するために、用がなくても電話したり、Google Meetを使ったり、その人が一人で離れていたら名前を呼んで会話の輪に入ってもらったりと、とにかく「できる小さなこと」をやり続けました。電話をしても出なければ「着信を入れただけでも前進!」ととらえるなど、やり続けると決めていれば「失敗」などないかのようです。

そして、とうとうある日「2人で飲みに行く」ことができました。その写真を見せていただきましたが、相手の方ははにかみながらも本当にいい顔をされていました。ちょっとウルっときました♪その方がチームに溶け込んできたり、仕事ぶりが変わったことは、なんだかおまけの話に聴こえてしまいました。

【共有事例No.4】

~「誰か」やって! ではなく、「俺が」やる!!自己変革 ~

製造業総務課の柴田さんは「リサイクル室のごみ溢れ問題」と「固定資産台帳の整理」という課題を解決するチームのメンバーになりました。ところが、一緒に取り組んでくれるはずの人たちが色々あって非協力的になってしまい、面倒臭いことを全部背負わされそうになりました。

そんな時に「SF実践コース」に参加した柴田さんは、考え方を変えることにしました。「出来ていないことに​目を向ける」のではなく「出来ていることに目を向ける」、「一人で抱えこみがち」だったのを「周りに『助けて欲しい』と伝える」、「相手が悪ければ否定する」だったのを「否定せずに、まずはOKメッセージを送る」という3つの方針を決めて、それを実行しました。

自分に迷惑をかけている非協力的な相手にOKメッセージというのは心理的に相当抵抗があるはずですが、柴田さんは見事にそれをクリアしました。そして「貴方じゃなきゃできない!」という心に響くメッセージで前向きな要請をしたのです。すると、相手の人は頼んでいないことまでやってくれるようになりました。指示や命令や力づくではなく、自分のとらえ方や態度を変容させることで人に影響を与えて協力関係を深めていく見事な事例でした。それによって柴田さんは自信を深めたようで、とてもキッパリと「俺がやる!」というフレーズを口にしてくれました。素敵!

【共有事例No.5】

「逆風を前進する力に変える『つながって解決する』SFマネジメント」~自分らしいマネジメントを探して~

実は私はこの発表に特別注目していました。なぜなら小林さんは一回目のソリューションフォーカス活用事例共有大会(J-SOL1)で素晴らしい人材育成の事例「エンパワーミーティング」を発表してくれて、それから12年後のご登壇になるので、どんな風に変化(進化?)したのかとても興味が湧いたのです。

発表内容の詳細はここでは紹介できませんが、マネージャーという立場で上からの指示と下からのつきあげに合う典型的な中間管理職のご苦労にどのように立ち向かったかのお話でした。冒頭で「なぜSFか?」と小林さんにとってSFを活用する意味を紹介してくれましたが、その中でSFだと「後味がいい」という言葉が紹介されました。これはとても意味がある言葉だと思います。

私がSFを広め始めた当初に受講されたマネージャーの方たちが、SFを学ぶ前に「成果は上げたんだけど、その後がね・・・」と、関係者と折合いが悪くなったり病気の人が出る等を後悔しているという話を聞くことが少なからずありました。組織人であれば、組織目標は当然重要ですが、それを一緒に達成しようとする仲間は個性のある人間であり、そこに敬意を表そうとすることが目標達成のための行動と両立しないことが多いです。そんな中でぎりぎりまでその両方を重んじようと苦闘する小林さんが達した境地とは・・・。

「お互いにとって大切なことを​大切にする生き方」

と、小林さんは表現してくれました。この言葉の意味するところを、様々な利害関係が交錯する組織の現場の中で実行しようとすると、とっても深く悩みますよね。しかし、最後に「後味がいい」ようにするためにはというのを指針にできたとしたら、「生き方」として後悔はないだろうと思わせていただきました。最後はスキルでも理論でもなく、「生き方」だなと思わせてもらえる発表で13年間のSF活用事例共有大会の最後を締めてもらえたのは、私としてはとても幸せでした。

【 次回以降のSF活用事例共有大会について 】

以前のニュースでもお伝えした通り、「ソリューションフォーカスDay2020」は例年開催されるSF活用事例共有大会としては最後の回でした。J-SOL1(2008)から始まり13回継続できたことを本当にありがたく思います。今までご参加いただいた皆様、ご自身のSF実践事例を共有していただいた方々、真摯な姿勢で運営に携わり続けてくれたスタッフの皆さん、本当にありがとうございました。

皆様と共有できた素晴らしい時間空間の中で育まれたSFスピリットは、多くの人の心の中に残り続けることと信じております。今後は、別の形でのSF活用事例共有イベントを必要に応じて不定期に開催する可能性があります。その時はまた皆様にご案内いたしますので、どうぞご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。

新型コロナの影響はまだまだ続きそうですが、どうぞご自愛ください。そんな中でも光が差す方向を見つけていくであろう皆様のSFマインドに敬意を表したいと思います。

青木安輝

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