「マイペース化」の加速 

株式会社ソリューションフォーカス  代表取締役 青木安輝

 新年あけまして

おめでとうございます。

多分これを読んでくださっている方は、型通りの挨拶や、単なる明るい未来に向けた願望の表現にはあまり興味がないと思いますので、決まり文句の挨拶はこの一言だけにして、私の個人的近況報告をさせてもらいますね。

2021年の「自分にとって良かったこと」を書き出してみました。その中で、もっとも重要で良かったと思えたことは、会社を自宅に移転したこと、ホームページを自分でつくったこと、オンライン(ZOOM)の研修やセミナーで納得がいく実施形態が実現できたことでした。コロナ禍で仕事が減ったことで経費削減をする必要があり、またオンラインでないと仕事が受注できないという状況で、自発的というよりは必要にせまられて起こしたこれらの行動でしたが、結果として、等身大の自分で「やりたいこと」と「やれること」を一致させる基本形ができたと感じました。これなら「マイペース」でやり続けられると感じたのです。これは本当にありがたいことでした!

年金の一部を受給し始める年齢となり、体力や記憶力その他の心身能力の変化(あえて衰えとは言いません・笑)を感じる中で、これから10年、20年と時間を区切って人生を総合的に俯瞰した時に、自分がやりたいことは何か、実際にできることは何なのかという問いへの答えは、以前と比べてかなり変わってきました。「より大きく」とか「もっと」よりも、「等身大」「足るを知る」「自分らしく」という言葉が今まで以上に身近に感じられるようになりました。

ソリューションフォーカスの事業に関しては、「ビジネス界にSFを広める」という攻めの感覚よりは、私のことを信頼して既に仕事を発注し続けてくださっている方々への期待に応えることと、自分のセンスや経験が生かせそうな仕事が新規にオファーされた場合に引き受けるという受け身の感覚に変わりました。そして自分が主催するセミナーは、自分の都合で適度に開催数をコントロールするというマイペース感覚に落ち着いてきました。以前は、もっと規模的に拡大しないと自分には価値がないと思ってしまうこともありましたが、今は自分がもともと持っているエネルギー量に見合った機会が与えられていると思うようになりました。

それでは発展することがないかというと、そうでもなくて、時代が迎えに来てくれている面もあります。ある企業からのオファーで最近取り組んだ企業研修は、動画視聴を中心にするオンラインセミナーで、組織文化を内発的動機づけと多様性の尊重を中心とするソリューションフォーカス的指向性が強いものでした。「ああ、時代は確実に変わっていくんだな」と思いましたし、その流れに沿うような発信をしていると、そこに共鳴する人が抱えている課題を解決するお手伝いをさせてもらえる機会が増えるのだと認識しました。

 「変化はコントロールできない。できるのは変化の先頭に立つことだけである」 - ピーター・ドラッカー –

この名言を始めて知ったのはSFの創業時でした。その時は「今自分はその変化の先頭に近いところに立っている」と勝手に思って勇気づけられた言葉でした。今は自分は先頭には立っていないけど、「先頭集団とは仲良くしている」みたいな感覚で、その人々を応援したいと思っています。

また仕事以外の面で、「好きなことを大事にする」ことが増えました。例えば、ソリューションフォーカス事業を始める直前は仕事より先にスケジュールを入れるくらい熱中していたゴルフですが、SF創業の前年に所属クラブのチャンピオンになったことを一区切りとして、SFを始めてから約10年間はほぼ封印しました。そして、日本のビジネス界にSFを広めるぞという意気込みで24/7でSFのことばかり考えていました。しかし、7年前くらいからワークライフバランスを見直して、現在は自分の人生の中でのゴルフの位置づけは、前ほどではないにしろかなり復活しています。おかげさまで、昨年は「ゴルフ侍」というテレビ番組に出演する機会も得て、ゴルフを自分の一生の友とする想いが深まりました。

さて、話は変わりますが、「多様性の尊重」について一言。これは時代のキーワードでもあり、ソリューションフォーカスのベースでもありますが、それにはまず自分自身の存在意義を無条件で認めることが出発点と考えています。情報過多で、選択肢は多すぎてそれ自体がストレスになるような現代社会では、外からの刺激に振り回されていては訳が分からなくなります。自分の素の感覚に疑いを持ち、何か正しそうな情報を見つけなければいけないのではないかという切迫感が生じます。しかし、正しいことを知っていそうな専門家と言われる人々が拠り所とするいわゆる”科学的知見”も究極の真実ではないことは、良心的な専門家であるほど認めていることです。自分が接した情報が”正しい”かどうかのチェックは、ほとんどの場合ネット検索レベルでしか確かめようがないので、最後は「自分がそれを”信じる”かどうか」ということになります。その時に自分のセンスを信じて良いと思える度合いが高いほど、安心して自分の生きるポジションが選べます。それは自分の本音での思考や感情を一旦そのまま認めることができる度合いに比例するわけです。これはソリューションフォーカスのようなお互いに認め合うコミュニケーションの中で育まれていきます。自分の中に湧いてくる思考や感情はそれなりに夫々の根拠があるわけで、頭ごなしに否定する必要はないし、だからといってそれらを無条件で対社会的に全肯定するのでもなく、それらをワンクッション置いて観察できる「意識の余裕」を持った上で取捨選択する。その上で、「よし、これだ!」と腹をくくることが大事だと思います。その余裕が感じられる「生きるスピード」のことを「マイペース」と呼びたいと思っています。それが63歳になって益々感じられていることを「マイペース化が加速している」と表現するとなんだかしっくりきます。

以前、ソリューションフォーカスにシンパシーをもっていて実際にその活用で成果をあげている人々へのアンケートを実施した際に、「SFの良いところは何ですか?」というシンプルな問いへの回答(自由記述)としてもっとも多かったのは、「否定されない」というものでした。逆に言えば、人間は成育歴、社会人としての履歴の中で「社会に順応」するためにかなりの”自己否定”を求められていて、それに順応する度合いが高い日本人にとって、否定されないということがとても新鮮でエンパワーされる感覚のある体験だったのだと思います。海外から日本を見る際に、「同調圧力」がとても高く、またそれを受け入れる度合いが高いのが我々の特徴で、それが良い方にも悪い方にも働くことがあると思いますが、自己否定(自分を捨てて皆に合わせる)を過度に求めることなく、むしろお互いの「良いとこ取り」を促進するような形で”同調”していくことが我々の進化なのではないかと思います。そういう意味では、日本人はまだまだ否定語よりも肯定語を増やしてよい段階にいるのではないでしょうか。そう考えると、ソリューションフォーカスはこれからまさに社会の色々な場面でその役割を果たすことを求められていると感じます。2022年は、大きなものに同調しようとすることで自分を見失うのではなく、自分の真正な感覚を大切にすることでより大きなものに貢献するという方向性を大事にして、マイペースなスピードではありますが、社会の様々な場面にいる人々にお互いに「素の自分を大切にする」コミュニケーションを体験していただくような仕事をしたいと思います。

ソリューションフォーカスを創業した時が46歳。その年に最愛の母親が他界し、3年後にJ-SOL(日本ソリューションフォーカス活用事例共有大会)を始め、翌年に父親が他界し、色々なストレスが重なっていたんだと思いますが、50歳で腎臓ガンを患い右腎臓を全摘出しました。それ以来、頑張ることは頑張るけど、無理を感じたらすぐに休むか方向性を変えると決めました。オンラインで色々やれることは便利なんですが、さすがに自分一人でできることは限りがありますので、今年もマイペースで進んでいきたいと思っています。

ここまで読んでくださって本当にありがとうございます。「株式会社ソリューションフォーカス」という看板を掲げてはいますが、ようするに青木安輝という一人の小さな人間が自分の思うところを発信しているだけです。今これを読んでくださっている皆さんは、何等かの機会に私のことを知って、そこに何か共鳴するものを見つけてくださった方だと思います。これからも響き合うものを感じた分だけご一緒していただければ幸いです。お互い”マイペース”で♪

どうぞ本年もよろしくお願い申し上げます。

令和4年 正月