アプリシエートの中ではいつでも「語り手」が主役です。「聴き手」はあなたが語りたいことを気持ちよく語り切るのをサポートするためだけにいます。但し、あなたに割り当てられる語りの時間は限られていますので、日常生活で会話をする時よりも大胆に勇気をもって本題に踏み込んでみてください。

1.事前に意識の掘り起こしをし始める:

今からメイン・セッションまでの間は、「プレセッション・ワーク21」に取り組んだり、アプリシエートの内容を意識して自分が語りたいことは何だろうと自問してみてください。語る内容の原稿を書くなどしてきっちり準備する必要はありませんが、その時になって「話したいことがあるはずなのに何も浮かんでこない」という状態になっては残念ですから、今から「自分が語りたいことは何?」という自問によって意識の掘り起こしは始めておきましょう。他の人が語ることを聴いたり、その場の雰囲気等によって語りたい内容は変わってくるでしょうから、候補は沢山あげておいたとしても、事前に語る内容をすべて決めることはしない方が良いかもしれません。

2.話す題材の選び方:「トピック候補メモ」について: 

プレセッションワークに取り組んだり、アプリシエートのことを考えながら日常を過ごす中で、「これは自分が語りたいトピックかもしれない」と思うことが見つかる毎に、簡単なキーワード・メモを残してください。メモの取り方は自由です。例えば、こんなことを体験したとします:

プレセッションワーク21の6番:「あの人にまた会ってみたいと思う人に連絡を取る」を実行してみよう思ったら、すぐに初恋の人が思い浮かんだ。で、連絡を取るために昔のクラス名簿を引っ張り出してみた。たったそれだけなのに、この何十年か忘れていたドキドキ感を味わい、血流が変わるのがわかった。で、自分が生きがいとして持ちたいことは今まで考えていた理想的かつ抽象的なことではなく、より具体的なものにしたいのだと気づいた。すると、これから始めてみたいことの候補が変わってきた・・・。

これは語りたいことになると思ったら、自分でこの内容を後で思い出すために必要と思われるキーワードだけをメモしておきます。説明が足りなくて後から思い出せなくなっても大丈夫。必要なことならいつかきっと思い出しますから(笑)。

上記の場合であれば、「初恋の人」だけでも良いかもしれないし、「初恋の人、名簿、ドキドキ、生きがい、気づき!」とかいくつか並べてもいいですね。

プログラム中に「トピック候補メモ」を他の人と共有することをこちらからお願いすることはありません。皆さんが自分語りをする際に何を話すか決めるために自分だけが見るオリジナルメニューのようなものです。自分だけがわかれば良いし、内容によって分類しておいても面白いかもしれません。アプリシエートの中では他の人たちが何を話すかによって、自分が話したいこともかなり影響される可能性はあります。そんな時に、このメモがあることで、その状況において自分が一番話したいことが見つけられる可能性が高まります。もちろん休憩中などに「どんな候補があがったの?」と聞き合うのも楽しいかもしれませんね。

3.「自分語り」のテーマが決められているセッション、自由に選ぶセッション:

参加予定者には「アプリシエート基本タイムライン」が送られます。この中で語る内容が指定されるセッションと自由に選ぶセッションの時間帯がわかるようになっています。基本的には自由に選ぶセッションの方が多いです。

何を語りたいのか、何のために語りたいのかは、プログラム参加後に何を期待したいのかによって変わってきます。その場でランダムにトピックを選んで語ったとしても、それなりに面白いとは思いますが、仮にであっても「参加後に望むこと」を言語化しておくことで、一つひとつのセッション毎に「今自分が語るべきトピックはこれで良いか」と自問するための道標ができます。

「アプリシエート基本タイムライン」と一緒に事前に送られる「語るトピックの選び方ガイドライン」を参考にしてください。

4.時間は延長できませんが休憩中は自由です:

なるべく臨機応変に進行したいとは思いますが、参加した全員が話す時間を確保するためには、「アプリシエート基本タイムライン」に沿って進めることを基本とします。例えば、これまでの人生をさらっと時系列に沿って大まかに伝えたいと思ったのに、持ち時間が終わった時に、まだ20歳までのことしか語っていないなどという場合でも延長はありません。でも、「話したことが話したいことだった」と考えれば何も問題ありません。いずれにしろ聴き手に自分の人生のすべてを伝えることはできないのですから。

ただ、休憩中は何をしゃべっていても良いので、もしどうしても語っておきたいことを語り残したのなら、聴いてくれる人を探して少しでもそのことを話しておくことはできるかもしれません。 

5.モノや資料を「語り」の補助として使う:

言葉で説明しようとすると時間がかかりそうだったり、イメージが伝わりにくいけど、実物(あるいは資料)を見せればわかってもらいやすいという場合には、そのモノや資料(写真、文章、その他)を持参して見せるのもありです。但し、資料説明だけで終わってしまわないように、あくまでも「語り」の補助として使ってください。

6.語ることで自分が気づくことを大切にする:

聴き手のガイドラインに書いてあるように、聴き手は「プラスの眼鏡」であなたを見ることに徹します。基本的にそれは心地よい安心感を生むはずですが、それでも聴き手は必ずしもあなたが期待したようにあなたを見るとは限りません。期待と違う反応が返ってきたらそれはそれで意味があると考えて、自分を振り返る材料としてください。聴き手に無理やり「自分のことを認めさせよう」とか「同意させよう」などと、相手を変えようとする試みはしないようにしてください。特定の反応に期待するのではなく、何でも話させてもらえる環境を利用して自分が普段あまり話すことがなかった領域まで語りを進めることによって、自らが気づくことを大切にしましょう。

但し、自分が語ったことの内容の内、特定の部分に関する反応を知りたいと思ったら「~に関してはどう思ったか教えてください」とか「~に関して助言をお願いします」などとリクエストするのもありです。せっかくの機会なので多様な意見を知りたいと思うのは大切です。但し、言ってもらったことをどう受けとめるかを決めるのは自分自身です。

7.何でも正直に話さなくてはいけないと思う必要はないが・・・:

アプリシエートは秘密の暴露大会でもなければ、ある種のグループセラピーのように心の奥にしまってあったものをすべて正直に話すことが奨励されるわけではありません。誰もが守りたい心のプライバシーがあります。墓場まで持っていくと決めていることもあるかもしれません。それは尊重されます。ただ、日常の会話よりは少し突っ込んだ自己開示をした方が「アプリシエート」に参加する意味が深くなるでしょう。どこまで話すのか・・・、それは自由で自分次第です。

8.思っていることが上手く言葉になっていないと感じたら・・・:

普段人に話すことがなかったような内容を話してみると、頭の中ではまとまっていたはずなのに、なんだかわけがわからない表現になってしまうことがあります。話したことが自分が思っていることと違うと感じたら、再度言い直してみるとか、しばらく沈黙して言葉を探す間合いを取るなど、自分にとって「そう!思っていたことはこれだ!」としっくりくる表現を探索することを大切にしてください。すらすら淀みなく話せることが必ずしも良いこととは限りません。

9.一つひとつの「語り」毎に目的は意識した方が良いか?:

漠然とした期待、例えば「色々な人の人生ストーリーが聴ければそれで面白いだろうし、自分も仕事や病気や色々体験したことを聴いてもらえればそれだけでありがたいや」と思うだけでも「アプリシエート」に参加する意義はあると思います。

ただ、特定のトピックについて語る際に、「これを語ることで、もうこのことに心の中で決着をつけたい(手放す)」とか「これからやりたいことの候補を話す時に自分の中で起こること(声の調子の変化、気持ちの⤴⤵、他)を観察してどれを本当にやりたいのか確認したい」等と、目的をもって語るのもありです。その目的は聴き手に公開しても自分だけで思っていてもどちらでも良いと思います。「トピック候補メモ」の中のアイテムに関して、これを話したいと思うのは何を欲しているからなんだろうと自問することも大切な気づきにつながる可能性があります。

10. 「聴き手」に「聴き方」をリクエストすることができる:

どのように聴かれることが心地よいか、もっと話そうという気になれるかは人によって違います。しかし聴き手になる場合は、多くの場合よかれと思って、自分がそう聴かれたいやり方で聴きます。人によっては、大きく頷いて目を合わせて「そうですよねえ!」と全身で相槌を打つでしょうし、人によってはただ静かにうつむき加減で微妙な相槌だけ打つでしょう。あなたはどのように聴かれる時に話しやすいですか?「その人らしく聴いてもらえればそれでいい」という場合は、何もリクエストする必要はありませんが、できればこういう風に聴いていて欲しいという形があれば、語り始める前にそれをリクエストすることができます。特に小グループで話す場合には聴き方の影響は大きくなるので、遠慮せずに希望を伝えておきましょう。

11.小グループのメンバー決めについて

小グループの組み合わせは、毎回くじ引きで決めますので個人的に選ぶことはできません。くじというのは偶然のようでいて、案外後から必然と感じられることが多いです。お楽しみに!

「聴き手のガイドライン」にも書いたように、アプリシエートに参加している間はお互いの交流基本モードは「認め合い、学び合い、応援し合う」に合わせておいてください。時にはそこからはずれてしまう場合もあるかもしれませんが、気がついたら「よく気がついた!エライ!」と自分をほめて、基本モードに戻ってください。

ここでは「人生を深く味わう」をテーマとして掲げていますが、どのように味わえば良いかに関する指導も訓練もありません。何かを特別よく知っている誰かが教えたり導く場ではないということです。様々な人生経験を積んできた者同士が語り合い聴き合うこと自体が、自分を振り返り、自分の人生航路をナビゲートするための良い刺激になるはずという前提でこのプログラムはつくられています。

この聴き合いの場では、何らかの技術を向上させたり、知識を増やしたり、習慣を改善するなど特定のことを良くすることを目標として掲げません。ビフォーアフターで言えば、アフターは色々なことが今までと違って感じられたり、考え方が変化したり、その結果行動が自ずと変容していく可能性はありますが、あらかじめあなたを特定の方向に導くような教えや指導はありません。むしろ、自分の内側から沸き起こる「反応」に注意を向けて、「自らの内奥から湧いてくる声」を大事にうけとってください。

「人生を深く味わう」は「自分という唯一無二の存在を最高に面白がる」ということかもしれません。どうぞこの世で一人しかいないあなた自身を味わう機会としてアプリシエートまでの期間、メイン・セッションの3日間、そしてその後の余韻も含めてお楽しみください。