研修実施例 (大阪市、廿日市市、埼玉県)

1.大阪府 大阪市役所

大阪市では、2017年から2019年まで、職場活性化を担当する職員だけでなく、広く職場のコミュニケーションを改善することに意欲を持つ職員を対象にソリューションフォーカス研修を実施しました。解決志向の考え方やコミュニケーションスキルを活用して、職場の活性化や事務改善などに取り組んでいただくことが目的でした。講師による研修は1日のみですが、人事課担当者による成果確認のためのワークショップが後日開催され、受講者に実践を振り返っていただく機会が設けられ、実際に職場でソリューションフォーカスを活用した実践をした職員の成功事例が翌年の研修で紹介されるという好循環が起こりました。

研修名:
職場活性化推進のための勉強会「ソリューションフォーカスで職場の笑顔と成果を増やす」

研修目的: 
ソリューションフォーカス(解決志向)の理論と技法を習得し、職場の意識改革・風土改革を推進する。

対象者: 
課長代理級以下の職員で、各職場の職場活性化担当およびそれをサポートする職員。

日数: 
1日(9:00~17:30)

主な内容: 
事前課題、SFコミュニケーションのフレームワーク、「プラスの眼鏡」で人を見る、問題志向と解決志向の違い、SF7つの基本要素、リフレクティングチーム、SF実践のポイント、他

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     &
 研修のご依頼方法

自治体職員向けのソリューションフォーカスを応用した研修について、過去の実施例、費用、あらたな研修開発可能性の有無等のお問い合わせおよびご依頼は、お問い合わせフォームからご連絡ください。折り返し、青木安輝より直接ご返信させていただきます。

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2.広島県 廿日市市役所

廿日市市においては、2011年よりソリューションフォーカスを応用した「チーム力アップ研修」「係長研修」「面談力向上研修」「自らが未来を切り拓くSF実践研修」等が開催されてきました。中でも特にユニークな特長がある2つの研修について紹介します。

<管理職『面談力』向上研修>
人事評価を管理職から職員に伝える面談が義務化されるのに向けて2015年暮れから実施された課長職向けの研修です。「人事評価を伝える」ための面談の内容が、職員の足りない点等のマイナス面に偏ることなく、むしろ「既にあるリソース(長所や生産的行動)等の肯定的側面(good)」に焦点を当て、その上で「さらにどのような活躍・改善・成長が望まれる(better)か」を一緒に確認する場とすることで、前向きなトーンを基調とする面談を可能にする研修と位置づけられました。HOW(Hatsukaichi Original Way)を合言葉に、今までどのように(how)してきたかを振り返り、より良いやり方(how)を見つけていくために、面談振り返りシートと面談準備シート等のツールが用意され、継続的に面談ノウハウを開発し、学習する組織であることが目指されています。

<自らが未来を切り拓くSF実践研修>
新任の主任主事および主任技師を対象とした研修で、ソリューションフォーカスを学んだ上で約4か月の期間をかけて職場の事務改善や活性化等に取り組み、その成果を発表する機会が設けられます。管理職になる前でも十分にリーダーシップを発揮して必要とされている改善のイニシアチブを取ることができるということを体験していただいています。研修タイトルの「自ら未来を切り拓く」は、自らも受講者であった人事課担当者の方の発案で決定されました。受講者が主体であることを見事に表現したすばらしい名前です。
最後に市長や幹部職員の皆様の前で成果発表するという緊張感が良いスパイスとなっていて、素晴らしい成果報告がなされています。

廿日市市人事担当者様のコメント・・・「ソリューションフォーカス研修を推薦します!」

廿日市市総務部人事課専門員(グループリーダー) 能島 克浩

平成の大合併を経て、ますます多様化する住民ニーズや急激な環境変化に対応するため、職員一人ひとりの能力のよいところを伸ばし、やる気を高め、組織のチーム力をアップさせる必要性を人事課として認識していました。このため、ソリューションフォーカス(SF)理論を学び、実践することで、肯定的なコミュニケーションの連鎖を引き起こし、仕事の進め方や組織風土の変革を狙いとした「職場のチーム力アップ研修」を平成22年度から実施しました。
また、平成27年度からは、人事評価における「面談」に、SFの理論を取り入れるため、評価者(管理職)を対象とした研修や、平成30年度からは、主任主事に昇任した職員を対象とした「自らが未来を切り拓くSF実践研修」を実施しています。
SF研修を本市で導入し、10年目を迎えましたが、研修後のアンケートでは、「プラスのメガネやOKメッセージなどを実践することで、課の雰囲気が良くなった」という意見があるなど研修の成果が出ていると考えています。また、ある部長が今年の定年退職時に、「私のこれまでの職員人生の中で、SF研修を受けたことにより、人に対する姿勢がそれまでと大きく変わり、マネジメントや調整に大きな力となった。とても感謝している。」と私に言われ、SF研修をやって良かったと改めて認識しました。今後も引き続きSF研修を実施していきたいと考えています。(令和元年8月3日)

3.埼玉県 彩の国さいたま人づくり広域連合

研修名:
「ソリューションフォーカス~解決行動を生み出す肯定的コミュニケーション手法~」

ねらい:
問題の原因を分析・追究するのではなく、解決(ソリューション)することに焦点(フォーカス)を当てた考え方を学び、組織目標の実現に向けて最短距離で行動するためのコミュニケーション手法を身に付ける。

対象:
<県>主幹・副課長級および希望する課長級職員 <市町村>課長補佐級以上の職員

時間:
1日(9:30~16:30)

成果インタビュー:
研修実施後半年を経た時点で、受講された方にインタビューをさせていただき、どのような成果があったかを聴き取らせていただきました。以下お二人の体験談をご紹介いたします。

埼玉県内自治体 企画財政課主幹 Tさん

■「今あるものを活かす」という発想で実現可能性を高める

役所の仕事で資料作成をする時は、どうしても課題(問題)に目がいきがちになり、その原因追及をして「何がいけないのか」と「それへの対策」について書くことが多いので、どうしても重く暗いトーンになりがちです。しかし、ソリューションフォーカスの研修を受講して、「何がダメか」よりも「どうなっていくと良いのか」を起点にして意識を広げた方が、より良い未来に向けて意識が高まることが確認できました。それ以来、私のパソコンのデスクトップにはSFの考え方を自分へのリマインダーとして貼りつけてあります。

私は市民参加型の業務を担当しているので、町民とワールドカフェ形式の対話集会を企画することが多いのですが、その際のテーマ出しにSFが大いに活かされました。「町の好きなところ」や「こういう町になって欲しい」という肯定的かつ未来志向なテーマで対話のきっかけをつくると、気持ちよく場が盛り上がります。そして、私がSFの考え方を上手く活かすことができたと思うもっとも重要な点は、「今あるものを活かす」という発想です。住民の皆さんに「何でも良いので自由にご意見を」とオープンに求めると、確かに色々なアイデアをいただくことはできるのですが、現実性にかけるような内容が増えます。特にりっぱな箱モノを作ればという発想から生まれたアイデアですと、なかなか実現困難なものが多くなってしまい、せっかくアイデアをいただいたのにそれを活かす方向の検討すらできないという事態になってしまいます。そこで「今あるものを使って何ができるか?」という方向の問いかけを増やしたところ、かなり現実性の高いアイデアを沢山いただくことができ、実際に街づくり総合政策に反映させるための検討俎上に乗せることができました。

新人職員の研修では、各担当者が職務内容の説明をするのですが、私は総合政策策定についての話をする際にSFの効果的な発想法を伝えるためにこんな話をしました。「ラジオのダメなところをいくら直し続けてもテレビにはなりません。改善する(ダメなところを直す)という発想とはまったく違う『こういうのが欲しい!』という新たな発想をするからテレビが生まれるわけです。」変化の激しい時代であればあるほど、現状維持ではなく、何が求められているのかを察知して「今あるもの」と「求められている未来」を効果的に結びつける発想が必要だと思います。ソリューションフォーカスの発想をそんな風に活かしたいです。

埼玉県内自治体 生活支援課長 Aさん

■部下とのコミュニケーションが双方向で増えた!

私の職場には数十名の職員がいますが、生活保護利用者の増加傾向に伴い、基本的に忙しく仕事に追われる職場です。ですから上司からの指示であっても「忙しいのでできない」と いう理由で実行されないことが少なからずありました。そんな時に「なんでできないのか」と詰め寄ることは不毛な上司部下関係をつくるだけだということは身に染みていました。

ソリューションフォーカス研修を受講した際に「できないこと」ではなく「できること」また部下のマイナス点ではなくプラスの面に着目する「プラスの眼鏡」が、効果的な行動を促すということを学んだので、それを実践してみようと思いました。またトップダウンの指示に従わせるという姿勢だけでは、部下の力を引き出せないということも自覚していたので、その点も変えようと思いました。

部屋が広く課長席が職員席から遠いことで、課長が重々しく見え過ぎて「怖い人」と感じさせる要因になっていることが判明したので、課長席で職員が相談に来るのを待つのではなく、自分から歩いて職員席に近づいて行き、話しかけるようにするところから始めました。また、研修資料に部下と対話する際の話す割合を「自分8:部下2」から「2:8」に逆転させることで部下の自発性が増したというエピソードが印象に残ったので、面談でも打ち合わせでも、自分の基本的考え方や方針を簡単に伝えたら、あとは「で、どうすればこの施策を実現できると思うか君の考えを教えて欲しい」と相手の意見を聴く時間を長く取るようにしました。すると、コミュニケーションの量が以前に比べて格段に増えて、部下が色々な考えをもっているということがわかってきました。

現場を知ることも重要だと思い、福祉サービス利用者の訪問に同行するようにしてみました。部下が利用者さんと接している生の姿を見ると、共感できることが沢山見えてきました。色々と苦労しながらも生活支援をする工夫を部下は頑張ってくれていました。自ずと、部下に対するOKメッセージ(肯定的コメント)も増えました。コミュニケーションが増え、現場で頑張っている具体的な様子も見えてきたことで、一方的な指示をすることもなくなりました。仕事に関してはスケーリング(0から10で今どこ?)で意識合わせをして、スモールステップでひとつずつ片付けていけば良いと思えるようになり、「忙しいからできません」というセリフを聴くことが少なくなりました。